僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

消費税を巡る歴史

 増税が正しいのか、凍結が正しいのか、はたまた減税か。これを明らかにしなくては、我が国は良くならないでしょう。
「日本経済なんてどうなろうと知らんこっちゃねえ」などと白けている方も、これまで行われてきた議論を理解しなくてはなりません。さもなければ、上司とか面接官に意見を問われた時、まともに答えれずコケにされて泣く破目(はめ)になるのです。

 

というわけで、この記事を読む人はいないかもしれませんが、特に肩書きのない軽度のアトピー性皮膚炎を患う高校生のこの三幸靖麿呂(もちろん仮名)が、消費増税を初心者でも分かるように、且つ徹底的に、解説したいと思います。今回はまず、消費増税についての基本的な常識を知る為に、日本における消費税を巡る歴史を繙(ひもと)きます。

 



1973年


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https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/entering_the_automotive_business/chapter2/section4/item1.html

 全ての始まりは第一次石油危機(オイルショック)でした。OPEC(中東を中心とした石油を輸出している国のグループ)が石油の値段を引き上げることを決定し、世界中が石油不足を恐れて騒ぎました。

1975年

 日本もその影響を受け、経済が悪化し、やむを得ず赤字国債を発行することになりました。国債を刷るということは、それを買ってくれる人からお金を借りることで、その額は二兆円になりました。
この時、日本の財政危惧論は始まったのかもしれません。


f:id:miyukiyasmaro:20190510185227j:image大平正芳さんhttps://www.aflo.com/ja/editorial-images/features/289
その時大蔵大臣(今の財務大臣)だった大平正芳まさよし)さんは「このままでは日本が財政破綻する!何か策を講じなくては!」という危機感を感じ、あるアイデアを思いつきました。
それが消費税だったのです。

1978年

総理大臣になった大平さんは消費税を導入しようと試みましたが、思いの外反感を買い、フルボッコにされてしまいました。これではまずいと思ったのか、大平大臣は衆参選の直前に消費税導入を撤回します。その後、大平大臣は選挙中に亡くなり、自民党は大敗を喫します。
消費税の導入は失敗しましたが、「日本の財政が危ない」という言論は確かにありました。

1987年


f:id:miyukiyasmaro:20190510185316j:image中曽根康弘さんhttps://www.aflo.com/ja/editorial-images/features/289


中曽根康弘総理が売上税法案を提出します。売上税は、企業の売上から税金を徴収する仕組みです。
しかし、これが国民や野党から猛反対を受けます。

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↑売上税導入に反対する人々
https://photobank.mainichi.co.jp/php/KK_detail.php
売上税に反対する各企業、団体が集結し、大型間接税・マル優廃止反対各界連絡会が発足しました。(後の消費税廃止各界連絡会)本会はホームページで、「運動は大きく盛り上がり、売上税とマル優廃止法案を廃案に追い込みました」とまで豪語しています。
このような団体による活動によって、売上税反対が盛り上がり、同年三月には16万人がデモを行います。
そして遂に、売上税導入は断念されました。

1988年

 しかし、増税反対の世論に背いて、竹下登政権下で消費税法が成立し、翌年これが施行されます。税率は3%です。


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竹下登さん
https://www.aflo.com/ja/editorial-images/features/289


この竹下登総理は強力な権力を持っていた為、このようなことができたという見方があります。ほんの噂ですが、「或る記者が記者会見で竹下首相になかなか攻めた質問をした。すると竹下首相は何食わぬ顔で『それはそうと、僕は確か君とも名刺を交換しましたね』と言った。するとその記者は顔を蒼くして黙った」という話もあります。「名刺を交換した」とはお金をやり取りしたことを指していて、いつでも消せるんだよと警告したんだとか。しかしこれはまあ、「信じるか信じないかはあなた次第です」程度の話だと思って頂いて結構です。


さて、この時大蔵省より大々的に消費税の重要性を訴える政府広報のテレビCMが流れます。このCMはYouTubeで検索すると幾(いく)つかのバリエーションが見られますが、「この先、少々高齢化で社会保障制度が危うくなる。その為に消費税は大事なのです」といった主旨のものがあります。<iframewidth="560"height="315"src="https://www.youtube.com/embed/GbnJiNesBgU" frameborder="0" allow=">

 このようなCMが効を奏して「少々高齢化の為に増税はやむ無し」というロジックが広く知られるようになったと考えられます。
これを転換点として、ジリジリと消費税率が上がっていきます。

1994年
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 ↑村山富市さん https://www.aflo.com/ja/editorial-images/features/289

 村山富市総理が、消費税率を3%から4%に引き上げ、さらに地方消費税1%を加える税制改革関連法を成立!

1997年
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橋本龍太郎さんhttps://www.aflo.com/ja/editorial-images/features/289

 橋本龍太郎総理、消費税率を5%に引き上げ!

このように、90年代は増税の時代だったと言えます。

ところが、2001年、消費増税を行った橋本龍太郎元総理が消費増税は間違いだったと認め、国民に謝罪します。

「日本経済の実態を十分に把握しないまま、国の財政の健全化を急ぐあまり、財政再建のタイミングを早まったことが原点にあることを、率直に認めます」とのべています。さらに橋本氏は国民に対して、「誠に申し訳ないと思っています」と謝罪しました。


赤旗新聞

これが奏したのか、20世紀に入ってから増税の流れは一旦止まります。

2009年には、「消費税率は4年間上げない」と公約を掲げた民主党が総選挙で勝利します。もちろん勝利した要因は別にもあるでしょうが、ともかく、この時確かに四年間消費税を上げないとする政権を世論は許したわけです。

ところがどっこい、同年10月に重大な事件が起こります。
ギリシャ危機です。
ギリシャがそれまで公表していた統計に嘘があり、本当の赤字国債の量とかけ離れていたことが明らかになったのです。
ギリシャが加盟していた欧州連合EU)もしっかり飛ばっちりを受けて、ユーロが急落し、世界中が混乱したのです。
そうして、ギリシャ国債はとことん信用を失い、三年後の2012年に債務減免の措置に出ました。債務減免とは、債務(返さなきゃいけないお金)を〝減〟らしてもらえるよう〝免〟じてもらうことです。つまり、ギリシャは返すと約束したお金を返せなくなったということを認めてしまったのです。これは財政破綻です。〝財〟をやりくりする〝政治〟が破綻してしまったのです。

さらに…!

2013年


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http://photozou.jp/photo/show/2964799/185308980/?lang=en

 財務省は9日、6月末の国債と借入金、政府短期証券の合計残高(国の借金)が1008兆6281億円と、初めて1000兆円台となったと発表した。3月末から17兆0270億円増加した。大型の緊急経済対策などによる国債の増発などで残高が膨らんだ。


https://jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPTYE97805J20130809

これも徹底的に騒がれ、「日本が1000兆円以上借金を抱えている!」「国の借金ってことは国民の借金だから一人当たり 八百万円借金してる!」というレトリックが流布しました。
当事小学生だった私も、「ヤバイなあ、どうなるんだろうなあ」と、危機感を覚えていました(今は少し違います。というのは次回のお楽しみに)。父も「この国では子供は生まれた瞬間から何百万も借金を抱えた状態と言って過言ではない。死ぬまでに何とかして返さなきゃいけないんやで」と説明していたのを覚えています。あの時は少しメランコリックな気分になりました(これも今は違います。というのは次回のお楽しみに)。

このようにして、財政危惧論はいよいよ絶頂を迎えました。増税やむ無しという考え方は、この時点でしっかり常識化されたのです。
ところで、一見無敵の財政危惧論ですが、これに理論的な反論を試みた識者たちがいました(どのような反論かというとそれは次回のお楽しみに)しかし、異端のように見られたのかあまり注目されず、時代の軌道を変えるには及びませんでした。そして、彼らの残した著書が後に無名の少年に影響を与えることを、この時誰も知りません。

2014年 安倍総理が8%の消費増税を行います。同年に10%の増税を行う予定でしたが、延期が繰り返され、そして現在、政府は「2019年の10月にリーマンショック級の事態がない限り、増税を行う」という方針を明らかにしています。また延期となるか、それとも今度こそ本当にやるのかというのが現在注目されているわけです。
そして国内においては希薄であった財政危惧懐疑(かいぎ)論も、次第に強力になりつつあるのかもしれません。
Twitterでは「消費増税反対bot」なる方が漫画によって増税反対論を表現し、注目されています。
彼らは何故消費増税に反対しているのでしょうか?それは単なるトンデモ論なのでしょうか?それとも……

次回、消費増税が正しいか否かについて、この私が持論を述べたいと思います。例え何者も読まないとしても。