僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

一瞬で分かるイランの問題

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 新年早々とんでもないことが起きたものです。

 一月二日の夜、米軍の無人機がイランのソレイマーニー司令官を爆撃。アメリカの国防庁の発表により、後にこの爆撃はトランプ大統領の命令によるものであることが分かります。ソレイマーニー司令官は死亡し、彼を英雄として讃えていたイラン国民が深く悲しむ様子が報道されます。

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 翌三日、イランの最高指導者ハーメネイー師はアメリカへの復讐を宣言。いよいよ第三次世界大戦が始まるのではないかと世界中が騒いでおり、「WW3」がヒットチャートとなっている次第です。

 一体なぜトランプ大統領はこのような恐ろしい作戦を行ったのでしょうか。そして、本当に第三次世界大戦は起こるのでしょうか。本稿では「イラン危機」について分かりやすく、手っ取り早く、そしてテレビのニュースよりもちょっと深く解説していきたいと思います。

 

■ソレイマーニーは何故殺害されたか

 本件についてのニュースを御覧になって、「またトランプは無茶苦茶なことやってんな。クレイジーな野郎だ」と思われた方が大多数であろうと思われます。また、色々とお詳しい方は「トランプはアメリカの戦争屋とつるんで儲けるつもりだ。因縁をつけて戦争を勃発させるつもりだ」と分析されたかもしれません。いずれにして、ほとんどの方は「トランプはやっぱりヤバい奴だ」という結論に至っていることと存じます。

 しかしわたしは、彼にもそれなりの事情があったわけで、思いつきで爆撃を行ったとか、ドス黒い欲望の為に戦争を図ったとは一概には言えないと考えます(もちろん彼の為に人の命が奪われたことは忘れてはいけません)。

 では「それなりの事情」とは何なのかを説明するとしましょう。

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 結論から申し上げると、トランプ大統領がソレイマーニー司令官を殺害した理由は、イラクの「カタイブ・ヒズボラ」というテロリストがアメリカ人を攻撃したからです。

「え?ソレイマーニー関係ねえじゃん」

 と思われるかもしれませんが、実は関係あるのです。

 ソレイマーニー司令官が率いているのはコッズ部隊という軍隊です。イラクには複数の軍隊があって、ソレイマーニーさんはその内の一つを指揮しているわけです。このコッズ隊は少し特殊で、周辺国の民間武装組織の指導を主な活動としていました。小難しい表現ですが、要するにテロリストを育成していたわけです。

 コッズ隊に育成されたテロリストの一つが先述の「カタイブ・ヒズボラ」です。カタイブ・ヒズボラは昨年の十一月から十二月の二ヵ月間、イラクにある米軍施設やアメリカ大使館に合計十一回の攻撃を仕掛けています。f:id:miyukiyasmaro:20200116215234j:image

 トランプさんからすれば迷惑千万な話でしょう。ソレイマーニー率いるコッズ隊のせいで、同じアメリカ人が傷ついていくわけです。勿論、アメリカ政府はイラクに対し、「お前たちの責任なんだから、警察なり軍隊なり使ってテロリストをどうにかしたらどうなんだ」と文句していたわけですが、イラクは何も対策を講じませんでした。

 さて、貴方がトランプ大統領の立場であられたら如何なさいますか?とにかく人が死ぬことだけは避けたいでしょう。ならばテロリストによるアメリカ人への攻撃が起こらないようにしたい。その為にはイラクに協力して欲しいものです。しかしイラクはなかなか動いてくれません。辛抱強く交渉し続ければ動いてくれるかも?しかし、それが成功するとは限りません。交渉に時間を費やしている間にまたアメリカ人が傷つけられるかもしれません。遂には「トランプはテロリストからアメリカ人を守らない弱腰野郎だ」などと批判される恐れすらあります。

 このように、巨大な権力を握る人は時に善悪を巡って葛藤するものなのです。

 トランプ大統領がこの葛藤の末に選択したのは、テロリストの親分であるソレイマーニー司令官の殺害でした。ソレイマーニーを殺害すればテロリストの勢力は弱まり、イラクへは重大なメッセージが伝わり、彼らが対策を講じるかもしれない。それが彼の答えです。この選択を道徳的にどう評価するかは貴方の心にお任せ致します。

 

第三次世界大戦はあるのかf:id:miyukiyasmaro:20200118180355j:image

 皆様が一番感心なさっているのは、やはりここではないでしょうか。「自分は徴兵されるのではないか」と不安になっている若い方がよくいらっしゃると聞きますが、落ち着いて考えてみましょう。

 戦争が起こるかどうかを判断するには、以下の三つを調べれば良いと思います。

一、トランプさんは戦争をしたいのか

二、アメリカ議会は戦争をしたいのか

三、ハーメネイー師(イランの最高指導者)は戦争をしたいのか

 アメリカ側で宣戦布告(戦争を始めることを宣言すること)の権利を持つ者はトランプ大統領アメリカ議会だけです。また、ハーメネイー師はイランの絶対的な権力者です。したがって、トランプ大統領アメリカの議会が戦争をしようと思わない限り、アメリカはイランに戦争を仕掛けず、ハーメネイー師が戦争をしようと思わない限り、イランはアメリカに戦争を仕掛けません。

 つまり、この三つの条件が一つも満たされない場合は、戦争が起こる可能性は極めて低いと言えます。では、三つの条件を一つずつ検証して参りましょう。

 

一、トランプ大統領は戦争をしたいのか

 

 

 実はアメリカの大統領というものの多くは戦争が大好きです。昔から大統領は他国に因縁を吹っ掛け、正義の名の元に戦争を仕掛けてきました。何故そのような愚かしいことをするのかと言うと、ズバリお金が絡んでいるからです。

 戦争が始まれば、武器や装備を作る「軍需産業」が儲かります。戦争を望む者が存在するわけです。彼らは時に政治家を利用して戦争を起こして貰うということを行ってきました。政治家は彼らの為に戦争を起こす代わりに、政治資金を「献金」という形で受け取るというわけです。f:id:miyukiyasmaro:20200118211009j:image

 このような軍需産業と政府との癒着は「軍産複合体」と呼ばれ、アメリカが戦争に依存する原因としてしばしば指摘されてきました。

 そこで、今回の一件に関して「トランプは軍需産業と結託した。他の大統領のように汚い金を稼ぐつもりだ」と推理する方がいらっしゃるわけです。

 しかし、わたしはそうではないと考えます。大統領が戦争を吹っ掛ける際、必ず行うことを彼はしていないからです。それが「煽動工作」です。

 本来、戦争は誰にも支持される行為ではありません。ですから彼らはテレビを駆使し、支持させるのです。侵略したい国を、残虐な独裁者が無実の民を虐げるディストピアと報道すれば、スーパーマンが大好きなアメリカ国民は勝手に開戦を支持してくれるのです。

 では、トランプ大統領はこのような工作を行っているのでしょうか。

ロイター通信が公表した米国世論調査によると、対イラン先制攻撃を支持すると回答した人は12%だったのに対し、「反対」は60%と、「反対」が「賛成」の5倍にも上った。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/16662?page=2&layout=b

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 因みにブッシュ大統領イラク戦争を始めた際は、国民の90%が開戦を支持していました。それと比較して考えれば、トランプ大統領が煽動工作を行っているとは考えにくいものです。そうであるならば、彼は戦争を始めようとしていないと言えるでしょう。f:id:miyukiyasmaro:20200118212651j:image

 そもそも裕福である彼は、金持ちと癒着するようなことはなく、自らの信念に基づいて政治を行っているように思われます。そうでなければメディアからしつこく袋叩きにされるようなことはないでしょう。

 彼が戦争で利益を得ることがない限り、イランと戦争を始めるメリットはありません。むしろ大統領選挙を控えているこの時期に、そのような無茶なことを行うとは考えられないものです。

 

二、アメリカ議会は戦争をしたいのか

 これはまずあり得ないと断言できます。議会ではトランプ大統領こそ戦争を行おうとするヤバい奴とし、それを阻止しようとする動きが多数派を占めているわけです。

 この前も大統領の交戦権を制限する法案が下院で可決されたくらいです。

米下院は9日、ドナルド・トランプ大統領のイランとの交戦権を制限する決議案を可決した。象徴的な意味合いが強い。

決議案は賛成224、反対194で可決された。下院は野党・民主党が多数派となっている。

アメリカが急襲される場合を除き、イランに対するいかなる軍事行動も連邦議会の承認を必要とする内容。

https://www.bbc.com/japanese/51058579

 

三、ハーメネイー師は戦争をしたいのか

 ニュースでは、ソレイマーニー司令官の葬儀に参加する大勢のイラン国民の様子が報じられました。

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 その為「イランの人たちも相当怒っているな」と感じられた方は多いと思います。実際、わたしもそう思いました。

 けれどもよく調べると、これは演出されたものであることが分かりました。イラン政府はあらゆる学校、商店、会社を閉鎖し、国民にソレイマーニー司令官の葬儀への参加を強制しました。バスや電車などの交通機関も、葬儀が開かれる場所へ運行されるようになり、結果大勢の国民がソレイマーニー司令官の死を嘆いている様相が現れたわけです。

 その為、イラン国民がアメリカへの復讐を望んでいるとは言い切れないものです。f:id:miyukiyasmaro:20200118211117j:image

 一方で、イラン国民は大規模な反政府デモを行っており、既に数百名もの死者が出ています。これは石油価格の高騰など、経済の混乱について訴えたものです。この状態でもし戦争を始めれば、経済は更に混迷を深め、国民の怒りを激化せしめることでしょう。そうなれば革命が起き、政府の崩壊もあり得ないことではありません。

 このように「イランの国民が復讐を訴え、政府もそれに従わざるを得ない」という見方は難しく、むしろ国民は戦争を望んでいないということが言えます。

 また、イランがアメリカに勝つ勝算もないと言えます。

 よく「イランはとても強大な武力を有しており、アメリカとも互角に戦い得る」などと報道されますが、多角的に見るとそうではないのです。

 確かにイランの軍は兵力が多く、兵器も高い精度のものを有しております。しかし、その兵器を使いこなす技術が未熟であるということが指摘されています。

 以前、カタイブ・ヒズボラのトップの人物がイスラエルによって殺害されるという事件がありました。その人物はイランの影響下にあった為、当時マスメディアは「きっとイランがイスラエルに報復を行い、戦争が始まるぞ」と報じました。しかし戦争は起こらなかったのです。これは、イランがイスラエルにミサイルを撃ってもあっさりと打ち落とされるのが明白だったからではないかと言われています。

 また、仮にイランとアメリカの単体の力が互角だったとしても、いざ戦争が始まった時、味方してくれる国に差があります。f:id:miyukiyasmaro:20200118211120j:image

 イラン側に回るのではないかと言われている国は中国とロシアですが、どうやら両国がイランを助ける可能性は低いものです。

 中国は米中貿易戦争で経済が疲弊した挙げ句、豚コレラやら新型肺炎やらで無茶苦茶な状態です。この前、トランプ大統領がようやく中国への規制を緩めてくれたところなのに、わざわざアメリカを敵に回すようなことをして再び経済を混乱させるとは考えにくいものです。「イランを怒らせたら石油を輸出してもらえなくなる」という指摘もありますが、仮にそうなったとしても代わりにサウジアラビアから貰えば事足りる話です。

 ロシアのプーチン大統領トランプ大統領と仲が良いということは言うまでもないと思います。また、ロシアはアメリカと、テロリストの情報を共有する取引をしており、これについてプーチン大統領はとても感謝していると発言しておりました。その為、ロシアがイランを助けるとは限りません。

 中国はまず味方をせず、ロシアも助けてくれるとは限らない。というわけで、確実にイランの味方をするであろう勢力は、コッズ隊が指導する周辺国のテロリストだけということになります。

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 一方、アメリカ側の味方をする勢力は同盟国のサウジアラビアイスラエルが考えられます。特にサウジアラビアはイランとは対立関係にあります。中東で最強の武力を持っているとされており、あまり敵に回したくないものであります。イスラエルアメリカから最新鋭の兵器を援助されており、手強いものです。

 このように、イランがアメリカと対決するというのは無謀なものです。

 さて、以上を踏まえて考えてみましょう。ハーメネイー師は戦争をしたいのでしょうか。

 国民の生活を苦しめ、革命の危機に晒されてまで無謀な戦争をするというのは有り得ないと言えるでしょう。

 

 以上、三つの条件が全て満たされていないので、第三次世界大戦は起こらないと結論致します。

 

■あとがき

 わたしはイランの問題によって第三次世界大戦は起こらないと考えます。とは言え、これをきっかけに若い日本人が戦争というものを意識し始めたことには意味があると考えます。

 仮にイランの問題が穏やかに収束していくとしても、どこかでまた新たな危機が起こらないとは限りません。その危機が日本を巻き込まないとも限りません。

 誰だって戦争は嫌なはずです。自分や家族、友人を戦争に巻き込まない為には、やはり政治に関心を持つべきと言えるでしょう。

 日本が戦争に巻き込まれない為には、自主性を確立していくべきです。アメリカに頼ることなく、自分の国は自分で守るという当たり前の体制を築くことが必要です。

 ではそれは可能なのか。どのようにすれば実現できるのか。考えてみると面白いかもしれません。

 ここで、世界平和を祈って筆を置くと致します。最後までお読み頂きありがとうございました。