僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

平和の自由研究(下)

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(↑タオイ族の少年ネプ。彼の母はベトナム戦争で、米軍が散布した枯葉剤を浴びました。その影響で彼の右手は湾曲して麻痺しています。左手の屈伸もできません)

 

前編→https://miyukiyasmaro.hatenadiary.com/entry/2019/08/17/205613

 

■平和の自由研究(下)

  皆様、戦争はなぜ起こるのでしょうか。人によってこの問いの答えは様々あると思います。「人間に憎しみや怒りという感情があるから」「考え方や信じるものが同じではないから」「支配への欲望があるから」等、等、等。いずれも無視できない要素ではあると思います。

 しかし現代において、そうした理由で起きた戦争はそこまで多くないと考えます。ほとんどの戦争は、そうした理由に見せかけてもっと別な理由で起きたものだと思うのです。では、その別な理由とは何でしょう。

 それを知る為に、過去に起きた三つの戦争を振り返ってみましょう。

 

ベトナム戦争トンキン湾事件
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 1964年8月3日。北ベトナム沖、トンキン湾にて、米軍の哨戒船に二発の魚雷が撃たれる事件が起きます。アメリカ政府はこの犯人をベトナム軍とし、これをきっかけにベトナム戦争が起こります。しかし、ニューヨークタイムズという新聞が、これをアメリカの自作自演だと報道しました。ベトナム戦争に参加する口実が欲しい為、被害をでっち上げたとしたのです。当初この主張はとるに足らない「陰謀論」や「都市伝説」として一蹴されるばかりでした。しかし、ニューヨークタイムズは後に決定的な証拠を掴みます。「ペンタゴン・ペーパーズ」と呼ばれる政府の機密文書です。この文書にはトンキン湾事件アメリカによる工作であることが記されていました。以降、ベトナム戦争がヤラセであったという事実は陰謀論ではなく、確定した歴史となります。

 

湾岸戦争のナイラ

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 1990年10月10日。トムラントス人権委員会にて、クウェート人を名乗る十五歳の少女「ナイラ」が証言台に立ちます。

イラク軍が爆弾や銃で民衆を襲撃しています。また、全ての病院施設に押し入り、新生児を連れ出しています。生命維持装置は切られています。抵抗したり、クウェート軍や警察と一緒にいる所が見つかれば、拷問を受けかねません。

 

—Evacuee’s description as reported in St. Louis Post-Dispatch

 彼女が涙を流しながら証言する様子は広く報じられ、アメリカ世論では反イラクの感情が沸騰します。間もなく、アメリカはイラクに侵攻し「湾岸戦争」が始まるのでした。

 しかし、ナイラの証言は事実ではありませんでした。彼女は駐米クウェート大使の娘で、クウェートの地を踏んだことは一度もありません。これはアメリカが参戦する口実を得る為に、クウェートアメリカの一部の勢力によって捏造された嘘だったのです。このことが明らかになるのは、大量の市民が殺されて湾岸戦争が終わった後でした。

 

リビア革命のカダフィ

 2010年10月18日。中東にてアラブの春と呼ばれる大規模な民主化運動が起こりました。これにより、チュニジア、エジプトが革命によって民主化されます。そして次に注目されたのが、アフリカのリビアという国です。


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リビアの指導者であったカダフィは、日本や欧米のメディアによって残虐な独裁者と報じられます。その際、よく流されたのが「カダフィが無抵抗の市民に無差別爆撃する」という映像でした。

 そこで現地の反カダフィ勢力やアメリカをはじめとするNATO軍が自由と平等を掲げて立ちあがり、リビア革命が勃発。カダフィ政権は倒され、カダフィは殺害されます。ブラウン管の向こうでは民衆が歓喜し、新聞には「民主主義の勝利」などといった見出しが躍るのでした。

 しかし、この一連の流れには怪しげな点が幾つもあります。

 まず、メディアによって繰り返し流された「カダフィが市民に無差別爆撃する」という映像ですが、よく見ると実に不可解なものです。戦闘機が映っておらず、爆撃音もないのです。また、一部始終を衛星中継で記録していたロシア軍によると、そのような空爆は確認されないとのことです。

 

 これは中東専門家の重信メイさんによるレポートです。かなり長い引用ですが、お読み下さい。

 あるとき、アルジャジーラ(※アラブ最大の放送局)の電話取材を受けた人が「いま、リビア政府軍が一般住宅を空爆しました。一◯◯◯人以上が亡くなりました。虐殺です」と叫びました。そしてすぐにアルジャジーラが「民間の住宅地が空爆され一◯◯◯人の犠牲者が出た」というテロップを流し続けたのです。私はこのとき、CNNやBBC(※アメリカを代表する放送局)も見ていたのですが、ほんの数分後には、アルジャジーラの情報をもとに緊急ニュースとして、同じニュースを流しました。そして、この報道がきっかけとなり、数日後の国連で、国際的な軍事介入を認める決議が出ました。

 私はこのニュースを見たとき、違和感を感じました。まず、電話取材だけで、なぜこの無名の人の言ってることが正しいと言えるのだろう。誰もウラを取っていないのに。一◯◯◯人という犠牲者の数もどこから出てきたのか。ジャーナリストであれば誰もが疑問に思うことが疑いもなく報道されていたのです。

(中略)

 実はリビア政府軍が空爆したのは一般住宅地ではなく、政府の軍事施設でした。反政府勢力が軍事施設を襲い、武器を奪おうとしたために、それに応戦するかたちで空爆を行ったのでした。そこで空爆されましたが、同時に、反政府勢力もその混乱のなかで武器を奪うことに成功しました。その過程で十数人の犠牲者が出ましたが、戦闘中のできごとなので、非難はできないでしょう。

 しかし、この事実を報道したのは一部のメディアだけでした。その後、リビア攻撃のきっかけになったこの誤報について検証することもされていません。

 

「「アラブの春」の正体」 重信メイ 角川書店

 

(※)内は三幸によるもの。

 

 また、カダフィが残虐な独裁者であったとは到底考えられないような事実も幾つかあります。

 2011年7月1日、リビア「緑の広場」にて170万人もの国民が集まりました。彼らはNATOの攻撃に抗議したのです。この170万という数は、当時のリビア国民の約三分の一にあたります。本当にリビアの人々がカダフィを嫌っていたとしたら、ちょっとあり得ないことではないでしょうか。

 アルゼンチンのヴェロニカ・ランソデールという方はこのように証言しております。

「私はリビアにたくさん友人がいるけれど、彼らは高学歴・高福祉の国であるリビアを誇りに思っています。アフリカ大陸で最も生活水準が高いリビアでは、教育も医療も無料で、女性も尊重されている。日本の人たちは、そういうことを知っていますか?国民は電気代の請求書など見たことがありません。42年間政権を維持できたことには、ちゃんと理由があるんです」

 

「政府は必ず嘘をつく」堤未果 角川新書より

 

 ベトナム戦争湾岸戦争リビア革命。これらの戦争のきっかけはヤラセでした。戦争を始めるにあたって必要な大義名分が捏造されたわけです。こうした工作を「偽旗作戦」といいます。この偽旗作戦は歴史上あまり珍しいことではなく、古くから多くの国が行ってきました。

(因みに、先の戦争のきっかけになった真珠湾攻撃、シリア内戦のきっかけになった9.11テロについてもヤラセ説があります。これらについては資料が不足しているので、今回は取り上げませんでしたが、事実だったとしても不思議ではないと考えます)

 

 アメリカは偽旗作戦をはじめとする印象操作を行い、戦争を起こしてきました。その為に何の罪もない人が何人も殺されてきたと考えると、腹立たしくて仕方ありません。では、彼らはなぜわざわざそんなことをしたのでしょうか。

 

財政出動

 一つには財政出動のつもりだったと指摘されています。

財政出動ってなんやねんという方は、拙稿「誰でも分かる!景気を良くする方法」をご覧下さいhttps://miyukiyasmaro.hatenadiary.com/entry/2019/07/27/194236

 戦争では様々な産業が必要となります。兵器、弾薬、燃料、食糧等、等、等…。それを政府がお金を使って買うわけです。そうすると莫大な需要(仕事)が創られるので、景気が良くなる。アメリカは自国の経済の為に戦争を起こしたという指摘です。

 では実際に、アメリカの経済と戦争に関係があるのか検証してみましょう。f:id:miyukiyasmaro:20190823191118j:image

 これは米国の経済成長率(実質値)の推移に、アメリカが関与した戦争を追加したものです。アメリカが戦争を始めた翌年の成長率に注目して下さい。そのほとんどが上昇しています。

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 これはアメリカの国防費の推移と、先ほどのアメリカの経済成長率を合わせてみたものです。国防費が下がったら成長率が下がり、国防費が上がったら成長率が下がっているという関係は見えます。但し、成長率が4.46%の時(左端)よりも、2.21%の時(右端)の方が軍事費が遥かに高い点を見ると、微妙ではあります。

 結論として、この説については何とも言えません。

 

軍産複合体犯人説

 アメリカでは、政治献金の上限がありません。つまり、政治家に何ドル献金しようと不正にはならないということです。となると、大金持ちからすればアメリカの政治を操るのは極めて楽です。日本では賄賂と呼ばれるようなことも、別にこっそりしなくて良いのですから。

 こうした金持ちの金持ちによる金持ちの為の政治が、軍産複合体という怪物を育てたのです。

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(三幸作成)

軍産複合体」とは、軍需産業、政治、軍が複合した(くっついた)構造です。

 

①軍隊が使うものを作る産業(軍需産業)が政治家に献金をする

②政治家は軍需産業に忖度して、軍隊に予算を回す

③軍隊がお金を使い、軍需産業が儲かる。①に戻る

 

 厳密にはもっと多くのやり取りがありますが、このように政治家、軍隊、軍需産業が共謀して利益を得ていく仕組みが軍産複合体なのです。

「おいおいおいおいおいおいおいおい、テレビの見すぎじゃあねえのォ。会社ごときが政治を動かせると思ってんのかよォ。お前最近陰謀論ばっかりだけどよォ、ハマってんのかよォ」という指摘があるかもしれません。しかしアメリカでは、実際に企業による献金が政治を動かしたことがあります。

 2010年10月。アメリカ政府はサウジアラビアとの間で六百億ドルという巨額の武器輸出契約を結びます。この契約に大きく貢献したのがあのヒラリー・クリントンさんなのですが、彼女は二ヶ月前にボーイング社(世界最大の軍需産業)から九十万ドルもの献金を受け取っていました。(ソース:「政府はもう嘘をつけない」堤未果 角川新書)

 

 さて、これを踏まえて「なぜ偽物作戦が行われるのか」を再考してみましょう。戦争が起これば、政治家が軍に予算を回す口実ができます。軍に予算が回れば軍需産業が儲かります。なるほど、戦争を起こした犯人は軍産複合体かもしれません。

 では、軍需産業と戦争の関係を見てみましょう。

 こちらはアメリカ屈指の軍需産業ロッキード・マーチン」という企業の株価です。

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 こちらは世界最大の米軍用機メーカー「ボーイング社」の株価です。

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 戦争をきっかけに株価が急上昇しているように見えます。

 

■あとがき

 いずれにしても、戦争は誰かの利益の為に起こされ得るものです。工作や印象操作によって、我々の正義感が煽られるのです。

 だとすれば、我々がすべきことは報道を疑う姿勢をとることではないでしょう。鵜呑みにするのではなく、様々な角度から見るのです。わたしごときが言うのも何ですが、騙されにくい国民になりましょう。利用されにくい国民になりましょう。それが平和を実現させる手段の一つではないかと考えます。

 戦争で亡くなった人々のご冥福と、世界平和の実現を心より祈り、筆を置くとします。

 長い記事になりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。