桜を見る会どころじゃない!
安倍総理は税金を使い、毎年「国の功労者」を集めてお花見をする「桜を見る会」を開いています。この度騒がれているのは、その「国の功労者」の中に安倍さんの支持者が含まれていたり、桜を見る会の費用が激増していたことです。これでは公私混合だということで野党やマスメディアが騒いでいるわけです。
確かにこれは重要な事件です。わたしたちが必要としている予算は出さないくせに、桜を見る会の予算を増やしているのは腹立たしいことです。しかし、ここでわたしたちがこの問題に夢中になることは、安倍さんの思う壺です。安倍政権は幾多のやらかしを犯しても「他の党よりマシだし」ということで政権の座を許されてきたのです。この程度のスキャンダルは安倍さんにとって痛くも痒くもないのです。
国民や野党の目がこうしたことに奪われると、安倍政権は決まって恐ろしいことを行ってきました。例えば、あの森友加計問題におけるどさくさに紛れ、「種子法」という法律の廃止が密かに行われました。松本智津夫(麻原彰晃)の死刑のどさくさに紛れ、水道民営化の法案が通されました。
種子法廃止や水道民営化について、ここで詳しくは立ち入りませんが、いずれも危険性を多分に含む恐ろしいものです。このような重大な悪政の多くは、国民が何かに夢中になっている隙に密かに遂行されます。
安倍さんがわざとやらかして騒ぎを起こしているのか、たまたま騒ぎが起きた際にここぞとばかり悪政を働いているのか、いずれにしてもわたしたちは世間が騒がしい時こそ注意しなくてはなりません。
果たして今回、安倍はまたもや恐ろしいことを進めています。本稿ではそれを解説したいと思います。
■令和の不平等条約 その名は「FTA」
今月の十九日、衆議院で「日米貿易協定承認案」が通過しました。与党の目標通りに行くと、来月には参議院で通過、来年の元日には発効されることになります。最終的にこの協定は「日米FTA」というものに発展させられる予定です。
いつか述べたことがありましたが、不景気の中で自由貿易を進めることは無益です。自由貿易に期待されていることは競争の激化による生産性の向上です。デフレとは供給が需要より多い状態ですから、この状態で生産性が向上しても不景気は悪化するばかりです。また、消費増税でますます衰弱していく我が国の経済が、最近景気の良いアメリカの経済に太刀打ちできるとは思えません。
従って先ず、貿易協定を結ぶこと自体がよくないことです。
さて、このままでは来年の元日に始まりそうな日米貿易協定ですが、先述の通り、これは日米FTAを目指して結ばれます。本当に恐ろしいのはこの日米FTAなのです。
FTAがどのような協定になるかはまだ確定しているわけではありませんが、この交渉は明らかに日本側が劣勢です。
既にFTAの交渉において、日本は、アメリカからの300万トンもの飼用トウモロコシの輸入が決定しています。いつも輸入している量は100万トンほどですから異常な量です。もちろん、最近急に畜産業が盛んになったなどというわけではありませんから、必要な飼料が増えたわけでもありません。政府によるとこの輸入増の理由は「害虫による食害飼料トウモロコシが不足する可能性があるから」といったものらしいのですが、農産水産省によるとそのような事実は確認できないないとのことです(ソースhttps://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2019/190902-38996.php)。つまり、わたしたちは必要のないトウモロコシをアメリカから大量に買わされることになるのです。一体これをどう処理するのでしょうか。
自由貿易を推進する方の多くはこうしたことを聞くと「その変わりに日本は自動車で勝てるじゃないか」ということを仰います。確かに日本の自動車はアメリカに勝っていました。アメリカの自動車産業は日本製の自動車に散々悩まされてきました。今も日本の自動車はアメリカに勝てるのかもしれません。しかしそれは、正々堂々と公平に戦った場合です。
普通自動車の2.5%の関税は25年後に撤廃、大型車の25%の関税は29年間現状のまま
https://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2019/190826-38948.php
何とも馬鹿げたことではありませんか。普通自動車の関税が撤廃されるのは25年後。その頃にはもうわたし(高校生)は四十代です。つまり、遥か先に渡るまで日本の自動車が有利になることなどないのです。大型車に至っては「29年間現状のまま」。そう、29年間後に関税を下げるというわけでもなく、少なくとも29年間同じ税率が保たれるということなのです。これでは日本が得をしたというより、アメリカ側の守りが固まったということではありませんか。
そもそも日本の自動車産業が潤うならば農業を犠牲にしてもいいなどという話ではありません。日本の農業を守り、食料を自前で用意できるよう努力することは大切です。国際情勢の激動により、海外からの食料の輸入が停止される危険性を考えるべきです。農業とはある種の「国防」なのです。
また、水田は日本の伝統的な風景として観光資源にもなり、土地を保水するインフラになるばかりか、生物の多様性を維持する場でもあります。わたしは兵庫県民ですから、そこのところはよく分かっています。
このように、農業は日本にとって極めて重要なものであり、何かと天秤に掛けるなどあってはならないのです。
■死ぬ気で競争すれば勝てるだって?
中学生の頃、自由貿易について友人と議論したことがあるのですが、友人は農業の関税を下げることに熱烈に賛成していました。曰く、農家が死ぬ気で頑張れば新しい品種が生まれ、農業がより価値のあるものに進化するだとか。
今回のFTAについてもそのような意見を持っておられる方がいらっしゃるかもしれません。
アメリカの大規模な農業による商品は絶対に安いはずですが、彼らによると「価格で勝てなければ質で勝負しろ」とのことです。しかし、現在の日本はデフレ経済。デフレは安い物が求められる経済です。国産に拘る人が多くいても、質の良い食べ物に拘る人が多くいても、余裕のない彼らは渋々安いものを選ぶでしょう。
日本の農業が死ぬ気で努力すれば勝つという考えは極めて困難なのです。……というのは、飽くまで正々堂々と戦ったらの話。FTAの場合、ただでさえ不利な日本の農業はもっと不利になります。
アメリカ政府のファクトシート(メディアに向けて発表するパンフレット)によると、農作物の分野でアメリカ側が引き下げる予定の関税は四十億円。プロ野球選手の年収程度です。あらゆる危険性を犯して得られる恩恵がたったの四十億円なのです。何とも馬鹿馬鹿しい話ではありませんか。それに対し、日本が引き下げる予定の関税は七千二百億円!文字通りの桁違いなのです!
自動車の面では当分特をせず、農業の面ではさらに不利になるこの条約。不平等条約としか形容のしようがございません。
■為替条項が入ると日本が詰むかも
これはまだ可能性の話に過ぎませんが、FTAには「為替条項」というものが追加されるかもしれないと指摘されています。
為替条項とは、貿易をする相国の為替、つまりお金のレートについての条項です。安定した貿易ができるよう、お互いが自国の為替を身勝手に操作してはいけないというものです。例えば日本とアメリカで考えてみましょう。円が急激に下がったりすると、日本製の物が安くなり、アメリカ製の物は相対的に高くなってしまいます。これではアメリカが不利になります。こうしたことがしょっちゅう起こると安心してビジネスできないから、勝手に為替を動かしてはならないという約束が為替条項なのです。
では、この為替条項を日本とアメリカの間で結んでしまえばどうなってしまうでしょうか。
以前わたしは「日本はお金を好きなだけ刷れるんだから財政破綻なんか気にしなくて良い。むしろお金を刷りまくって景気を良くしろ」といった主張をしたことがあります。しかし為替条項を結ぶと、こうしたことができなくなってしまうかもしれません。日本がお金を刷りまくると円安(円が安くなる現象)が起こるかもしれません。そうするとアメリカが為替条項を引き合いに出して文句を言ってくるかもしれません。
つまり、為替条項は日本政府の通貨発行権(お金を刷る権利)を脅かしかねないのです。国は経済の状況に合わせて様々な政策をとらねばなりません。その政策によっては円が高くなったり安くなったりします。しかしその度に文句をつけられては、国民に必要な政策が取れなくなるのです。
■あとがき
これは本稿のおさらいです。
安倍さんが進めているものが不平等条約なら、わたしたちは幕府ならぬ安倍政権を倒さねばなりません。
幕末と言えば欧州やアメリカといった列強が弱小国を飲み込む弱肉強食の時代。高杉晋作という方はイギリスに飲み込まれ荒れ果てた香港を直接見て、日本もこのままでは支配されてしまうと考え、倒幕を決意しました。現在の韓国はあの頃の香港と同じような状態です。詳しくは立ち入りませんが、韓国は2012年にアメリカとFTAを結びました。その結果、格差が拡大したとのことです。
現代を幕末のリメイクだと考えるならば、わたしは志士のように激烈に、安倍政権をやっつけたいものです。もちろん今度は武力を使わず、言論の力で。
忙しくて今回は少ししか書けませんでしたが、最後までお読み頂きありがとうございました。
完