僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

それでも僕は増税反対



 もうすぐ増税となりそうですね。全国民が決起して永田町に集結でもすれば阻止できるのでしょうが、そういうこともやはり起きないでしょう。

 この前、昼ののんびりした日溜りが教室に横たわっていた日のことです。我が(高校生)親愛なる担任の先生のりたまひしく、

「もうすぐ増税だのう。物が高くなるというのは困ったことじゃのう(※個人情報保護の為、方言は出鱈目にしております)」

 するとわたしの友達がこう言いました。

「そもそも増税って意味あるんですかね」

 先生は苦笑しながら、答えて曰く、

「そりゃあ意味あるぞな。ニッポンの財政もヤバいっちゅうしのう。将来の子供たちの為にも仕方ないかもしれんのォ」

 滅多に物を言わないわたしですが、この時ばかりは口火を切りました。

「そ、それは違います。日本の経済が萎縮していけば、財政も悪化していくばかりです。将来にツケを残すのは増税の方なのです」

 先生はイエスのような微笑をたたえ、ゆっくりと頷いて下さいました。

「わいの言う通りじゃ。今増税しても、目先の財政しかよくならないのかもしれんのオ。まあそういう話をしてみるのも、面白いのかもしれんのオ」

 このように、わたしの先生はとても素晴らしい方なのです。

増税、ハア。やめてくれないかなあ」

 と友達。わたしはすかさず、

「消費税なんか、0%でいいんだよ。廃止だよ廃止!」

 この一言で教室は爆笑の渦に巻き込まれたのでした。彼らは、わたしが冗談でこんなことを言ったと思っているのでしょう!もう一人の友達も笑いながら、

「そんなことをすりゃ国が成り立たんべな」

 とぼやきますから抗弁しようと思いましたが、笑い声で声がかき消されます。そうして消費税の話題は終わり、遂に授業へと移ったのでした。

 やはり、我が国の世論は依然「増税やむなし」と考えているようです。

 この現状から脱却するには、声を挙げる他にありません。消費税廃止が不可能ではないことを、繰り返し繰り返し訴えるしかありません。

 そういうわけで、わたしは消費増税を目前にして、増税反対を今一度訴えたいと思います。

 

■無駄の増税

 とは言え、本ブログは既に増税反対論を投稿しました。消費税にまつわる嘘を粉微塵に至るまで粉砕し尽くしたのです。これを既にご覧になられた読者様に、またもや同じ内容のものを読ませるというのも何ですから、今回は過去に書いたこととは別のことを書きます。

 未読の方には、是非過去の投稿をお読み頂きたいものですが、その手間はちょっと面倒かもしれません。そこで、ここにその概略を記しておくとしましょう。

 

 これからあなたにご紹介させて頂きますのは、財政に関しての意見を書いた堂々たる三部作です。形式としては、わたしが間違いだと考える通説、常識に×をつけ、本当はどうなのかということを◯をつけて加える具合です。

× 借金が増え続けるのを止めろ!

◯経済の規模が拡大すれば、借金が増えるのは当たり前。

 

× 日本の財政はヤバい

◯日本の対外純資産は世界一。経常収支の黒字も世界二位。世界的には結構優秀。

 万一、破綻するようなことがあれば、金を刷って返せば済む話。勿論「インフレになるだろ」という指摘もあるが、今は深刻なデフレ。「勉強しろ」と言われたサボりが「これ以上勉強したらノイローゼになる!」と言うようなもの。

×日本の借金は一人当たり八百万円以上

◯日本(日本政府+日本国民)のではなく、日本政府の借金。そしてそのほとんどは日銀(政府の子会社)とわたしたちが貸しているもの。「お前俺に金貸したんだから後でちゃんと返せよ」などという台詞がまかり通っちゃあいけない。

 

×108円のものが110円上がったところで、大した影響はない。

 むしろ10%は計算しやすいから、逆に景気が良くなるかも

◯影響とは、小さな波及がまたたくまに拡大して起こる津波のようなもの。実質消費指数は、増税の度に深刻なL字低迷をきたしていた。

 10%は計算しやすいからこそ、むしろ影響が大きい。京都大学藤井聡教授は実験によってそれを証明した。

 

×増税の目的は社会保障の為

◯引き上げ分のほとんどは国債(政府の借金)の返済と法人税の引き下げの財源となっている。

 このタイミングで国債を返したところで、そのほとんどは銀行に行く。不景気の今、銀行は企業にお金なんか貸さない。結果、銀行は安定している国債を買い、いたちごっこに。

 

×財政の為に増税をするか、経済の為に減税をするか……か。ま、三幸君、気分転換として、タピオカでも飲みに行かないかい?

◯財政は経済の上に成り立つもの。経済を良くするということは財政を良くなること。90年代、アメリカは減税や経済政策によって赤字国債をゼロにした。

 わたしはタピオカが嫌い。カエルの卵のような食感がするし、喉が詰りそうで不安になる。巷のタピオカブームにも気持ち悪いものを感じている。

 

 と、こうしたことを述べたわけです。詳しく知りたいという方は上のリンクから是非ご覧下さい。

 

■抱腹絶倒の軽減税率

 ここ数年は一部の作家の活躍により、増税に反対にする分子(わたしもその一つ)が増えてきているように感じます。その影響もあってか、政府は経済への影響を一応は考慮したという態度を見せようとしています。それが軽減税率です。

 これについては皆様もテレビ等でご存知かと思いますが、一言で言えば主に生活必需品に限っては増税をしないというものです。生活必需品には増税がされないから、弱者への考慮はきちんとされているわけですよ、というわけなのです。

 それでは、皆様がこの軽減税率に対応できるよう、8%の商品と10%の商品の区別を分かりやすくレクチャーさせて頂きます。

 まず、水や食料は命に関わるので8%です。ただし水道水とドライアイスについては10%です。また、お酒は贅沢なので10%です。ただしアルコールが1%未満のものは8%です。学校や老人ホームの給食は8%です。ただし食堂の場合は10%です。ホテルのルームサービスは10%です。ただし、客室冷蔵庫の商品については8%です。新聞は8%です。ただし電子版やコンビニなどで購入するものについては10%です。お菓子は8%です。ただし、おもちゃが主体の商品であれば10%です。果物狩りで獲ったものを食べると8%です。ただし、果樹園内で食べた場合10%です。

 それでは、以上のことをしっかりおさえ、良い10%時代をお過ごし下さい。

 

 

 などと言われたらふざけんじゃねえぞって思いますよね!やはり軽減税率は煩雑なのです。「一体何が難しいんだ」と思われた方がいらしたら心から凄いと思いますが、わたしが紹介したことは極表面的なものに過ぎません。当初、国税庁が発表した軽減税率についてのQ&Aはなんと90問にも及びます。f:id:miyukiyasmaro:20190926161558j:image

 さらにこのQ&A、後に改定され、計121問、106ページに及ぶパワーアップを果たしました。

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 この資料の情報量だけで、大学の入試科目の一つくらい作れそうな気さえします。

 店側がトラブルを避ける為には、少なくともこのQ&Aを頭に叩きこまねばならないでしょう。僕が経営者だったら間違いなく号泣します。

 このように、日本の産業に嫌がらせじみた負荷を加える制度が、果たして「経済への影響を考慮したもの」などと呼べるでしょうか。

 

■衝撃のMMT(現代貨幣理論)

 消費税の問題を語る上では、やはりMMTは触れねばならないものでしょう。「MMT」はテレビやネットではほんの一時期話題になっていましたから、ご存知の方は少なくないかもしれません。これは今、世界で賛否両論を巻き起こしている経済学の理論です。f:id:miyukiyasmaro:20190927231152j:image

 こちらはMMT提唱者の一人、ステファニー・ケルトン教授。この方はYouTubeにて「三橋貴明」という大人気な評論家と対談しました。

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 同じく提唱者の一人、ランダル・レイ教授です。この方の教科書は中野剛志という先生によって翻訳されたところ、販売即売り切れの書店が続出したといいます。

 みんなが知っているというわけではないけれど、少なくとも多くの人が注目している「MMT」ですが、一体どういう理論なのでしょうか。

 それを知るには書店でMMTの教科書を買えばすぐ分かることですが、あいにくわたしの懐も温かくありません。それでは、Wikipedia先生をお訪ねすることとしましょう。

MMTとは「自国通貨を発行する政府は高インフレの懸念がないかぎり財政赤字を心配する必要はない」とする理論である。

 自国通貨を発行する政府。つまり、自分で自分のお金を発行している政府(日本政府もそうです)は、インフレにさえ気をつければ、財政赤字なんか気にしなくて良いということです。

このようにMMT財政赤字の拡大を容認する。政府は財政赤字を気にせず景気対策に専念すべきだとMMTは主張する。

 今の我が国の政府は財政赤字を気にして景気対策ができていませんね。

自国通貨建ての債務であれば、政府の財政的な制約はないため、赤字が増えても財政は破綻しないとされる。MMTは自前の通貨を持つ国がいくら自国通貨建てで国債を発行しても債務不履行(デフォルト)には陥らないとする。

 自国通貨建ての債務とは、自国の通貨で返せる借金です。日本の場合、日本の借金は円で返せますから、「日本の借金は自国通貨建て」と言えます。そうすると、日本はいくら借金しても財政破綻しないことになります!

MMT財政赤字の無制限な拡大を事実上容認しており、論者の中には国の借金が膨張しているのに財政破綻しない日本がMMTの正しさを示す見本だとの主張もある。

 

以上、引用部はhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E7%90%86%E8%AB%96

 結構大胆なことを言っているように聞こえますが、実は結構前から言われています。さきほど名前だけ出した「三橋貴明」先生や「中野剛志」先生という方は、MMTが提唱される遥か前からこうしたことを主張し続けておられました。そして、わたしも本ブログでそのパクりを行ってきたわけであります。

 真面目な方は、2009年のギリシャや、戦後間もないドイツ、また非常に詳しい方は、戦後間もない日本の例を挙げ、「このように、世界には財政破綻した例がたくさんあるのだ。財政を楽観視すべきではない」といったことを叫ばれることがあります。
しかしながら、現在の日本とそれらの例とは、重大な違いが二つあります。それが、

① 通貨発行権がある
② 極端な供給能力不足に陥っていない

 

https://miyukiyasmaro.hatenadiary.com/entry/2019/05/24/193034

 以上、拙稿より引用した文書は、徹頭徹尾MMTと全く同じ内容です。

 WikipediaにおけるMMTの説明には、

MMTとは「自国通貨を発行する政府は高インフレの懸念がないかぎり財政赤字を心配する必要はない」とする理論である。

 と書いてありました。そして拙稿では、

現在の日本とそれらの例とは、重大な違いが二つあります。それが、

① 通貨発行権がある
② 極端な供給能力不足に陥っていない

 と書かせて頂きました。

「自国通貨を発行する政府」とは「通貨発行権がある」政府ですし、「高インフレの懸念がない」とは「極端な供給能力不足に陥っていない」と言い換えることができるのです。

 そして、そうした条件の下では借金なんか気にしなくていいよということを、わたしとMMTは主張するのです。

 さあ皆様、さあご一緒に、

「国の借金なんか気にするな」

 と高らかに叫んでみましょう。

ギリシャ財政破綻したじゃないか」

 という声がこだましてきます。

 しかしギリシャが使っていた通貨はユーロ。ギリシャの意志ではなく、EUの意志で発行される通貨です。ギリシャは「自国通貨を発行する」即「通貨発行権がある」政府ではありません。

 さあ皆様、さあもう一度、

「国の借金なんか気にするな」

 と叫んでみましょう。

「戦後間もないドイツと、戦後間もない日本、その他多くの発展途上国ハイパーインフレになって財政破綻したじゃないか」

 今度はこうした声がこだましてきます。

 しかし、恐ろしき戦禍によって産業をボロボロにされたドイツ、日本は、極端な「供給(物やサービスが作られること)<需要(物やサービスが欲求されること)」に陥ります。これは即ち「インフレ」を意味します。

 また発展途上国は、やはり発展が途上の国ですから、産業が未熟な状態であります。「供給<需要」の状態に陥りやすいわけです。また、紛争なんかのリスクも多分にあります。

 したがって、これらの例は「高インフレの懸念がない」即「極端な供給能力不足に陥っていない」という条件を満たしていません。

 財政破綻の例として挙げられるのは、そうした国だけなのです。

 逆に言えば

・「自国通貨を発行する」即「通貨発行権がある」

・「高インフレの懸念がない」即「極端な供給能力不足に陥っていない」

 この条件さえ満たしていれば、財政破綻なんかしないということでもあるわけです。つまり、日本は財政破綻しません。いくらMMTが異端と呼ばれていようが、非常識と呼ばれていようが、過去の歴史を見るにこれは正しいのです。

 

 しかしながら、マスメディアはうっかり(あるいはわざと)「財政赤字は気にするな」という部分ばかりを強調し、「高インフレにならなければ」という部分を忘れがちです。「政府は無限に借金できるという異端の理論」などという紹介もよくされました。そんなこと言ってないんですどもね。こうした悪質な報道によってMMTは誤解を受け、言われようのない批判を浴びせられるわけです。

MMT理論、現代貨幣理論(Modern Monetary TheoryもしくはModern Money Theory)とか言われてたりするんですが、、、、

国家がいくらお金をバラまいても、国家が破たんしないなら、税金取るの辞めちゃっていいと思うんですよね。

(中略)

MMT信者の人は、無税国家を主張してもいいはずなんですけど、さすがに無税国家が無理ってのを心のどこかで理解してるようで、「国はいくら借金してもいいんだ。だから税金を無くそう!」とかは言ってくれないんですよね。
https://www.excite.co.jp/news/article/Getnews_2199304/

 これは、かの2ちゃんねるを作った「西村ひろゆき」という方が書いたものです。「国がいくら借金しても大丈夫なんだろ?じゃあ税金をなくしてもいいんだな?」というわけですが、MMTは「いくら借金してもいい」などと言っているわけではありません。極端なインフレにならない範囲ではという話なのです。

 無税国家を作ってしまえば、インフレを抑制するものがなくなってしまうのです。そういうわけで、MMTの立場から無税国家を否定することは何ら矛盾しません。

 

 さて、日本ではこうしたMMTを理論の根底として「消費税廃止」を唱えた政党があります。それが、山本太郎率いるれいわ新選組であるわけです。

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 山本さんは正確には「まず5%に減税してから廃止する」という計画を唱えられております。MMTにしたがって考えるに、もし5%にしても充分にインフレにならなかった場合は、廃止しても全然大丈夫であると思います。

 

■幻想の北欧諸国

 わたしは今、テレビの独り言が流れるリビングで本文を執筆しております。先ほどニュースで消費税について取り上げられていました。あるコメンテーターが日本よりも消費税率の高い北欧諸国を挙げ、「こうしたところは消費税が高いかわりに社会保障が充実しています。日本も10%、20%と増税していった方がいいかもしれませんわ。うふん」などと仰有っておられました。こうした北欧と日本を見比べる増税論はいわば伝統的なものですが、これは間違いであると考えます。

 北欧諸国と我が国とは大きな違いがあります

 一つは人口構造。北欧は若者が多く、老人が少ないいわゆる「ピラミッド型」なのですが、日本は反対に若者が少なく、老人が多い「壺型」です。税を負担する人の割合、税で助けてもらう人の割合が大きく違うのに、これらを比べるのは適当ではないと思います。

 もう一つはお金の使い方。f:id:miyukiyasmaro:20190928181826j:image

 こちらは政府が使ったお金とGDPとの比率です。フィンランドスウェーデンデンマークなどの北欧の国は、たくさんお金を使っています。北欧はご案内の通り、税金をたくさん徴収した分、しっかり社会保障に使うので、社会保障が充実しているわけです。しかし日本の場合、徴収されたお金はきちんと我々のもとへ還るわけではありません。安倍さんは前回8%増税の際「引き上げ分は全て社会保障に使われます」などと仰有っておられましたが、結局引き上げ分の半分は国債の返済に充てられました。今回の10%への増税も「借金を返すのは将来の為だから社会保障」という論法で、前回と同様のことが計画されています。国債の返済に充てられたお金は、日本の経済には戻ってきません。

 

■あとがき

 わたしは日本の経済が良くなるその日まで、消費税反対を何度でも叫ぼうと思います。あんな無意味なものの為に、わたしたちの輝かしき未来が奪われるなんて真っ平です。f:id:miyukiyasmaro:20190928154838j:image

 赤い線はわたしたちの消費。消費税とは消費への罰金ですから、当然消費は冷え込みます。問題はその伸び率の変化。消費が増えていく角度が増税の度に緩くなり、ここ数年はほぼ横這いです。青い線は、それまでの角度に基づいた単純なシミュレーションです。青い線と赤い線の差は、わたしたちが増税で失った豊かさです。

 三日後の増税は阻止できないでしょうが、それから先、減税運動を進め、わたしたちの手の中に豊かな未来をもう一度取り戻したい。わたしのこんな過疎ブログが貢献できることなど塵にも等しいくらいですが、何も抵抗せずに悪政を許すなどと屈辱的な真似はしたくありません。

 どうかあなたにも、減税運動への参戦をお願いしたいものです。参戦といっても、皆様はわたしのような暇人ではないからバリバリ活動できるわけではないのかもしれません。しかし、時代を変えるということは、そんな大それたことではないと考えます。無理のない範囲で、自分なりにできる、ほんのほんの少しのこと。そうした些末なことが日本を変えると信じております。物の値段がほんの数%上がるだけで、わたしたちの未来が台無しになったように、わたしたちの意志がほんの数ミリ変わるだけで、この国は劇的に変わると信じております。

 

■付録「素晴らしき哉!表現」第二回
正直者の美学「坊っちゃん

 このコーナーは政治経済とはあまり関係のない文化的なものです。興味のない方はどうぞ容赦なく無視下さい。

 今回取り上げる作品はこちら。

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 言わずと知れた夏目漱石先生の名作「坊っちゃん」です。

 親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。

 この書き出しは非常に有名。主人公の性格が凝縮された一文によって物語がはじまります。

 主人公は負けん気が強く、幼い頃から荒いことを繰り返し、家族から疎まれます。しかし下女の「清」だけは彼を「坊っちゃん」と呼んで可愛いがりました。清は彼の性格を

まっすぐでよい御気性だ

 と肯定します。

 こうした環境下で、主人公の性格は形成されていくのでした。

 主人公が学校を卒業してから八日目のことです。学問を修めたは良いもののこれからどうしようかとしていたところ、校長から教師にならないかという誘いを受けます。例の無鉄砲な性格で、主人公はそれを受けて四国の学校で数学を教えることになりました。

 本作は、そこでの様々な思い出が中心となります。個性豊かな登場人物との奮闘が、漱石先生のユーモアな筆致で楽しめます。

 さて、今回はその思い出の中から「バッタ事件」というものを取り上げようと思います。

 主人公が宿直を担当することになった日のことです。彼が宿直小屋で就寝しようと布団に横たわると、突然バッタが五六十匹、布団の中から飛び跳ねてきました。さては生徒のいたずらだなと気づいた彼は、生徒を呼び出して説教しようとします。しかし飽くまで白を切る生徒たち。

おれはこんな腐った了見のやつらと談判するのは胸糞がわるいから、「そんなに言われなきゃ、聞かなくっていい。中学校にはいって、上品も下品も区別ができないのは気の毒なものだ」と言って六人をおっぱなしてやった。

 しかし、再び布団に入ってうとうとしていると、寄宿舎から騒がしい物音が聞こえます。さらには、叫び声まで聞こえます。注意しようと寄宿舎の階段に足を掛けると急に静まりました。ところが宿直小屋に戻って寝ているとまたうるさくなります。当然激怒する主人公。寄宿舎へ走って寝室を開けようとしますが、押しても引いても開きません。机か何かを積み立てているようでした。

 読者の皆様には、この時の彼の言葉に注目して頂きたいのです。

こんな時にはどうしていいかさっぱりわからない。わからないけれども、決して負けるつもりはない。

(中略)

世の中に正直が勝たないで、ほかに勝つものがあるか、考えてみろ。今夜中に勝てなければ、下宿から弁当を取り寄せて勝つまでここにいる。おれはこう決心したから、廊下のまん中であぐらをかいて夜のあけるのを待っていた。

 彼はうっかりあぐらをかいたまま居眠りしてしまうのですが、ふと目を覚ますと生徒が二人目の前にいるのを発見します。すかさずこれらを取っ捕まえて退治したわけです。

「頑固」というものを、こんなに美しく描いた小説が他にあるでしょうか。

 

 さて、今の世の中は正直ではない政治ばかりが行われています。消費増税もそうです。それをどうしようもないことだと見逃すのではなく「世の中に正直が勝たないで、ほかに勝つものがあるか」と、坊っちゃんのような頑固な姿勢で向き合うことが重要なのかもしれません。

 以上、引用部は

坊っちゃん夏目漱石 角川書店

 より引用しました。

 最後までお読み頂きまして、心より感謝申し上げて筆を置きます。