僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

「経済がいい」って何? 後編



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(「ドラえもん」藤子・F・不二雄 小学館第21巻より)

前編のあらすじ

 「経済が良い」とか、「景気が良い」というのは一体何のことなのでしょうか。株価やインフレ率(物価)など、景気の基準とされていた数字は、実は経済の良さを表すものではありませんでした。

 なぜなら、株価も物価も、私たちの豊かを保証してくれないからです。

 そこで、実質賃金(物価の影響を加味した賃金)を経済の良さとする考えが現れました。実質賃金こそ、国民の真の豊かであると考えられるからです。

 ところが、その実質賃金を基準とする考えにも鋭い異論を呈する方もいます。その代表が、経済評論家の上念司さんなのであります。

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(↑上念司さんhttps://mobile.twitter.com/smith796000より)

 上念司さんは実質賃金を基準とする考えを論破しました。そして、失業率や就業者数(働いている人の数)などの「雇用」こそが経済の良さだと唱えました。

では、経済の良さとは「雇用」だったのだ!……かと思われましたが、

 この主張に異論を唱える経済評論家が現れます。

それが、三橋貴明という方だったのです。


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(↑三橋貴明先生https://images.app.goo.gl/SQqGEDNUH4pJh3Di7より※結構昔の写真ですが、この頃が一番イケメンなので採用)

 

第七節 ちょっぴり変人!上念三橋

 早速どのような反論が展開されるかを見たいところですが、ここで上念さんと三橋さんがどのような人物なのかを確認したいと思います。物語を理解する上で、キャラクターを覚えることは重要だからです。

 

上念司

経済評論家

1969年5月4日生まれ 東京都出身

 

 進学塾の取締役をしていた彼は、「日本の景気が悪いのはなぜか」という疑問を持ち、独学で経済の勉強に没頭します。

 今ではテレビやラジオ、ネットにて経済を論じております。

 彼には経済の他に、もう一つ専門分野があります。それが「ゾンビ」です。

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https://mobile.twitter.com/yumi_suginami/status/1035131248237137920より)

 詳しくは是非ググって下さい。

 

 三橋貴明

経済評論家 経世論研究所長

1969年11月22日生まれ 熊本県出身

 

 経営コンサルタントをしていた彼は、情報を集め、分析することが得意でした。この能力を活かし、2chで経済を論じていきます。すると凄まじい好評を博し、その活躍が出版社の目にとまって作家デビュー。三橋さんは今でも人気者で、多くの人に影響を与えています。

 三橋の専門分野は実に広く、「歴史」「地政学」、そして「アニメ」においても驚くべき知識をお持ちです。選挙における集会でコスプレをし、「自民党コスプレ事件」という伝説を残したこともあります。詳しくは是非おググり願います。

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http://siorin3962.seesaa.net/category/1505279-5.htmlより)

 両者ともに少し変わった方ですが、どのような激論が繰り広げられるのでしょうか。

 

第八節 ニューカマーは嘘だッ! by三橋

 

 これは、三橋貴明先生が作成されたグラフです。
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https://38news.jp/economy/12434より)

 実質賃金の「上昇率」(前年とくらべて何%上昇したかという率)と、就業者の「増加率」(上昇率と同じ)のグラフです。

 上念司さんの「ニューカマー効果」という主張が正しければ、就業者(働いている人)が増えれば実質賃金は下がるはずです。しかし、このグラフを見ると大体、就業者数が増えるにしたがって実質賃金も増えているのであります。就業者が増えているのに実質賃金が減っているのは、2013年度以降だけです。

 つまり、「2013年以前は、就業者が増えれば平均の賃金も上がっていた」ということです。これはどういうことなのでしょうか。

 三橋さんはこの事実を、このように分析します。

実質賃金は、
労働分配率(※企業が儲けたお金の内、何%が従業員のお給料になったかという率のこと)と生産性で決まります。

就業者数が増え、
同時に実質賃金が低迷するとは、

「企業が労働分配率を減らしているか、
生産性が低下しているか、
あるいはその双方である」

という意味を持ちます。

( (※)内は三幸が補足)

 つまり経済が悪くなったので、企業が生産性を高めることができなかった。なぜなら生産性を高めるには、高い装置を買ったり、開発するなど、リスクのあることをしなくてはならない(これを設備投資とよびます)。生産性が低い以上、従業員に高いお給料を払うのも困難になるので、やむを得ずお給料を減らさなくてはならない。ところが生産性が下がると物が作れなくなるのでさらに人を雇わないといけない。

 こういった恐ろしい現象が起きていると三橋先生は考えられるのです。

 したがって、三橋さんは「ニューカマー効果」なる説明は嘘であるとします。

 

 また、企業は人件費(お給料)を安くしたいあまり、女性や高齢者を雇いまくっているともしています。

 そして、景気が悪いからこそ、昔のように「父が一家の大黒柱となり、妻や子供、祖父母を養う」といったことにならないのだと指摘するわけです。

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(「亡国のメガロポリス三橋貴明 彩図社より)

 このグラフを見ると、確かに就業者数が増えたのは女性と高齢者だけです。男性の雇用はどちらかというと、減っているわけです。

 

上念司さんはTwitterにてこのように主張していました。

①2009年からの民主党政権で働く人は115万人減った
②2012年末からの安倍政権で働く人は394万人増えた

どっちが幸せか考えるまでもない。

 https://mobile.twitter.com/smith796000/status/1093039669531545601?lang=jaより

 しかし、三橋貴明先生は、就業者数が増えることは不景気によっても起こることだとするわけです。

 

第九節 食らえッ「名実逆転」ッ!by上念

 これは上念さんのツイートです。

 名目>実質ならデフレ脱却、名目<実質ならデフレと覚えておきましょう。

https://mobile.twitter.com/smith796000/status/436636947508129793より

 名目賃金が実質賃金を上回る状態ならデフレ(不景気)ではなく、名目賃金が実質賃金を下回る状態ならデフレだと言うわけです。

 なぜそうなるのでしょうか?

 ミソは、物価の動きの方が賃金の動きより早いところにあります。
 つまり、好景気になるとまず物価が上がり、それに続いて名目(ありのままの)賃金が上がるわけです。不景気も同様に、物価がまず下がり、それに続いて名目賃金が下がります。
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 では、この表に実質賃金をつけ足すとどうなるでしょうか。

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 なんと、好景気にも関わらず実質賃金が下がったり、不景気にも関わらず実質賃金が上がったりするわけです。なぜなら、好景気のはじめには名目賃金は上がらずに物価が上がり(物の値段が高くなる)、不景気には名目賃金が下がらずに物価が下がっていく(物のが安くなる)からです。

 

 この景気の変わり目の時、実質賃金と名目賃金が逆転する場合があります。もう一度さきほどのグラフを見て下さい。f:id:miyukiyasmaro:20190622155652j:image

 不景気になった時、実質賃金が名目賃金を上回り、逆転します。これを「名実逆転」とよびます。

 上念さんはこの名実逆転こそが好景気、不景気を見分けるポイントだとするわけです。そして、実質<名実なら、物価が上がっている(インフレ)ので好景気。実質>名実なら、物価が下がっている(デフレ)ので不景気だとするのです。

 ちなみに、この理論でいうところの好景気な名実逆転(実質名実)は最近起こりました。このグラフでいうところの2014年です。f:id:miyukiyasmaro:20190622155548j:image

 上念さんの理論に従うと、2014年から日本は好景気になったということになります。

 ただし、私が前稿で述べたように、物価は景気だけで動くものではありません。増税や石油の高騰によってインフレになりますが、このインフレだと国民の生活は苦しくなるだけです。

 ちょうど、この名実逆転があった2014年には安倍総理による消費増税があったので、それによって物価が上がっただけでしょう。

 というわけで、私が思うに今は好景気などではありません。

 そして、名実逆転も景気の基準では決してありません。

 

最終節 止揚(しよう)で真実を明らかに「しよう」

 以上が三橋さんと上念さんの熾烈なバトルでした。

 少しややこしい文章ではありましたが、ここまで読んでくださってありがとうございます。

 

 さて、ここで我々が考えるべきことは、「どっちの方が勝ちなのか」ではありません。ネット上には勝ち負けを争って長きに渡る仁義なき「レスバトル」を繰り広げる方がよくいらっしゃいますが、こうした思考はよくありません。

「議論」とは、口喧嘩ではないからです。

「議論」とは、真実を手に入れる為の協力行為です。

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↑協力しあう上念司さん(左)と三橋先生(右)

(ドラえもん」藤子・F・不二雄 小学館第21巻より)

本日の哲学用語

止揚(しよう)」

 異なる説を比較し、正しい部分を合体させ、間違った部分を切り捨てる。そのようにして新しく、より優れた説を導くことを止揚とよびます。

 では、三橋さんと上念さんの主張を止揚し、経済の良さを定義してみましょう。

 

三幸靖麿呂の結論

「経済が良い」とは、

①実質賃金が高くなっている

②物価が良い要因で動いている

③ハッピーな感じに雇用が改善している

この三つが揃った状態のことである。

 

 これが私の定義する好景気です。

 因みにこの定義だと、今は不景気だということになります。

 

あとがき

 少し難しい文章でしたが、最後までお読み下さりありがとうございました。止揚はその人のセンスによるものですから、もし僕と異なる定義をお持ちの方はコメント欄にてお聞かせ下さると嬉しいです。

 

 そして、これは本稿とは関係のない話ですが、僕の過疎ブログにも希薄ながら暖かい風が吹きはじめています。

 アクセス数もまったく0ではなくなり、ほぼ毎日、どなたかがお読み下さっております。また以前、僕の作品を称賛してくださった方がいて、心より嬉しいです。

 どなたかが読んで下さる以上、読みやすく、そして有意義なブログにしたいと思います。

 最後までお読み下さったあなたにもう一度ありがたく申し上げて、筆を置きます。

 ディ・モールトグラッツェ