僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

香港で古文を勉強しよう!

 いつもわたしの記事を読んで下さる皆様に、(そしてはじめて読まれる方にも)ほんのささやかな報告があります。本ブログの読者数が十名を越えました。

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 読者数十名突破というのは、偉業と呼ぶには些末すぎるものではありますが、わたしとしては嬉しくてたまらないことです。

 本ブログに読者登録して下さった十二名の方々、本当にありがとうございます。この名誉に報いられるような記事を書くよう、尽力していきたいと存じます。

 さて、本稿ではこれを記念致しまして、古文の単語を勉強しながら香港の問題を解説するという変わった趣向のものをやってみたいと思います。どういうことかというと、それは読んで頂ければ理解して頂けることでしょう。

 

■区議会選挙圧勝

 未だニュースでよく出る香港の問題ですが、この前、民主派がまた一歩ゆゆしき前進を遂げました。

 

【ゆゆし】……重大な 立派な 恐ろしい


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 それが十一月二十四日の区議会選挙です。この選挙において、民主派(つまりデモ側の党)が圧勝しました。議会の定数は452議席なのですが、民主派はこのうちの385議席を獲得したのです。つまり、香港の議会の八割以上が民主派となったと言えます。f:id:miyukiyasmaro:20191130122849j:image

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/11/4753417e0a889126.html

 国民の積極的な活動によって、これほどまでに議会が変わるのは素晴らしいことです。「もう日本は終わってる。国民が頑張ったってどうせ何も変わらない」という悲観的な日本人が多いですが、香港市民の活動がそうした方々の希望となればいいなと思うものです。

 但し、これで香港市民が自由を手に入れたというのは早計です。確かにゆゆし一歩ですが、香港独立という目的地はまだ遠いところにあります。

 というのは、実は香港の区議会というものはあまり権限を持つ機関ではないのです。区議会は飽くまで諮問機関(大雑把に言うと意見を言う機関)であって、予算や法律を作るなど、具体的に香港を改革していくゆゆし力はないのです。

 

■これが香港の政治だ!

 香港のニュースの本質を理解する為には、香港の政治システムをよく理解する必要があります。

「香港の選挙で民主派が勝った」というニュースを聞いて、「あれ?デモしてた人たちって民主主義を訴えていたんじゃなかったっけ?香港って選挙あるの?」と混乱した方がいらっしゃるかもしれません。しかし、本稿を読めば、香港の政治の仕組みがよく分かる筈です。

 結論から申し上げて、香港の制度は市民になめげなるものです。

 

【なめげなり】……無礼だ

 

 三権分立という言葉を聞いたことがあるでしょう。この三権とは、立法(法を作る)、行政(法に基づいて政治を行う)、司法(法に基づいて人を裁く)の三つのことです。我が国を例にすると、立法は国会が、行政は内閣が、司法は最高裁判所がそれぞれ代表しています。

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 そして香港の場合、立法は立法会、行政は行政会議、司法は司法機構が担当します。

 従って立法会は我が国で言う国会にあたるわけです。国会議員はわたしたち日本国民が選挙しているわけですが、香港の場合はどうでしょう。

 香港の立法会議員の半分は香港市民が直接選んでいます。けれどももう半分は、間接選挙という形で選挙されます。間接選挙とは、その名の通り間接的な選挙。議員を選挙する「選挙人」を香港市民が選挙するわけです。

そうすると民意が反映されずらくなり、その分政府が手を加える余地が出てきます。

 このような立法会が制定した法に基づき、行政会議が重要な政策を決定していくわけですが、この行政会議にも問題があります。それは、行政長官という一人のリーダーがこの会議の中で王様のように振る舞っていることです。会議では多数決がとられることがありますが、行政長官にはこの多数決を覆す権限があります。従って、香港の行政は行政長官が独裁していると言っても差し支えないでしょう。

 そして、この独裁的な権限を持つ行政長官は、選挙委員会という組織が選挙して決めます。選挙委員会は千人程度の成員によって構成されますが、その千人には中国共産党により指名された人間も含まれています。これは陰謀論ではなく、公然とした事実です。

 こうしたこともあり、香港のデモ隊は「なめげなり!」と怒っているわけです。f:id:miyukiyasmaro:20191130180951j:image

 因みにこれは現在の香港行政長官、林鄭月峨(りんていげつが キャリーラム)さんです。民主派にはいつも強気な発言をしているので嫌われていますが、区議会選挙の結果を受け、「民意を受け反省したい」等と述べたそうです。その発言の裏に、何か意図があったりするのでしょうか?

 

■区議会選挙の勝利はやらせ?

 この選挙での勝利は中国政府が彼らを油断させる為に仕組んだもので、徒なる物だという指摘があります。

 

【徒(あだ)なり】……中身のない、虚しい

 

 この勝利が仕組まれたものか、そうでないかはわたしには分かりませんが、少なくとも彼らは前進したと考えます。

 中国政府が勝利を仕組んだと仮定しても、政府の狙いは外れたと考えます。デモ側の代表とも言える周庭(アグネス・チョウ)さんは区議会選挙の圧勝について、我が国のメディアの取材に対し、日本語で次のように述べています。

 


YouTube

区議会選挙は、確かに昨日は圧勝的な勝利をとりましたけれども、でも結局区議会選挙は小さい選挙なので。香港の立法会選挙、そして行政長官選挙は民主的な選挙ではありません。

 だから、この二つの選挙を民主的な選挙になれるように私たちが引き続き戦わなければいけないと思います。

https://youtu.be/N9LspTbN2bk

 映像を見ると分かって頂けるかと思いますが、周庭さんは終始笑っていません。彼女が依然、態度を変えていないのは疑えないことでしょう。

 デモ側は彼女を注目している筈です。彼らもこれを見て、これまで通りの活動の続行を決意するだろうと考えます。

 また、前述の通り区議会は具体的な権力のない諮問機関ではありますが、政府に文句を言うことはできます。影響力は少なからずある筈で、必ずしも徒なりとは言えないでしょう。

 

■香港はもう孤立していない

 中国政府という巨大な組織に香港市民が単独で立ち向かうのは困難な話です。しかし、様々な国家が香港の味方となれば、形勢は確実に変わります。そして、既にそういう動きはまめやかに始まっています。

 

【まめやかなり】……本格的である 真面目である 実践的である


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 十一月二十七日、トランプ大統領香港人権法案に署名。アメリカ合衆国は公式に香港市民の味方となりました。また大統領は、香港政府への催眠ガスなどの輸出を禁止する法案にも署名。具体的でまめやかなる援護射撃はもう始まっています。

 また、オーストラリアと香港では貿易協定が交渉中ですが、オーストラリアのスコット・モリソン首相はこの協定に人権条項の追加を検討しているという情報があります。

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 これは、香港政府が市民の人権を守らないと貿易に規制を掛けるというものです。

 イタリアでも香港人権法案のような法律の議論が進んでいます。

 これからも香港市民の味方が現れるかもしれません。勝算は充分にあるわけです。

 但し、この動きは必ずしも喜ばしいばかりではありません。香港を支援しようとする動きの裏には、ひょっとしたら香港市民を利用したいという思惑があるのかもしれません。例えばアメリカ、オーストラリア、イタリアが裏で共謀し、それらの国に都合の良い傀儡(かいらい)政権を作ろうとしているのかもしれません。勿論、これはただの推測で何の根拠もありませんが、歴史を振り返ればそういったことはいくらでも見られます。

 こうしたことを防ぐには、多様な国家から偏りなく支援を受けることが重要であると考えます。例えば、民主派への支援の全てがアメリカによるものであれば、力関係は確実にアメリカが上になり、香港の新政権はアメリカの言いなりになりかねません。しかし、十ヶ国が民主派を支援していて、アメリカはそのうちの一割しか支援していないとなれば、新政権がアメリカの言いなりになる恐れはかなり低くなるでしょう。

 従って香港新政権を如何なる国家の言いなりにもならない、まめやかで主権ある国にする為には、市民への支援の動きを世界中に広げる必要があります。その為には、我が日本政府もこの動きに参加する必要があるのではないでしょうか。

 少なくとも、なめげなる現政権はそうしたゆゆしことをしてくれそうにありません。だからといって、「どうせ日本は変わらない」という徒なることを言うのではなく、香港で戦っている方々のように頑張りたいものです。

 最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

桜を見る会どころじゃない!

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 安倍総理は税金を使い、毎年「国の功労者」を集めてお花見をする「桜を見る会」を開いています。この度騒がれているのは、その「国の功労者」の中に安倍さんの支持者が含まれていたり、桜を見る会の費用が激増していたことです。これでは公私混合だということで野党やマスメディアが騒いでいるわけです。

 確かにこれは重要な事件です。わたしたちが必要としている予算は出さないくせに、桜を見る会の予算を増やしているのは腹立たしいことです。しかし、ここでわたしたちがこの問題に夢中になることは、安倍さんの思う壺です。安倍政権は幾多のやらかしを犯しても「他の党よりマシだし」ということで政権の座を許されてきたのです。この程度のスキャンダルは安倍さんにとって痛くも痒くもないのです。

 国民や野党の目がこうしたことに奪われると、安倍政権は決まって恐ろしいことを行ってきました。例えば、あの森友加計問題におけるどさくさに紛れ、「種子法」という法律の廃止が密かに行われました。松本智津夫麻原彰晃)の死刑のどさくさに紛れ、水道民営化の法案が通されました。

 種子法廃止や水道民営化について、ここで詳しくは立ち入りませんが、いずれも危険性を多分に含む恐ろしいものです。このような重大な悪政の多くは、国民が何かに夢中になっている隙に密かに遂行されます。

 安倍さんがわざとやらかして騒ぎを起こしているのか、たまたま騒ぎが起きた際にここぞとばかり悪政を働いているのか、いずれにしてもわたしたちは世間が騒がしい時こそ注意しなくてはなりません。

 果たして今回、安倍はまたもや恐ろしいことを進めています。本稿ではそれを解説したいと思います。

 

■令和の不平等条約 その名は「FTA

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 今月の十九日、衆議院で「日米貿易協定承認案」が通過しました。与党の目標通りに行くと、来月には参議院で通過、来年の元日には発効されることになります。最終的にこの協定は「日米FTA」というものに発展させられる予定です。

 いつか述べたことがありましたが、不景気の中で自由貿易を進めることは無益です。自由貿易に期待されていることは競争の激化による生産性の向上です。デフレとは供給が需要より多い状態ですから、この状態で生産性が向上しても不景気は悪化するばかりです。また、消費増税でますます衰弱していく我が国の経済が、最近景気の良いアメリカの経済に太刀打ちできるとは思えません。

 従って先ず、貿易協定を結ぶこと自体がよくないことです。

 

 さて、このままでは来年の元日に始まりそうな日米貿易協定ですが、先述の通り、これは日米FTAを目指して結ばれます。本当に恐ろしいのはこの日米FTAなのです。

 FTAがどのような協定になるかはまだ確定しているわけではありませんが、この交渉は明らかに日本側が劣勢です。

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 既にFTAの交渉において、日本は、アメリカからの300万トンもの飼用トウモロコシの輸入が決定しています。いつも輸入している量は100万トンほどですから異常な量です。もちろん、最近急に畜産業が盛んになったなどというわけではありませんから、必要な飼料が増えたわけでもありません。政府によるとこの輸入増の理由は「害虫による食害飼料トウモロコシが不足する可能性があるから」といったものらしいのですが、農産水産省によるとそのような事実は確認できないないとのことです(ソースhttps://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2019/190902-38996.php)。つまり、わたしたちは必要のないトウモロコシをアメリカから大量に買わされることになるのです。一体これをどう処理するのでしょうか。

 自由貿易を推進する方の多くはこうしたことを聞くと「その変わりに日本は自動車で勝てるじゃないか」ということを仰います。確かに日本の自動車はアメリカに勝っていました。アメリカの自動車産業は日本製の自動車に散々悩まされてきました。今も日本の自動車はアメリカに勝てるのかもしれません。しかしそれは、正々堂々と公平に戦った場合です。

普通自動車の2.5%の関税は25年後に撤廃、大型車の25%の関税は29年間現状のまま

https://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2019/190826-38948.php

 何とも馬鹿げたことではありませんか。普通自動車の関税が撤廃されるのは25年後。その頃にはもうわたし(高校生)は四十代です。つまり、遥か先に渡るまで日本の自動車が有利になることなどないのです。大型車に至っては「29年間現状のまま」。そう、29年間後に関税を下げるというわけでもなく、少なくとも29年間同じ税率が保たれるということなのです。これでは日本が得をしたというより、アメリカ側の守りが固まったということではありませんか。

 そもそも日本の自動車産業が潤うならば農業を犠牲にしてもいいなどという話ではありません。日本の農業を守り、食料を自前で用意できるよう努力することは大切です。国際情勢の激動により、海外からの食料の輸入が停止される危険性を考えるべきです。農業とはある種の「国防」なのです。

 また、水田は日本の伝統的な風景として観光資源にもなり、土地を保水するインフラになるばかりか、生物の多様性を維持する場でもあります。わたしは兵庫県民ですから、そこのところはよく分かっています。

 このように、農業は日本にとって極めて重要なものであり、何かと天秤に掛けるなどあってはならないのです。

 

■死ぬ気で競争すれば勝てるだって?f:id:miyukiyasmaro:20191123141324j:image

 中学生の頃、自由貿易について友人と議論したことがあるのですが、友人は農業の関税を下げることに熱烈に賛成していました。曰く、農家が死ぬ気で頑張れば新しい品種が生まれ、農業がより価値のあるものに進化するだとか。

 今回のFTAについてもそのような意見を持っておられる方がいらっしゃるかもしれません。

 アメリカの大規模な農業による商品は絶対に安いはずですが、彼らによると「価格で勝てなければ質で勝負しろ」とのことです。しかし、現在の日本はデフレ経済。デフレは安い物が求められる経済です。国産に拘る人が多くいても、質の良い食べ物に拘る人が多くいても、余裕のない彼らは渋々安いものを選ぶでしょう。

 日本の農業が死ぬ気で努力すれば勝つという考えは極めて困難なのです。……というのは、飽くまで正々堂々と戦ったらの話。FTAの場合、ただでさえ不利な日本の農業はもっと不利になります。

 アメリカ政府のファクトシート(メディアに向けて発表するパンフレット)によると、農作物の分野でアメリカ側が引き下げる予定の関税は四十億円。プロ野球選手の年収程度です。あらゆる危険性を犯して得られる恩恵がたったの四十億円なのです。何とも馬鹿馬鹿しい話ではありませんか。それに対し、日本が引き下げる予定の関税は七千二百億円!文字通りの桁違いなのです!

 自動車の面では当分特をせず、農業の面ではさらに不利になるこの条約。不平等条約としか形容のしようがございません。

 

■為替条項が入ると日本が詰むかもf:id:miyukiyasmaro:20191123141410j:image

 これはまだ可能性の話に過ぎませんが、FTAには「為替条項」というものが追加されるかもしれないと指摘されています。

 為替条項とは、貿易をする相国の為替、つまりお金のレートについての条項です。安定した貿易ができるよう、お互いが自国の為替を身勝手に操作してはいけないというものです。例えば日本とアメリカで考えてみましょう。円が急激に下がったりすると、日本製の物が安くなり、アメリカ製の物は相対的に高くなってしまいます。これではアメリカが不利になります。こうしたことがしょっちゅう起こると安心してビジネスできないから、勝手に為替を動かしてはならないという約束が為替条項なのです。

 では、この為替条項を日本とアメリカの間で結んでしまえばどうなってしまうでしょうか。

 以前わたしは「日本はお金を好きなだけ刷れるんだから財政破綻なんか気にしなくて良い。むしろお金を刷りまくって景気を良くしろ」といった主張をしたことがあります。しかし為替条項を結ぶと、こうしたことができなくなってしまうかもしれません。日本がお金を刷りまくると円安(円が安くなる現象)が起こるかもしれません。そうするとアメリカが為替条項を引き合いに出して文句を言ってくるかもしれません。

 つまり、為替条項は日本政府の通貨発行権(お金を刷る権利)を脅かしかねないのです。国は経済の状況に合わせて様々な政策をとらねばなりません。その政策によっては円が高くなったり安くなったりします。しかしその度に文句をつけられては、国民に必要な政策が取れなくなるのです。

 

■あとがき

 これは本稿のおさらいです。f:id:miyukiyasmaro:20191123134320j:image

 安倍さんが進めているものが不平等条約なら、わたしたちは幕府ならぬ安倍政権を倒さねばなりません。

 幕末と言えば欧州やアメリカといった列強が弱小国を飲み込む弱肉強食の時代。高杉晋作という方はイギリスに飲み込まれ荒れ果てた香港を直接見て、日本もこのままでは支配されてしまうと考え、倒幕を決意しました。現在の韓国はあの頃の香港と同じような状態です。詳しくは立ち入りませんが、韓国は2012年にアメリカとFTAを結びました。その結果、格差が拡大したとのことです。

 現代を幕末のリメイクだと考えるならば、わたしは志士のように激烈に、安倍政権をやっつけたいものです。もちろん今度は武力を使わず、言論の力で。

 忙しくて今回は少ししか書けませんでしたが、最後までお読み頂きありがとうございました。

 

習近平入門!

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 我が日本のすぐ側にとても巨大な国があります。中華人民共和国です。そしてその指導者こそ習近平です。この習近平という方はどのような人なのでしょうか。

 

■ちょっと壮絶な生い立ち
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 習近平は1953年に生まれます。父は副総理大臣だった習仲勲で、恵まれた家庭でした。

 ところが1966年、時の中国の指導者「毛沢東」が文化大革命を起こします。文化大革命とは、中国の繁栄を邪魔する悪い資本主義者をやっつける戦い……という名目で、毛沢東に都合の悪い勢力を排除する為に行われた謀略でした。この影響により、当時中学生だった彼の学校は解散されます。

 まもなく毛沢東の政敵は政界から次々と追放。習仲勲もその一人で、その息子である習近平は激しい弾圧を受け、四度の投獄を経験します。

 やがて中国政府は都市部の労働者を地方に分散する政策「下放」を進め、1969年、習近平は田舎へ追いやられます。

 副総理の息子から一転、社会の激動により徹底的に落ちぶれた習近平。しかし1974年、彼は中国共産党に入党します。ここから彼は着々と浮上し、2013年三月十四日、中華人民共和国国家主席となるわけです。

 

■明を取り戻せ!

 失意のどん底から中国の指導者へ登りつめた習近平は「明(みん)を取り戻す」というキャッチフレーズを唱えました。明は皆様ご案内の通り、昔の中国の名前です(あそこは名前が変わる度に民族が入れ替わったり文化が滅んだりするので、「昔の中国」という表現は正確ではないかもしれませんが)。

 明!その別の名を「大モンゴル帝国」。明はおそらく、史上最大の帝国でした。

 では明を世界の覇権国たらしめていたものは何か。それがシルクロードです。f:id:miyukiyasmaro:20191114195215j:image

 西はローマ、東は京都まで渡る、ユーラシア大陸を包括した巨大な交易路。それがシルクロードです。多様な物や文化が盛んに行き交うシルクロードの真ん中に明は座していました。その恩恵にあずかった明は、世界の覇権を握る国力を得たのです。

 というわけで、もう一度シルクロードを作ろう!という計画こそ一帯一路構想なのです。f:id:miyukiyasmaro:20191114200520j:image

 これまで中国は、密かにゆっくりと力を蓄えていく方針をとってきました。それを習近平は、このように大胆に成長していく方針に一転せしめたのです。絶望から国家主席へ一気に駆け上がった習近平にこそ、思い付けた策と言えるでしょう。

 ……と言いたいところではございますが、実を言うと、この一帯一路という計画は元を辿るとパクりです。2011年七月に、ヒラリー・クリントンが旧シルクロード圏の国々にインフラを建設しようという構想、「ニューシルクロード」を発表しました。その翌年から中国政府は「新しいシルクロードを作ろう」という話をし始めます。翌2013年には、上の画像のような「陸のシルクロード」と「海のシルクロード」を結ぶ構想、「一帯一路」が習近平によって発表されます。よくパクりを指摘される中国ですが、この一帯一路は世界史上最大規模のパクりなのかもしれません。

 さて、一帯一路が発表されて間もなく、習近平は東アジア諸国のインフラに本格的な投資を始めました。我が国のニュースも一帯一路を取り上げたものです。

 わたしが中学生の頃、「ガイアの夜明け」という池上彰さんの番組で一帯一路が取り上げられていました。うろ覚えですが、インドかそれっぽい国、一帯一路によって新しいインフラが建設された都市に住む若者が取材を受けていました。「一帯一路でここも凄く便利になったよ。中国には感謝しかないね」これもやはりうろ覚えですが、概ねこんな感じでした。

 今年の4月には、沖縄県の玉置デニー知事が中国へ訪問した際、中国の副総理と会談し「沖縄を一帯一路の日本への入り口として活用する」などといったことを話しました。

  一帯一路によって中国はアジアを豊かにし、アジアのリーダーとなりつつあるのです。日本はこの波に遅れてはいけません。

 ……というのが多くの方の認識であろうと思うのですが、実はこの裏に、習近平の恐ろしい野望が隠されていたのです。

 

■静かなる侵略

  一帯一路によってできたインフラの一つ、ハンバントタ港を見てみましょう。f:id:miyukiyasmaro:20191116114350j:imagef:id:miyukiyasmaro:20191116114405j:image

 この立派な港の建設費用およそ十三億ドルの大部分は、習近平政権の投資によって賄われました。当時の住民は地元が潤い万々歳でしたが、彼らはこの投資の異常さに気づかなかったようです。何とその金利は最高6.3%という暴利。彼らはこれを返済できなくなります。ここからが実に悪魔的です。

 中国政府は借金を返済する代わりに、次のような取引を要求しました。港の株式70%を99年間握る権利を、十一億ドルで売却しろというのです。彼らはこの要求を飲まざるを得ませんでした。つまり、中国政府は十三億ドルで作られた = 十三億ドル以上の価値がある港を十一億ドルでまんまとせしめたわけです。

 習近平支配下に落ちたハンバントタ港はどのようになったのでしょうか。

5カ所ほどの出入り口があるが、どこにも警備員が立ち、目を光らせている。「かつて港は誰でも自由に入れたんだ。小さい頃はよく魚釣りをした。中国が来てから窮屈になった」と話すのはタクシー運転手のハトタさん(50)だ。海岸沿いに立ち並ぶ住居は空き家が目立ち、すべて港の拡大計画に伴って立ち退きを要求されたという。

(中略)

 港の正門から200メートルほど手前の地点では、ストライキを起こしている港湾労働者が集会を開いていた。僧侶も参加し、シンハラ語で「職か?死か?」と書かれた横断幕を掲げ、シュプレヒコールを上げた。

 労働者側によると、中国側に運営権が移り、地元労働者が大量解雇される危険性が生じているという。スト参加者の一人は「解雇の計画があると聞いているが、政府や中国側からは満足のいく説明がない」と不安と憤りを口にした。

 一方、港湾開発を主導したラジャパクサ前大統領の支持者からは中国側への株式貸与などで「国の財産が外国に移った」として、現シリセナ政権に抗議する活動も起きている。

https://www.sankei.com/world/news/180118/wor1801180016-n1.html

 このように、既にハンバントタ港は習近平政権の領土同然のものとなっています。

 ハンバントタ港のように、闇金じみたやり方によって国土を侵略し、ユーラシア大陸を支配する。それが一帯一路なのです。

 

■あなたも洗脳されているかも!

 とは言え、このように大胆な侵略を行えば国民からの大反発を食らい、失敗するのが普通です。そこで習近平政権はそうならぬよう、世界中の世論を麻痺させているのです。

 

 小原 (中略)中国はお金に物を言わせた工作を極めて活発に行っている。例えば、ニューヨークのタイムズスクエアの巨大なスクリーンを借り切って、中国の広告を流し続けるとか。

桒原 そうです。典型的なPD(※パブリック・ディプロマシー。他国の世論に影響を与える工作のこと)です。他にも、アメリカには「CCTVアメリカ」というTV局があるんですが、これは、二〇一二年頃に中国がアメリカ国内に作ったTV局です。

 

表現者クライテリオン 2019年7月号

(※内は三幸による)

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 このようにして、習近平は報道に介入し、都合の良いように世論を煽動しているのです。何とも狡猾で恐ろしい。

 

■日本も無関係ではない

 わたしたち日本人も対岸の火事としてぼんやりしていてはなりません。習近平による日本侵略は既に始まっています。f:id:miyukiyasmaro:20191116180417j:image

 近年、中国による日本の土地の買い占めが著しくなっています。

現在の日本では、中国人や中国系企業が日本で土地を購入するケースが激増している。具体的には、北海道を中心に水源地、土地や建物などの不動産が中国マネーに買収されていっている。2017年10月25日のレコードチャイナによると、すでに国土の2%が中国資本に買収されたとのことである。国土の2%とは、ちょうど静岡県の広さに相当する。

 

三橋貴明「帝国対民主国家の最終戦争が始まる」ビジネス社

 こうしたことについて「ただの投資じゃないか。バブルの時の日本も同じことをしていたじゃないか」と軽視する人がいます。しかし、この買い占めは単なる投資ではありません。表では中国系企業や中国人が土地を買っていることになっていますが、それを操っているのが習近平であることは疑えません。

すでに、滝川市陸上自衛隊滝川駐屯地が一望できる山林を中国系企業が買収。ニセコ町の隣町である倶知安(くっちゃん)町の陸上自衛隊倶知安駐屯地に隣接する約100ヘクタール(東京ドーム21個分)の土地も、中国系企業に買収された。水源地と違い、自衛隊基地周辺の土地については規制する条例すら制定されていない。
https://biz-journal.jp/2017/09/post_20428_

2.html/amp

 単なるビジネスの目的で基地の間近に土地を爆買いするなどということがあるでしょうか。この買い占めは間違いなく「国家戦略」であり、侵略なのです。

 

■『金 対 愛国心』の世紀

 お金の力で国が侵略されるなどということは、今に始まったことではありません。少なくとも20世紀からずっと、そのようにして世界の歴史は動いてきました。アメリカの軍産複合体はその代表例と言えるのでしょう。ここでは詳しく立ち入りませんが、金持ちがお金で国民の正義を買い、戦争を起こす為の資本としたのです。

 しかし、既にこうした体制は変わりつつあります。世界中で金の力に抵抗し、愛国心を掲げる動きが始まっています。

パキスタンインダス川流域のディアメル・バハシャダム建設に対し、中国側が申し出ていた140億ドルの融資を拒否。インダス川パキスタンの穀倉地帯を流れる大河である。インダス川関連のインフラを支配された日には、パキスタンは中国の属国と化すことになる。

 ネパールは約25億ドル規模の水力発電事業について、事業取り消しを決定。

(中略)

 ミャンマーは北部のカチン州ミッソンにおいて、中国が主導する36億ドル規模のダム建設再開について、明確に拒否の意向を示す。ミッソンのダムは、ミャンマーの旧軍事政権が中国と合意したプロジェクトである。ダム完成の暁には、発電された電気の9割が中国に輸出されるという、露骨な「帝国主義」モデルであった。

 アジアの一部の愛国者は、金による侵略に抵抗すべく既に立ち上がっています。f:id:miyukiyasmaro:20191116175035j:image

 このように世界を「金」と「愛国心」の陣営に二分して見てみれば、トランプ大統領は以外にも愛国心の陣営に分類できるのではないかと考えます。彼は大統領選挙の際、誰からの献金も受け取らず、自腹での選挙活動を全うしました。企業や投資家をスポンサーとする過去の大統領とは違い、国民の為の指導者となったのではないでしょうか。現に彼は対中貿易戦争を指揮しているのです。アメリカの一部の金融資本は中国と深く繋がっているので、対中貿易戦争は「金」の勢力からすると都合が悪いはずです。

 さて、金対愛国心の対決はどちらが勝つのでしょうか。とりわけ習近平対アジアの愛国者及びトランプ大統領の対決の行方はどうなるのでしょうか。

 そしてあなたはどちらの陣営につくのでしょうか。「今だけ金だけ自分だけ」の民として「金」の勢力に立脚しますか。祖先の名誉の為、家族や友人の幸福の為、子孫の未来の為に、自分なりの抵抗を続ける「愛国心」の勢力に立脚しますか。全てはあなた次第です。最後までお読み頂きありがとうございました。

 

安倍政権入門!

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 政権改造からまだ一ヶ月でございますが、安倍政権のやらかしが相次いでおります。

 先ずは小泉進次郎環境大臣。意味不明瞭な発言が幾度批判され、一部の国民から失望されました。十月二十五日、菅原一秀経済産業大臣有権者のお通夜に参列し、香典を渡したやらで辞任。同二十八日、萩生田文部大臣は例の「身の丈発言」を陳謝。同三十日、河合大臣は運動員に法外な報酬を払った疑惑を受けて辞任。

 野党はここぞとばかり、辞任した二人について、安倍首相に任命責任を追及しております。彼らにとっては、政権の息の根を止める絶好の機会なのでしょう。しかし幾度の醜聞を経て尚鎮座しております安倍政権が、これで崩壊すると考えるのは難しいかもしれません。

当たりめえだろ!自民党は野党よりも断然マシなんだよ!」このように仰有る方がたくさんいらっしゃるので、安倍政権はいよいよ史上最長政権となりつつございます。

 本当に安倍政権は野党よりもマシなのでしょうか?というわけで、今回は安倍政権を振り返ってみましょう。

 

民主党が駄目過ぎた

 まずは民主党時代まで遡ってみましょう。簡単に言うとこの民主党による政治は、多くの人にとって悪政でした。f:id:miyukiyasmaro:20191109191423j:image

 第一の悪政は「コンクリートから人へ」。民主党政権以前の自民党は、公共事業(建設企業にお金を払い、インフラを作ってもらうこと)を推進していました。これを民主党は、「土木企業と癒着した無駄遣いだ!」と批判。民主党政権は公共事業関係費(コンクリート)を削減し、そこで浮いたお金を福祉(人)に投じました。

 一見素晴らしいことのように見えますが、これがド悪政でした。公共事業は経済を良くさせる上で重要な政策です。公共事業とは、国が建設企業に仕事を与える政策です。建設企業が仕事に恵まれれば、他の企業の取引や従業員のお給料が増えます。他の企業の取引が増えれば他の企業も潤うし、従業員のお給料が増えれば消費も増えます 。

 このように、公共事業はインフラを充実させるだけでなく、経済にお金が巡るようにさせる重要な政策なのです。これを削減してしまったので、我が国はどんどん貧しくなっていきました。

 また、災害に備えて防災インフラを作ることは、地震大国日本にとっては実に大切です。この度の台風豪雨災害でも、「八ツ場ダムが氾濫を防いだ」ということが注目されました。この八ツ場ダムは、かつて民主党が建設を中止したものだったのです。民主党は「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げましたが、コンクリートこそ人を守るものであります。

 このように重要な「コンクリートから」税金を「人へ」投じる民主党の政治ですが、肝心な「人へ」の方も大失態です。福祉制度は何一つ改善しませんでした。

 他にも民主党の悪政はありますが、これ以上書くと民主党を紹介する記事になってしまうので、ともかくこのように民主党政権は良くありませんでした。

 かくして2012年12月17日、自民党民主党から政権を奪還します。

 

アベノミクスとは何か
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 同26日、国会で安倍さんが総理大臣に選ばれます。

「日本を取り戻す」というのが安倍さんのキャッチフレーズでした。民主党政権によって失われたあらゆるものを取り戻すことを目標としたのです。

 早速安倍さんは「アベノミクス」という経済政策を宣言しました。①金融政策②財政政策③規制緩和、これらを行って経済の建て直しを計ろうという政策です。これらの三つは、「アベノミクスの三本の矢」と呼ばれます。
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 ①の金融政策の中身は、主にお金をたくさん刷ることでした。「経済が良い」というのは、概ね「お金が国中にガンガン巡る」ということです。というわけで、国中にガンガン巡らせる為のお金を作る必要があったのです。いわばこれは輸血です。この金融政策でたくさん刷られたお金は銀行に行きます。

 

②の財政政策は、公共事業の拡大です。民主党政権が削減した公共事業を再び拡大させるのです。公共事業を拡大させれば、企業の景気が良くなります。企業の景気が良くなれば、銀行は安心して企業にお金を貸すことができます。この時、銀行が企業に貸したお金は金融政策がたくさん刷られたお金でもあります。つまり、金融政策で輸血されたお金が体中に巡るよう、血行を良くする措置がこの財政政策であると言えます。

 

③の規制緩和は、読んだ字が如く規制を緩和する政策。ルールを緩くする政策です。ルールを緩くして、企業が自由に商売ができるようにしようということです。経済学の主流派は「取り合えず自由にしたら良くなる」というのが基本的な考えで、これを「新自由主義」と言います。安倍さんは新自由主義的な政策を進めようとしたのです。

 

 このアベノミクスは理論的に正しかったのでしょうか。わたしとしては、金融政策と財政政策は正しいものであると考えます。この二つを行わずに不景気を脱した例はありません。経済を復活させる上で不可欠な政策です。

 しかし、規制緩和はあまり適当な政策ではなかろうと考えます。不景気=デフレは、需要が供給を下回ることで起こります。需要が供給を下回るというのは要するに、人が物を買う量が物が作られる量よりも少ないということです。この状態にあると、経済はデフレになり、景気が悪くなります。なぜそうなるのかというメカニズムはここでは立ち入りませんが、ともかくそういうことです。

 ですから、不景気から脱する為には需要を増やす必要があるわけです。けれども、規制緩和という政策は需要ではなく供給を増やす為の政策であります。規制というものは大体、企業を保護するものです。規制を緩くすれば企業は保護されなくなります。そうなれば競争が激しくなります。競争が激しくなると、企業は効率良く物を作らねばならなくなります。その結果、供給が増えるわけです。しかし、供給が増えたところでそれはさらなる不景気を招くだけです。

 ですから、この規制緩和という政策は適当なものではないと考えます。

 さて、アベノミクス三本の矢は、二本が良い矢で、一本は悪い矢であるわけですが、我が国の経済は結局回復したのでしょうか。

 

■安倍さんのお陰で景気は良くなった?

 安倍政権とその支持者の大体の言い分では、安倍政権によって我が国の経済は改善されたとのことです。その根拠はおおよそ株価と雇用です。

 アベノミクスが始まって以降、我が国の日経平均株価は上昇しました。ですからアベノミクスのお陰で日本の経済が良くなったのだと言われております。しかし、この日経平均株価は実はわたしたちの暮らしとはあまり関係がないと言えます。日経平均株価とは、上場企業の平均株価です。上場企業はアメリカの経済の影響を極めて強く受けております。ですから日経平均株価は、アメリカの平均株価を軸にして動いているのであります。
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 もし経済政策によって日経平均株価が動くとしたら、それは一時的なものに過ぎません。ですから日本の経済が良いとか悪いという議論は、株価を見て行われるべきではないと言えましょう。

 次に雇用。安倍さんのおかげで失業者が減り、働く人が増えたので景気は良くなったのだと言われています。確かに失業率は下がり、就業者(働いている人)数は増えました。しかしこれも中身を詳しく見てみると、あまり喜ばしいものではありません。

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 安倍政権下で増えた雇用は女性と高齢者の雇用ばかりです。別に「女とジジイは引っ込んでろ」などと言いたいわけではございませんが、我が国の企業は人件費を抑えるべく、安い人材に固執したわけです。もし景気が良いのであれば、企業は未来に向けて積極的に投資するはずです。しかし、現実には人手不足に対応すべく、渋々安くて済む労働者を買い漁り、その場凌ぎをしているのが現状です。

 ではこの人手不足は何によって起こったのでしょうか。安倍政権及びその支持者によれば、それは安倍さんのお陰で需要が増えたからということになるのでしょうが、果たして本当にそうでしょうか。

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 これは業界別に見た就業者数の変化です。2013年から18年を経て、たくさん就業者数が増えたのは医療や福祉だけです。仮にこれが景気が良くなった為だと考えるとおかしい話です。景気がよくなった人が「最近財布が暖かいんだよねえ。今晩病院行かない?」と言うでしょうか。

 他の産業の場合であれば、際限のない需要の可能性があります。「もっと高い車を買おう」「もっと便利な家電を買おう」「もっとたくさん本を買おう」「もっと広い家を買おう」といった具合に。しかし、医療などといったものに際限のない欲など出ようはずはございません。せいぜい良好な健康状態が維持されれば、それ以上何かを望むことはないからです。

 医療や福祉の就業者が増えたのは、高齢者が増えた為と考えた方が自然でしょう。高齢化によってご老人が増えたことで、医療や福祉への需要が増えたのです。そしてそれは、現在の日本においては決して悪いことではありません。病院や介護施設が潤えば、彼らは新しい設備を買ったり、人を雇ったりするでしょう。このようにして、やがて日本全体が豊かになる可能性を有している現象こそ少子高齢化なのです。

 しかしながら、安倍さんはそのことをあまりお分かりになられていないようなのです。

 

■本当に民主党よりマシなのか

 では、わたしたちの経済は結局、安倍政権の政治によってどのようになったのでしょうか。
 それを知る為には、実質賃金を確認する必要があります。

 実質賃金とは、わたしたちの賃金を物価を考慮して数値化したものです。例えば、去年と今年の給料が変わらず、物価がその間で二倍になったら、実質賃金は去年を100として、今年は50です。つまり「どれだけ物を買うことができるかを表す数値」であると言えます。

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 民主党時代に入った直後、実質賃金は急上昇しました。しかし実質賃金は、下がり始める直前に一時的に上がり、上がり始める直前に一時的に下がる性質があります。この急上昇は下がり始める兆候らしく、間もなく実質賃金が下落して行くのでした。

 問題はここからです。経済の建て直しを目標にして、期待の安倍政権が始まったのですが、実質賃金はいくら経っても上がりません。当初の(というか今も)安倍支持者の経済評論家は「実質賃金が上がるにはタイムラグがあるんだ。きっとこれから上がるに違いない」としていたのですが、そのような気配はないまま現在に至ります。

 このように、安倍さんが目標としていた経済の建て直しはどうやら失敗したようです。では、その原因はどこにあるのでしょうか。

 主たる原因は、アベノミクス第二の矢「財政出動」が、実は放たれていなかったことでしょう。

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 安倍政権が始まった直後、安倍さんは先の震災で傷ついた東北を復興させるべく、公共事業関係費を上げました。しかし2015年以降、公共事業関係費は下げられ、その額は民主党時代と全く変わりません。というか、現在の公共事業関係費は、民主党時代のピークよりも下なのであります。

 意外にも、アベノミクス第二の矢は放たれていなかったのです。

 この状態でお金ばかりがたくさん刷られても、景気が良くなるはずがありません。銀行は安心して企業にお金を貸すことができないからです。

 これは腹立たしいことではありませんか。民主党政権の「コンクリートから人へ」で散々な思いをした人々が、安倍さんを期待したのです。それにも関わらず、安倍さんはそれに背くようなことをしているのです。

 

■破られた約束 ①移民

 安倍さんは野党時代に支持者から期待されたことを踏みにじっています。

 例えば移民政策。f:id:miyukiyasmaro:20191109191616j:image

 安倍政権は人手不足解消を名目に大規模な移民受け入れを進めました。これは野党時代の公約に背くもので、支持者への裏切りとしか形容のしようがありません。

 その結果、我が国は世界四位の移民大国と呼ばれるようになりました。現在でも多くのコメンテーターが「日本は鎖国しては駄目だ。アメリカを見習ってもっと移民を受け入れよう」といったことを言います。

 どうやら「人手不足を解消すれば経済が良くなる」というイメージを持たれる方が多いようですが、現段階ではそれは間違いです。むしろ、我が国にはさらなる人手不足が必要なのです。

 人手が不足するというのはすなわち、人材が貴重になるということです。貴重なものには必ず高い価格がつきます。つまり、わたしたちのお給料が上がるということです。そうしていくといずれ不景気からも脱却するでしょう。

 また「いくら頑張っても人材が手に入らない」という境地に達すると完全雇用が達成されます。

 さらに重要なのはその先で「人材が手に入らないならば、設備投資しよう」という動きが始まります。設備投資とは、新しい機械やシステムなどを導入したり、作ったりすることで、労働者一人当たりの生産性を高めることです。わたしたちは多くの価値を作り出すことができるようになります。それだけでも素敵なことですが、生産性の向上によってわたしたちの価値は更に高くなり、お給料が高くなります。

 実際、高度成長期の日本もそのようにして成長してきました。

少子高齢化で人手不足になって、国が衰退してしまう」といった懸念が蔓延しているのですが、これは間違いなのです。現に少子高齢化の真っ只中にいながらも、経済成長している国はたくさんあるのです。

 

 では、人手不足を外国人労働者によって解消すれば、どのようなことが起こるでしょうか。人件費を抑えたい企業は、海外から流れ込んできた安い人材に飛び付くでしょう。そうすると労働者としてのわたしたちの価値は下がり、お給料が減ったり、中にはクビになる人が出てくるでしょう。

 このように、移民受け入れは経済の悪化を招きますが、悪化するのは経済ばかりではありません。移民を受け入れるということは、文化や価値観の違う人が同じところに住むということです。「多様性が高くなるんだからいいじゃない」という考えの方が多いですが、それは間違いです。

 ロバート・パットナムという社会学者の研究によれば、様々な人種が入り乱れている地域では他の人種への偏見や不信感が高く、逆に特定の人種がある程度統一されている地域では、他の人種への理解や信用が高いことが明らかとなっています。f:id:miyukiyasmaro:20191109193551j:image

 考えてみれば当たり前のことです。もしこの国がいわゆる「多様性の高い国」になれば、文化の衝突が頻繁することでしょう。蕎麦を啜れば白人に嫌われるかもしれません。豚肉を食べればイスラム教徒に怒られるかもしれません。せっかくの休日の朝、ぐっすりと寝ていたら、何とか民族の隣人の騒がしい儀式で起こされるかもしれません。街中の壁には「アート」という名目でスプレーによるペイントが施されるかもしれません。

 これは誰かが悪いという話ではありません。世界の人々にはそれぞれの文化や価値観があるのです。それらは尊重されて然るべきなのです。ですがそれを一ヶ所にまとめてしまえば衝突は必ず起きます。誰も悪くないのに争いが起きます。

 そもそも国境をなくそうという考え自体ナンセンスなのです。それぞれの地域でそれぞれの文化がある世界は、色鮮やかな絵画のように美しいのです。そのような絵も、絵の具を溶かして混ざり合わせればドス黒い液体になるばかりです。

 

■破られた約束 ②TPPf:id:miyukiyasmaro:20191109191641j:image

 TPPは太平洋を取り囲む国々の自由貿易協定です。安倍さんは政権を奪取した三ヶ月後、このTPPの参加を表明しました。

 TPPには毒素条項と呼ばれるものが多く含まれており、その危険性が指摘されています。

 その代表的なものがISDS条項です。これは、その国の中で行われた投資が上手くいかなかった場合、その国の政府を訴訟できるという条項です。要するに、「お前の国の法律のせいでビジネスが失敗したんだ。きっちりと慰謝料を払ってもらうぜ」というヤクザじみた行為が合法化されるということです。

「もしそんなことが起きたらTPPから抜けたらいいだけじゃないか」という意見がありますが、それは楽観的過ぎる見方であると言えます。この国際社会において、我が国は一度交渉の席についた以上、後戻りすることは困難です。TPPの脱退を宣言するや否や「我が国は多大なる時間を費やして日本との交渉を行ったのに、それを踏み躙るつもりか。我々の信頼を裏切るような身勝手な行為が許されるとでも思っているのか」などという圧力がかかりかねません。

 TPP賛成派の多くの方は「農業は不利かもしれないが、自動車産業といった日本の強みである産業はアメリカに勝って大儲けできる」としています。しかし、アメリカの謀略の恐ろしさはわたしたちの想像を上回るものです。

 そもそも、2月22日の日米首脳会談後に発表された日米共同声明では、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシビティが存在する」という表現が盛り込まれました。同時にこの共同声明で聖域なき関税撤廃を「前提とはしない」点も確認されました。つまり、米国は自動車産業を守りたい、日本は農産品5品目は守りたいという考えが共同声明の文面に表示されたわけです。

 ここまでは確かに公平な交渉でした。日本とアメリカ、互いの苦手分野については手出ししないという方向だったのです。しかし問題はここからです。

 ところが、2ヵ月後の日米事前協議では次の3つの重要事項が決定されています。①米国の日本車輸入関税の撤廃をTPP交渉の他のいかなる製品に猶予された最長期間よりもさらに長くする一方、日本政府は日本に輸出される米国車の認証方法を簡素化して輸入台数を2倍以上にする。②日本政府はかんぽ生命の新規保険商品を認可しない。③日本の農産物輸入関税については何も決めない

 

「アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪」植草一秀 講談社

 何ということでしょうか!アメリカ側が不利な自動車の貿易については、徹底的にハンデを強いる一方、日本が不利な農業の貿易については何らの防御策を許さないというのです。

 因みにこの時点で、選挙の際に安倍さんがわたしたちに約束した公約が破られます。「聖域なき関税撤廃を前提とするTPPには参加しない」というものです。農業という聖域に土足で立ち入ることを、安倍さんは受け入れたわけです。

 このように悪魔的なTPPは、トランプ大統領の登場によって運良くご破算となりました。その時中学生だったわたしも、テレビの前で手を打って大喜びしました。しかし、アメリカを抜きにしたTPP、「TPP11」なるものを安倍さんは進めようとしています。今度はどのような毒が仕組まれているのやら……。

 

■安倍さんの憲法改正

「右翼」を名乗る方のほとんどは日本国憲法第九条が嫌いです。わたしもそうです。

 九条は一項と二項によって構成されており、一項には日本が戦争を放棄すること、二項には日本が軍隊を持たないことが明記されています。

 戦争や軍隊がなくなるのは理想的なことではありますが、現実にそれをやってしまえば我が国は侵略されかねません。現に自分で自分を守れない我が国は、多国の理不尽な要求を飲まざるを得ません。いわばジャイアンを前にしたのび太君状態です。そういうわけで、戦後からずっと憲法改正を悲願としていた日本人が多かったのです。

 安倍さんはこの悲願を果たすことを約束しました。七十年以上も不動であった憲法を改正するというのはやはり困難なようで、安倍さんも苦戦している様子です。しかし、安倍政権支持者の方々は憲法改正への敢然たる姿勢を評価し、今も安倍さんを信じているのです。

 ですが、一概に「憲法改正」といっても、何をどのように改正するのかによって良いか悪いかは当然変わります。憲法改正という言葉にキャッチフレーズのように歓喜するだけでなく、その中身を見ることが必要です。

 安倍さんが目指す憲法改正は九条だけではなく、他にも色々ございます。

 例えば「緊急事態条項」。これは、災害時などの緊急事態に限り、総理大臣の権力を一時的にパワーアップできるようにする条項です。

 自民党憲法改正草案によると、緊急事態条項によって総理大臣に付与される権限は四つ。

一、緊急事態の間は衆議院を解散しなくてもいい

二、緊急事態の間は、法律と同じ効力も持つ政令を制定できる

三、緊急事態の間は総理大臣や議員の任期を延長できる

四、緊急事態の間は国民は政府の命令に従わなくてはならない

 この緊急事態条項が悪用されたらと思うと背筋が凍るものです。震災時のどさくさに紛れ、好き勝手なことがやられかねないのです。

 勿論、「政府が速攻で対応しなくてはならない非常事態に備えて、緊急事態条項は必要だ」という指摘はあります。しかし、我が国には五つの災害対策法があり、災害時に円滑な対応を行う準備は既になされているのです。

 堤未果という方はフランスのジャーナリストにこの改正案を見せたところ大変驚かれたようです。

「それにしてもこの99条第1項、これをヨーロッパの人々が見たら烈火のごとく怒り出すでしょうね」

 そう言ってルネが指した、自民党憲法改正案の99条第1項はこうだ。

〈緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる〉

 

「これは、1933年にナチスが成立させた【全権委任法】第1条の、『ドイツ国の法律は、憲法に規定されている手続き以外にドイツ政府によっても制定されうる』と、ほとんど同じ内容ですよ」

 

「政府はもう嘘をつけない」堤未果 角川新書

「日本を独裁国家にしてくれなどと誰が頼んだ」と安倍さんに訊きたいものです。

 

■あとがき

 このように安倍さんを批判するようなものを書くと、「じゃあ他に与党にふさわしい党があるのか」といったことが言われるかもしれません。

 確かに国会の野党は、与党の揚げ足をとってばかりで、具体的な代案を出してくれません。国民民主党は比較的具体的な政策を持った政党ではございますが、旧民主党系勢力となると100%信用できるものではございません。消費税廃止を訴える「れいわ新撰組」は、経済政策は素晴らしいと思いますが、あまりにも安全保障について楽観的であるように思えます。日本第一党や国民保守党は、安全保障も経済も理解した政党であるように思えますが、何というか激烈なところがありまして、安心して支持できるとは言えません。

 しかしそれで良いのです。与党にふさわしい政党というのはわたしたちが作り出すものであって、彼らはその材料です。

 政党は、選挙によって国民に育てられるものです。例えば来年の衆議院選挙で自民党が敗北すれば、「令和元年の消費増税が原因か」という分析がなされるでしょう。そうすると政党たちは世論に忖度し、減税を訴える新しい政党が出てきたり、増税をやむなしとする政党が考えを改めるかもしれません。このように、我が国の政党は選挙による刺激によって教育されるものなのです。

 それにも関わらず、自民党支持者は自民党に何の刺激も加えず、甘やかしています。その結果「公約を破ろうが、景気を悪くしようが、どうせ政権は続くだろう」という怠慢が長きに渡って続いているのです。

 この国を豊かにしたいのであれば、少なくとも自民党以外に投票するべきであろうと考えます。

 最後までお読み頂きありがとうございました。

 

天皇陛下万歳!

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 この度、 天皇陛下即位式が執り行われまして、心よりお慶び申し上げます。

 わたしは徹頭徹尾、テレビ中継で式の様子を拝しておりました。朝から雨が降っており、それに加えて冠水した地域の報道も同時に行われておりまして、ちょっと心配でございました。後から聞いた話では、その頃、安倍総理が心を込めて書いた「万歳旗」が強風に煽られて倒れたとのことです。しかし、両陛下が高御座(たかみくら)に立たれる時には曇天は霧散し、快き晴れとなりました。驚くべきことに、その空には虹が輝いていたと聞きます。

 まるで何かの暗示だなと感心しまして、それから色々と考えまして、やはりきっと暗示に違いない、そういうことに違いない、そらめでたいぞと無邪気に興奮しました。それから安倍総理のお顔が突然テレビに映りまして、わたしは腹を抱えて笑ったのであります。と書いている今も、やはり笑いが込み上げてきます。ああ、おかしい。

 さて、このようにわたしは 天皇 とか 皇室 といったものを深く敬愛しておりますが、世の中にはそうでない方もいらっしゃります。「なんで俺が 天皇 なんかの為に税金を払わなければいけないんだ」とか「 天皇 は民主主義と矛盾するから廃止するべきだ」とか「 天皇 なんかカルト宗教だ」といった主張をよく耳にします。この記事を読んでおられる方にも、そうしたお考えの方はいらっしゃるかもしれません。

 これに対し、腹を立てる方はいらっしゃるかもしれませんが、「いや 天皇 というものはこういう尊さがあってね、こういう価値があって、だから大事なのだよ」と説得できる方というのは少ないのではないかと思います。わたしの母は 皇室 を尊敬しておりますが「なぜ天皇 は大事だと思う?」と訊いてみると、腕を組んで唸りました。では、この唸りこそ研究の出発点として、 天皇 について今一度考えてみましょう。

 

天皇 ってエンペラー?
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 外国の方はしばしば 天皇 のことをエンペラーと呼び、「ワーオ!ニッポンのエンペラーはとてもクールだね!」などと仰有ることがあります。しかし、我が国の 天皇 は王様や皇帝などの支配者とは明確に異なります。

 支配者は、権力と権威を手にする存在です。これは武力で国を支配しておりますから、政治を主導すること(権力)ができますし、その国の民をひれ伏させること(権威)もできます。

 しかし、 天皇 は政治的な力(権力)を持っておられませんが、多くの国民からの敬愛(権威)を得ています。

「知っとるわい!っていうか今時の民主主義国家は皆そうじゃい!日本特有の文化みたいに言うな!」

 そう思われるかもしれませんが、重要なのは 天皇 が権威だけをお持ちになるというのは遥か昔から続く伝統ということです。

 日本はずっと 天皇 が支配していて、敗戦時にアメリカのお陰で 天皇 がいわゆる「象徴」となり、我が国はようやく民主主義の道を歩みはじめた。というのが常識ですが、それは誤解です。

 皇室 にはほとんどの期間、権力はなかったのです。確かに古代や日本の存亡が危ぶまれるような一部の非常時、例えば明治維新から先の戦争の間には、 天皇武装され、大元帥という形をなされました。

 しかしこれは飽くまでも「形」であって、 天皇 が権力をお使いになるのは、極めて限定的な場合だけでした。具体的には、明治天皇 による日露戦争開戦の御聖断、そして 昭和天皇による日本の降伏の御聖断、この二つだけです。前者は御前会議(軍のトップや大臣が   天皇 の御前で行う会議)で議論がまとまらなくなった際、判断を求められた為の御聖断でした。後者は同じく御前会議で、全員が沈黙した為の御聖断でした。いずれも御前会議が会議として機能しなくなった時です。

 このように、 天皇 には権力を持たず、権威を持つという性格があったのです。

 

 ではなぜ 天皇 は権威として認められてきたのでしょうか。権力がないのに、どうして権威を保ち続けれたのでしょうか。 皇室 の歴史は神話の部分を省いても千年以上あり、世界の王朝をぶっちぎる長さになるといいます。そんな気の遠くなるような悠久の間、滅ぼされたりせず、権威として認められ続けたというのは不思議な話ではありませんか?

 実はこれは、「権力がなかったのに権威を保ち続けた」というより、「権力がなかったからこそ、権威を保ち続けた」という方が正確です。民が飢餓に陥ったり、天災が起きたりした時、その怒りの矛先は権力に向かいます。ですから世界中の王朝が直ぐに滅びたのは当然なのです。

 千年以上の間、権威だけを持ち続けた 天皇 とは、一体何なのでしょうか。

 

天皇 って何?
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 一言で言うと、 天皇 とは祭祀(さいし)です。 天皇 の御仕事は祈ることです。わたしたち国民の幸せを神に祈る祭祀こそ 天皇 なのです。

 あなたは神に祈ることがあるでしょうか。  天皇 は全ての日本人の祈りを神に届ける仕事です。だからこそ、日本人は 天皇 を心の拠り所としたのです。

 光格天皇の在位中、「天明の大飢饉」が世を襲い、全国的な一揆・打ちこわしが相次ぎ、なんと将軍のお膝元である江戸でも大打ちこわしが起こった。

 ところが天皇がおられる京都御所周辺には、全く違う光景があった。

 御所を囲む築地塀の周り、およそ千三百メートルを、廻って参拝する民衆が日に日に増え、わずか3日後にはなんと3万人もの老若男女に膨れ上がり、10日後にはとうとう一日に7万人もの人数に達したという。

 京都だけでなく、大阪からも集結してくる人々は正面の門に至ると賽銭を投げ、紫宸殿に向かって手を合わせ、一心に礼拝した。

 

ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論」                    小林よしのり 小学館

 

 天皇陛下は今もあなたやわたしの為に祈っています。

 

天皇 って神様?

 常識的な歴史観に則れば、日本人は 天皇 が神であると洗脳されていたことになります。日本は北朝鮮と同じように 天皇 を神格化するカルト国家だったらしく、アメリカのお陰で民主主義国家として歩み出したそうです(笑)。

 しかしこれは八割くらいしか正解でないと言えます。

 確かに先の戦時中の六年間は、小学校では過激な教育が行われました。この教育を経験した人たちのことを「少国民世代」と呼びます。しかし、それ以外の人たちは 天皇 を神だとは思っていませんでした。

 敗戦後「 天皇人間宣言」というものがありまして、「実は 天皇 は神様ではなく人間でした」 という発表が行われました。少国民世代はびっくりしたかもしれませんが、それ以外の青年、大人たちは「だから?」となったそうです。

 といっても、少し歴史に詳しい方は「 天皇は昔から現人神(あらひとがみ)って言われていたじゃないか!」と憤慨なさるでしょう。しかし、現人神というのは、「人ながらにして神様」という意味ではなく、「神様のように大事にすべき人」という意味でした。日本には古来から凄い人を神と形容する癖があり、若者が「あの店員マジ神対応だわー」などと言うのもある意味伝統的な現象です。勿論、その若者が店員を神格化しているわけではないことは、言うまでもありません。

 

神武天皇 っていたの?
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 我が国で一番はじめの 天皇 は「 神武天皇 」です。

 と、このように書くと、歴史学者から鼻に笑われるのが最近の風潮のようです。何でも、日本書紀によれば 神武天皇 の没年齢は127歳で、科学的に有り得ないとか。

 わたしとしては、 神武天皇 がおられてもおられなくても 皇室 の本質が変わることはないと考えますが、興味深いので検証してみましょう。

 まず、当時の日本では春秋暦というものがあったことに注目して下さい。春秋暦は、作物を育てはじめる春と、作物を収穫する秋を一年の始まりとする暦です。従って、現代における一年は、春秋暦にすると二年ということになります。

 では、 神武天皇 の年齢が春秋暦で数えられていたとすればどうでしょう。神武天皇 の没年齢127歳は、現代でいう63歳ですから、別に不思議ではありません。

 勿論、 神武天皇 の年齢が春秋暦で数えられたと断定することはできませんが、同時に没年齢について指摘して「 神武天皇 なんか科学的に有り得ない」と断定するのもできないはずです。

 

 また、 神武天皇 はいたとする科学的な指摘もあります。

 かなり長い引用となりますが、面白いので是非お読み下さい。

 そもそも、古事記日本書紀に書かれた神武天皇の「東征」は、地形学により「史実」であることが確定している。古事記には、神武天皇と大阪のナガスネヒコとの闘いについて、以下の通り描写されている。

「こうしてさらに、吉備の国から東へ東へと上っていったが、やがて一行の船は、波荒く立ち騒ぐ波速の渡りを過ぎて、波静か白肩の港に停泊した。この時、登美の地に住む那賀須泥毗古(ナガスネヒコ)、すなわち長い脛を持った男が、軍隊を起こして、東上してきた船を待ち迎えて一戦を挑んだ。そこで一行は、船の中に用意してあった楯を取り、岸辺に下りて防戦した。」

 ポイントは、「波速の渡りを過ぎて、波静かな白肩の港に停泊した」の部分だ。白肩とは、生駒山の麓のことである。生駒山は、現在の奈良県生駒山大阪府東大阪市との県境にある。つまりは、現在の大阪湾の海岸からは20kmも内陸に位置しているのだ。

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(中略)

 地形学が発達した結果、現在の大阪市のほとんどがかつては「内海」で、海岸線が生駒山の麓であったことが判明したのだ。現在のJR大阪駅の東(大阪駅の位置は外海だった)と、南から大阪城の位置まで突き出した半島との間に海峡があり、海が生駒山地の手前まで続いていた。

 つまりは、神武天皇の大阪行の表現は、地形的には「完全に正しい」のである。

(中略)

 海上ルートで生駒山の麓に向かうことが可能だったのは、いつ頃までだろうか。こちらも地形学の発達により、明確になっている。紀元前50年までである。

 つまりは、神武天皇ナガスネヒコとの戦いは、紀元前50年よりも「前」に行われたことが確実なのだ。

 

「帝国対民主国家の最終戦争が始まる」        三橋貴明 ビジネス社

 

 つまり、古事記に書いてあった地形の情報と、地形学による地形の情報が見事に一致していたということです。

 まあ、ひょっとすれば「昔、白肩は大阪の海岸だった」という言い伝えがあって、それになぞらえて古事記が書かれたという可能性もあるかもしれません。しかし、それにしても神武天皇の実在は極めて濃厚となったのではないでしょうか。

 

■あとがき

 どうでしょうか。 天皇 について皆様がご存知ないことをお伝えできたでしょうか。もしこれから 皇室 のニュースを見る時、これまでとはちょっと違った感じ方ができるようになって頂ければ、この上ない幸いです。

 これからずっと先、 皇室 が日本にあり続けることを心より祈ります。

 

 君が代

 千代八千代に

 さざれ石の

 巌となりて苔のむすまで

 

 

天皇陛下万歳

新しいエネルギー

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 今、わたしの部屋の窓からは、綺麗な夜景が見えます。星を散りばめたような幾つもの光が輝いているのです。

 しかしこの輝きは環境破壊や危険性によって担保されています。環境破壊がいつ取り返しのつかないことに発展するのか、危険性がいつ爆発して恐ろしい事態が起こるのか、それは近い未来かもしれないし、ひょっとしたら明日かもしれません。

 例えば明日、大規模災害が起きて、原発事故が発生するかもしれない。その放射能によって犯されるのはあなたの家族かもしれません。

 ではこの心配を解決する為に、原発を廃止するとどうなるでしょうか。原発がなくなれば原発事故の心配はなくなります。

 しかし、それと引き換えに電力が足りなくなるかもしれません。北海道では電力不足でブラックアウトが起きたこともあります。そうすると代わりのエネルギーが必要です。

 では火力発電を代わりのエネルギーにしてみるとどうでしょうか。実は、我が国の火力発電所の半分は使われていません。言い換えれば、火力発電は二分の一しか本気を出していないということです。火力発電が本気を出せば、原発を廃止することができるでしょう。

 しかし、その代わりにわたしたちは別の危険性に晒されることになります。そもそも、火力発電とは化石燃料を燃やした熱で水を蒸発させ、タービンを回す発電。化石燃料を必要とする発電です。化石燃料は限られた資源ですから、遠い先枯渇するかもしれません。

 また、我が国の石油は中東からの輸入に依存しています。中東の情勢の変化で、石油が高騰するかもしれません。この時、石油に依存していればいるほど、その影響で物価が上がることになります。

 そもそも、石油や天然ガスなどの化石燃料をほとんど輸入できなくなる恐れさえあります。我が国に入る化石燃料のほとんどはホルムズ海峡というところを通るのですが、ここが封鎖されるとあじゃぱあです。f:id:miyukiyasmaro:20191019221143j:image

 実際、ホルムズ海峡付近は治安が悪く、そうしたことが起きないとは言えません。ホルムズ海峡封鎖のリスクは、化石燃料に依存すればするほど高くなるのです。

 では、再生可能エネルギーを使えばどうでしょうか。教科書には、太陽光、風力、地熱などの発電は、環境に優しい再生可能エネルギーだと書いてあります。

 しかし、もし(俗に言う)再生可能エネルギーだけで電力をまかなったとしても、やはり問題は発生します。風力発電はわたしたちの健康を脅かしますし、太陽光発電も石油を使うからです。詳しくは前稿「環境問題"破"門」をご覧下さい。

 では、わたしたちはやはり原発事故や、ホルムズ海峡封鎖の危機にビクビクしながら生活してゆくしかないのでしょうか。できれば環境に優しく、そして何らかのリスクもないエネルギー源が欲しいものです。それが難しいものだと分かっていても、諦められないのが素直な感情です。

 そこで今回は、新しいエネルギー源について考えてみようと思います。

 

■海底のロマン

「日本みたいなちっぽけな国は外国にエネルギーを輸入するしかない」と考えている方は多いと思います。確かに地球儀を見れば、ユーラシア大陸の端っこで細く、小さく佇んでいる島が日本です。

 しかし、それは領の話に過ぎません。我が国の領域は、神より賜った広大なを含みます。

 何と我が国の排他的経済水域は、世界六位です!(排他的経済水域とは、調査や開発を独り占めにできる海のことです)この国はちっぽけな国なんかではありません!我が日本国は大国なのです!

 ではこの偉大なる海の、遥か奥の海底に思いを馳せてみましょう。海底には様々な資源が眠っていると言われています。具体的には次のような資源です。f:id:miyukiyasmaro:20191018105346j:image

 レアアースといった金属資源もなかなか魅力的ですが、ここで注目して頂きたいのはメタンハイドレート(メタンガスが氷状に固まった物質)と石油・天然ガスです。これらの物資がたくさん手に入れば、我が国は外国からの輸入に頼らずにエネルギー問題を解決することができます。ホルムズ海峡が閉鎖されても大丈夫なのです。

 ただし、海底でどれだけの資源が取れるかはまだ調査中です。謎が多い分ロマンがあります。

 このように書くと「結局調査中なのかよォどうせすっからかんなんだろォ?」と嘲笑する人がいるかもしれませんが、海底資源の可能性は極めて高いと言えます。

 それを知る為には、メタンハイドレートや石油・天然ガスがどのようにして生まれるかを知る必要があります。

 人類が活動する遥か昔、海底では様々な生き物が活動していました。これらの生命はやはり死に、遺骸となって海をさ迷います。やがてこの遺骸の一部は、海の底に落ち着き、長い眠りにつくこととなります。海底では凄まじい圧力がかかっていますから、遺骸は圧縮され、徐々に変質していきます。

 もしこの遺骸が、マグマによる地熱で温められていた場合、これらは長い年月を経て石油や天然ガスとなります。もし冷たい場所に眠っていた場合、これらは長い年月を経てメタンハイドレートとなります。

 このようにして、海底資源はできるのです。

 つまり、海底でメタンハイドレートや石油・天然ガスができる為には二つの条件を必要とするわけです。一つは生物の遺骸、もう一つはそれらを圧縮する水圧です。そして、我が国の海はこれらの条件に恵まれているのです。

 ユーラシア大陸から続く広い大陸棚で生まれた生物の遺骸がこの海域には大量に沈下していったはずで、水深200メートルぐらいでは水圧が足りないが、日本列島付近では水深500メートル、1000メートルといった深海域になるところが多いため、容易にメタンハイドレートの安定領域に達する。つまり大陸棚の縁に位置する日本は、メタンハイドレートの生成においても地理的に非常に有利な条件にあるのだ。

https://imidas.jp/jijikaitai/k-40-081-13-04-g491

 もちろん、わたしはあまり科学には詳しくありませんから「絶対に海底資源はある!」などとは言えません。しかしこのように可能性は多分にあるのですから、政府はもっと海底への調査にお金を出しても良いのではと思うのです。

 

■風車の島

 続いて紹介しますのは、一言で言うと洋上風力です。先ほど申し上げたように、我が国は広大な海を持っておりますから、これを積極的に活用すればたくさんの風車が置けることでしょう。

 また、海の風は力強いものであります。わたしは兵庫県民で、神戸港からブラックコーヒーを片手に黄昏たことがありますが、この時の潮風はとても強いもので驚きました。そこで洋上風力がなぜ支持されているかというのを痛感したわけです。なぜ痛感という表現をしたかと言いますと、わたしは皮膚が弱いものでして、潮が傷口に染みて痛かったわけです。

 このように言いますと、前稿にてわたしは風力発電を完膚なきまでに批判しておりましたので、二重舌のように聞こえるかもしれません。しかし本節にてご紹介しますものは、ちょっと特殊なものです。

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 これは、九州大学が研究しております洋上発電ファームです。この発電システムは、従来の風力発電の欠陥を見事に克服したものです。

 従来の風力発電の第一の欠陥は、大規模な山の開発を必要とすることです。木が伐採されたり、景観が低下することで環境破壊がもたらされるのです。

 しかし洋上風力の場合、山の開発は当然必要ありません。その代わりに海の開発を要するわけで、一時的にこれが汚染されるかもしれませんが、飽くまで工事が行われる間の話です。山の開発とは違い、自然の力で取り返しがつくわけです。

 従来の風力発電の第二の欠陥は、低周波公害です。風車が発する低周波の音が、近隣住民に健康被害をもたらしたことが分かっています。第三の欠陥はバードストライクです。野鳥が回転する風車に衝突し、体を引き裂かれるという痛ましい事件が起こっています。

 この第二、第三の欠陥を克服したのが、風レンズという発明です。上に貼りました画像の風車を見て下さい。輪っかのようなものがついていますでしょう。これが風レンズです。輪っかをつけただけで何の変化があるのか、疑問に思われるかもしれませんが、実はこれによって低周波公害は防止され、バードストライクも起こらなくなるのです。

 なぜそのような変化があるのかというと、画像引用元の「脱原発論」にて、著者は研究所の方に取材をしていますから、そこを引用します。

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この風車は羽根の先から出る渦と、逆向きの渦が輪っかの表面からペアで出るんです。

それが打ち消し合って消えるんですね。

それですごく静かです。

(中略)

普段は鳥がいっぱい来ます。

バードストライクといって、鳥はエサを追ってると風車に注意を払えなくて、高速で回っている羽根に当たることがあります。

でもこれは輪っかがついているから簡単に認識できて、鳥はこの中をわざわざ通っていこうとはしないんです。

回っている時に輪っかの上に止まっていたりします。

 

ゴーマニズム宣言SPECIAL 脱原発論」

小林よしのり 小学館

 また、風レンズは風力の短所を克服するばかりではなく、発電の効率をも高めます。

 そもそも「風レンズ」のレンズは、眼鏡などのレンズです。虫眼鏡で黒い点に光を当てると、煙が出て火がつくのはご存知ですね。あれは広範囲の日光を狭いところに集中させているのです。それと同じように、風レンズは広範囲の風を誘い、集中させることで強力な風力を呼び起こすのです。本書によれば、その発電量は三倍になるとのことです。

 

 ところで、本来の発電というものは環境を犠牲にして電力を取り出す作業です。しかし洋上風力は、環境に貢献しつつ電力を賜ることができます。

 というのは、風車が海に浸かる部分に、藻が生えるということがあるのです。これがプランクトンを繁殖させ、魚を繁殖させ、新しい自然を生み出すという効果が発見されています。

 五島列島で洋上風力が行われた際、そのようなことがありました。

沖合で洋上風力発電設備を運転するためには、地元の漁業協同組合の合意を得る必要がある。五島列島の漁業関係者のあいだには反対意見が多かった。大型の風車が発する騒音や低周波音によって、魚がいなくなる懸念をぬぐえなかった。

 とはいえ人口の減少と高齢化に悩む島の経済を活性化させるためには、新しい産業を生み出さなくてはならない。自然エネルギーを生かした地域産業の振興を目指す五島市役所が仲介役になって、漁業にメリットのある施策を提案した。発電所の建設に漁業関係者が貢献して収入を得られる案である。

 こうして漁業協同組合の合意を得て運転を開始した洋上風力発電設備には、魚を集める効果があった。海中の浮体に海藻が茂り、小魚が集まってくるようになった(写真2)。さらに小魚を求めて大きな魚も寄ってくる。海底の岩に魚が集まる「魚礁」と同じ効果だ。f:id:miyukiyasmaro:20191018225529j:image
写真2 浮体に付着した海藻に集まる魚。
出典:五島市役所
https://www.renewable-ei.org/activities/column/20180111.html

 このように、洋上風力にはたくさんの可能性があります。もっとも、懸念されるデメリットが全くないとは言えず、どのような影響が出るかは分かりませんが、そこのところも国が積極的に研究を進めて明らかにすべきと声を大にして言いたいものです。

 

■縄文の草

 先ほどから海の話ばかりですから、そろそろ日本列島に上陸してみましょう。そして何千年もの彼方の昔に思いを馳せてみるのです。日本人が稲作をはじめるよりもさらに昔です。

 縄文時代の日本、わたしたちの祖父は「麻の実(おのみ)」という種を重宝していました。麻の実は食料としても重要な作物でしたが、注目すべきはそこから育つ葉です。この葉は丈夫で水に強い縄や、汗や汚れを吸収する衣に加工することができました。f:id:miyukiyasmaro:20191019213740j:image

 また、葉から繊維を取り除くと「おがら」が作れます。おがらは茅葺屋根の下敷きに使われました。葉の繊維くずは石灰などと練り合わせ、土壁や漆喰に使われました。

 縄文日本人はこの便利で不思議な草を五穀の一つに数え、神秘的な力を直感しました。f:id:miyukiyasmaro:20191019213755j:image

 こうしてこの神秘の草は、神事の際に捧げられるようになったのです。結界を張る「注連縄」や神社の鈴の緒、お祓いに使う御札は、この草によってできています。

 

 では敢えて声を大にして叫びましょう。その草の名は「大麻」!わたしたちが忌み嫌い、危険視する「大麻」です!

「やべえよ……こいついきなり大麻の話してるよ……」と恐れられるのは仕方ないと思いますが、しかしそんなことを言っている場合ではありません。わたしたちが「大麻」という言葉を避け、無視していた間、海外の多くの国は大麻を活用して目覚ましい発展を遂げているのです。

 外国では大麻は「ヘンプ」と呼ばれ、研究や開発が進められてきました。

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 フランスでは1980年代に「カノスモーズ」というヘンプ建材が考案されます。ドイツでは1990年代に、ヘンプ建材を活用する動きがはじまります。ヘンプ建材は加工が簡単なのですが、強度が極めて強く、火にも強く、しかも通気性が高いため、冬も夏も快適な家を作ることができます。

 このような大麻の可能性はエネルギーにも及びます。

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 それが「バイオマスエネルギー」です。バイオマスエネルギーとは、主に植物を燃料とするエネルギーです。石油などの資源は枯渇する恐れがありますが、植物は育てて増やすことができます。したがって、バイオマスエネルギーは再生可能エネルギーと呼ばれているのです。

 バイオマスエネルギーの利点は、石油燃料のように硫黄などの物質が含まれていないため、大気汚染や酸性雨などを引き起こしにくいことにある。そして、バイオマスエネルギーの原料となる植物は、光合成により二酸化炭素を吸収して成長するため、燃焼時に排出される二酸化炭素の量と相殺することが可能である。

(※三幸としては二酸化炭素の相殺は特に必要ないと考えます)

 しかし一方で、作物の種類によっては表土を疲弊し続けてしまうという問題も発生する。

 この従来のバイオマスエネルギーの欠陥を克服するのが、大麻由来のバイオマスエネルギーなのです。

大麻バイオマスエネルギーの原料として大変有効であることがすでにわかっており、EU各国では実用段階に入っている。それでは、なぜ大麻バイオマスエネルギーとして最適な植物なのだろうか。

 大麻は1年草の植物であり、その成長速度が速いことから二酸化炭素の吸収量も多い。そして大麻は、表土を傷めずに輸作を行うことが可能である。それどころか、化学肥料に含まれる硝酸性窒素なども吸い上げ、土壌を改良する力がある。そして、何よりも大麻は農薬を使用せずに育っていく。つまり、大麻によるバイオマスエネルギーは、それを燃焼した場合の二酸化炭素の排出量は成長過程で吸収する二酸化炭素の量よりも少なく、同時に、表土を改善することも可能なのである。

 

大麻 禁じられた歴史と医療への未来」

長吉秀夫 知恵の実文庫

 どうでしょうか。わたしたちが危険視してきた大麻ですが、このようにエコな可能性があるわけです。この可能性を追及する為には、大麻を縛り付けるガチガチな法を緩和する必要があるでしょう。

「そんなことをしたら大麻を吸う人が出てくるのでは?」というのが冷静な意見ではありますが、そもそも大麻の摂取は一概にヤバいこととは言えないようです。というのは、解説すると長くなってしまいますから、残念ながらここでは立ち入りません。ともかく大麻には可能性があります。

 

■あとがき

 いかがでしたか。「日本は小国だから、エネルギーを外国に輸入するしかない」というのが悲しい常識でしたが、本稿で幾ばくかの希望が見えたのではないでしょうか。

 未来はいつも予測困難なものです。したがって豊かな海底資源があるとは断言できませんし、九州大学の洋上風力ファームが上手く行くとも断言できませんし、大麻バイオマスが問題なく成功するとも断言できません。

 しかしだからこそ、無邪気な夢があります。夢の探求こそ、人類の歴史であったと考えます。我が日本は暗い現状に立たされていますが、だからこそ夢を抱きたいものです。もしその夢があっけなく破れたら、新しい夢を。その繰り返しこそ閉塞感を脱するものであると信じます。

 ありがとうございました。

 

■附録「素晴らしき哉 表現」 
    第四回 世界タービン

 

 このコーナーは政治経済の話とはあまり関係がないので、興味のない方は読み飛ばして下さい。

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 さて、皆様は「平沢進」をご存知ですか。

 平沢進さんは1980年代のテクノポップブームの最前線に立っていた方です。ボーカロイドといったものの原型を築いたのも平沢さんです。

 また、平沢さんはエネルギー問題に関心が高く、太陽光発電だけの電力でライブをしたこともあります。

 平沢さんの極めて独特な音楽は、「星野源」や「米津玄師」などのアーティストに影響を与えました。現在も一部の(わたしを含む)若者を夢中にしています。

 なぜそのように人気なのかと言えば、それは彼の音楽を聞けば直ちに分かったり分からなかったりします。

 さて、今回紹介しますのは、そんな平沢進さんの「世界タービン」という曲です。平沢進さんの歌はどれも難解で、世界タービンも歌詞の解釈が分かれる作品です。が、PVや歌詞を考察するに、この曲の背景にニコラテスラの世界システムがあることは疑えない事実とされています。

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 世界システムとは、偉大なる発明家、ニコラテスラが作ろうとした発電システムです。これは地球が帯びている電気を使うという驚くべき構想です。詳しいメカニズムは知りませんが、この発電システムが実現すれば、地球上のどこからでも無限にエネルギーを作り出せるそうで、日本のエネルギー問題も解決します。

 では、この世界タービンという曲はどういう主張の込められた曲なのでしょうか。この曲の最終的な主張はこの歌詞にあるということが断言できます。

大丈夫よ タービンが回る

大丈夫よ タービンが回る

 ここで言う「タービン」とは、地球の自転のことです。地球の自転がタービンであるということは、そこには必ず何らかのエネルギーが発電されます。

 ではこのエネルギーはわたしたちに何をもたらすのか?それは人それぞれ違うはずです。それこそがこの歌の意味と言えるでしょう。

 まあ、とにかく聞いて下されば、この歌がどういう歌なのかが分かるかもしれません。人によっては意味不明瞭で、病的な印象さえします。人によっては、これがきっかけで平沢進の音楽にドハマリすることになります。

 いずれにしても、タービンは今日も回っていますから、大丈夫でしょう。明日もタービンが回っていることを願って、筆を置きます。

 

環境問題“破”門

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 毎度のことながら古い話題を取り上げさせて頂きます。皆様は上の画像の少女のことを覚えておられますか?スウェーデンの高校生にして社会活動家というグレタさんです。国連で環境問題を演説し、世界で注目され、我が国でも話題となりました。16歳の少女が号泣しながら、世界の首脳を厳しく批判し、世界の危機を訴える様子は興味深いものです。多分同級生であろうわたしも「よくもまあ、こんな大胆な演説ができたものだなあ」と深く感心致しました。

「こんなか弱き少女が地球の問題を考えているのに、俺たち大人は恥ずかしいなあ。環境問題を解決する為に、ちゃんと努力しなくっちゃなあ」と、世界中の人が思ったのではないでしょうか。しかし、例え高校生であっても、その主張の真偽はきちんと検証されなくてはなりません。っていうか、高校生の主張こそ疑わしいものはありません。高校生なぞの言うことは大体が出鱈目でございます。子供だからといって容赦してはならないのです。

 グレタさんは、二酸化炭素の増加が地球温暖化の原因になっているという常識的な立場をとっています。しかし、過去にわたしが述べた通り、これは間違いです。

  そればかりではなく、社会において常識とされてきた環境問題の知識のほとんどは間違いであると断言します。例えば、太陽光発電風力発電などといった再生可能エネルギーとされているものも、実は環境に悪いものです(なぜ悪いのかは後で詳しく述べます)。

 このような、間違った知識に基づいてわたしたちが努力すると、歴史は間違った方向へ動いてしまいます。今こそ世界の軌道を変えるべく、環境問題入門ならぬ、環境問題『破』門が必要なのです。

 

■地球はそんなにヤバくない!

「地球はヤバいのか」という上の見出しを見て、「うっそだろお前ww異常気象の問題がニュースで散々取り上げられていただろ!お前は無知か!」と思わず叫ばれた方がいらっしゃるかもしれません。 しかしわたしは、そういう方にこそこう訊ねたいものです。異常気象とは、本当に異常な現象なのかと。

 例えば「病気」という現象は、「健康」という基準から観測するに異常な現象です。「異常体調」とでも言えるでしょうか。けれども、わたしたちは風邪を引いた人に「うわっ、お前異常だな!」とは言いません。風邪を引くことはそれほど珍しいことではないからです。最低でも数年に一度は誰しも風邪を引きます。そうではないという方は極めて素晴らしい身体をお持ちで、それこそ異常であると言えます。

 わたしはそれと同じように、異常気象とは風邪のようなものだと考えるのです。実際、遥か太古に我が地球は風邪を引いたことがあります。

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 これは、縄文時代の仙台の海岸における海面の高さです。海岸や海底の堆積物を放射性炭素測定(何かよく分からないけどとにかく凄い測定)して調査しました。

 グラフの左側に注目して下さい。海面が急激に上昇しているところがあります。ここでは海面が45メートルも上昇しています。現在騒がれている異常気象とは比較にならない大病と言えるでしょう。

 そもそも異常気象の原因は、二酸化炭素の排出による地球温暖化であると言われているわけですが、この地球温暖化という現象も所詮は風邪であると考えます。

 縄文時代では、数十年に八度も気温が上昇した時がありました(ソースhttps://youtu.be/bRvwgvxgRH0)。現在心配されている温暖化問題が可愛く思えます。

 このように、人間が高度な文明を築く以前から、この星はしばしば体調を崩す体質だったのです。ですから、地球が風邪を引いたからといって心配する必要はないと考えます。

 

二酸化炭素は無罪!
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 グレタさんの演説は、二酸化炭素などの温室効果が増加した為に地球が温暖化したという圧倒的な常識に則っています。

 しかし、この二酸化炭素犯人説は間違いです。その証明は拙稿の「こんな教科書は嫌だ【環境問題】」できっちり行いました。

 が、今からその要約を致しますので、その投稿を見る必要はありません。

 

 先ず第一に拙稿で申し上げたことは、大気中の二酸化炭素濃度が少ないということです。二酸化炭素は大気中に0.02%しかございません。それにも関わらず、二酸化炭素犯人説の根拠となる実験は、ペットボトルに二酸化炭素を充填させてその温度を計っているのです。「ペットボトルに二酸化炭素をパンパンに詰めたら、普通より温度の冷めるのが遅かった。二酸化炭素には温室効果がある。だから二酸化炭素地球温暖化の原因だ」というわけです。この実験は現実とはかけ離れたものです。

 二酸化炭素犯人説を唱える人はよくこんなグラフを使います。

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二酸化炭素濃度は高くなった。平均気温も高くなった。だから二酸化炭素と気温には関係がある。二酸化炭素地球温暖化の犯人である」というわけです。しかし、もっと細かいグラフを見てみましょう。f:id:miyukiyasmaro:20191008212730j:image

 確かに二酸化炭素と気温には関係があります。しかしその関係というのは「二酸化炭素が増加すると気温が上昇する」という関係ではなく「気温が上昇すると二酸化炭素が増加する」という関係なのです。意外ですよね。っていうか不思議ですよね。なんで気温が上昇すると二酸化炭素が増えるのでしょうか。

 答えは海です。気温が上昇するとともに海が蒸発して、そこに眠っていた二酸化炭素が放出されるのです。 わたしたちの地球において、最も二酸化炭素が眠っているのは海なのです。

 その証拠に、海が熱くなると二酸化炭素の濃度は濃くなっています。f:id:miyukiyasmaro:20191009214523j:image

「あれ?気温が上昇しただけじゃ海面って熱くならないんだよね?」

 という指摘があるかもしれません。実はここに地球温暖化問題の本質があるのです。

「気温が上昇すると二酸化炭素が増加する」といっても「気温の上昇が原因で二酸化炭素が増加する」というわけではありません。気温が上昇するのにはある原因がありまして、その「ある原因」によって二酸化炭素が増加するのです。「ある原因」に反応する早さが、気温の方が早く、二酸化炭素の方が遅い為にこのような具合になるのです。

 では、その「ある原因」とは何でしょうか。

 太陽です。
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 これは太陽の黒点の活動と平均気温の推移です。太陽の黒点というのは、太陽にある磁力を放つ点のことです。この黒点が磁力を放つことにより、太陽の熱は突き飛ばされ、他のところにある熱と重複します。

 

 その為、黒点の活動が活発化すると太陽の熱は強くなり、地球は温暖化するのです。

 また「水は上から温めるだけではそうそう熱くならない」と記しましたが、光を照射するとどうでしょうか。太陽の強烈な光であれば、黒っぽい海面は熱くなり得るでしょう。

 

 このように、わたしは拙稿「こんな教科書は嫌だ【環境問題】」にて、太陽原因説を主張したわけです。

 地球温暖化が太陽の活動によるものであれば、わたしたちは何も心配することはありません。太陽は穏やかで偉大なリズムによって、活動を活発化させたり緩和したりしているのです。太陽こそ、わたしたちの地球の心臓です。心臓がポンプの役割を果たすべく膨張する瞬間を見て「このままでは心臓が破裂する」と危惧する必要はないのです。

 それにも関わらず二酸化炭素氏に無実の罪を着せ続けると、人類には罰が与えられます。その罰を真っ先に受けるのは発展途上国の諸国民です。彼らには二酸化炭素の排出量を抑える技術がありません。彼らの成長は無為に停止せられることになります。二酸化炭素の排出量を抑えられる強い国は「環境保全に貢献した優秀な国」として有利になる一方、発展途上国は不利になるばかりです。

 わたしたち日本国民にもこれは対岸の火事ではありません。「二酸化炭素の排出がない環境に優しいエネルギー源」として原発が支持されるようになるのです。大規模な災害が起こればたちまち放射線をばらまき、多くの人を殺傷するばかりではなく、遥か未来に至るまで国土を呪う自爆装置が建設されるのは、あなたの近くかもしれません。

 もし我が国を滅亡させようとする脅威が現れれば、原発は真っ先に目標となるでしょう。あんなものは対戦車兵器やロケットランチャーを一発でもぶち込めばドカンです。f:id:miyukiyasmaro:20191012193833j:image

 そのような危険性の果てに、低炭素社会という理想が実現したとしても、そこでは新たな環境問題が発生することになります。それは、植物の生育の悪化です。世界中の植物がエネルギー源たる二酸化炭素を欠乏するのです。植物が元気をなくすと、動物も元気がなくなるでしょう。動物が元気をなくすと、わたしたちの元気もなくなるでしょう……。

 

再生可能エネルギーは環境に厳しい!

 太陽光・太陽熱・風力・地熱などの新エネルギーは,再生可能エネルギーであり、環境にやさしいエネルギーである。

 

「高等学校 改訂版 現代社会」第一学習社

 この常識は間違いであると断言します。

 

太陽光発電

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 先ず太陽光発電について考えてみましょう。皆様は「太陽光発電は何を使うか」と訊かれたらなんと答えますか。おそらく「太陽光を使う」と答えることでしょう。太陽光は無限にあるものだから、太陽光発電は環境に優しい、ということになるわけです。しかし、太陽光発電が使うのは太陽光だけではありません。ソーラーパネルも必要となるのです。

 誰でも知っていることですけれども、意外と見落としがちなところです。このソーラーパネルの九割は「シリコン」という素材でできて、このシリコンは石油でできております。

 では、太陽光発電を推進し、ソーラーパネルを作りまくると何が起こるでしょう。即ち石油の大量消費です。もちろん、ソーラーパネルにも寿命はございます。ソーラーパネルの寿命が尽きたら、新しいものを作って設置しなくてはなりません。その為、石油の大量消費は繰り返されることになります。

 また、大規模な太陽光発電を推進する為には環境破壊を伴います。我が日本の国土は平野に恵まれておりませんので、ソーラーパネルをたくさん置く為には山や森林等を開発する必要があります。そこに伴う景観の低下や、森林の現象は無視できるものではありません。

 このように、太陽光発電は火力発電等と同じく石油を消費したり、環境を破壊せしめたりするのです。こんなものが「再生可能エネルギー」と呼べるでしょうか?

 わたしはこの太陽光発電を石油や緑を犠牲にしてまで推進する価値はないと考えます。なぜなら、この太陽光発電は効率がとことん悪いからです。空が曇っていれば全く発電できないし、かといって暑すぎると壊れることもあるそうです。

 以上の理由から、太陽光発電は実は環境に悪いと言えます。

 

風力発電

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 次に風力発電を見てみましょう。

 これも太陽光発電と同じく、山の環境破壊が指摘されています。

 また、風車は騒音や低周波音を出すと言われており、近隣住民の健康の悪化が懸念されます。風力発電低周波公害については、札幌医科大学の山田大邦教授が詳しい論文を書いておられます。

 風車が生む健康被害は、騒音被害とは区別される低周波音・超低周波音(風車の羽が空気を切り裂いて生まれる振動)を主な原因とするもので、それは頭痛、不眠、動悸や胸の圧迫感、息切れ、めまい、吐き気などの自律神経失調症に似た症状を生む。低周波音は騒音と違って反射・吸収が少なく、貫通や乗り越えが顕著なので、二重サッシの防音壁は効果がないどころか逆に被害を拡大するし、騒音が距離を離すと減衰するのに比べて低周波音は遠くまで届く。低周波音による健康被害を解決するには、風車の撤去か住民の転居しかないといわれている。

 この健康被害については、東伊豆(静岡県)、青山高原三重県)、由良町和歌山県)などの住民や医師が訴えている。

https://www.chosyu-journal.jp/shakai/6965

 もしこうした健康被害が人間のみならず、動物にも及ぶとしたらどうでしょうか。動物が弱ると、生態系は大きく乱れることでしょう。

 我が国の環境省は、風車による低周波音の健康被害について否定しております。しかし、風力発電健康被害の因果関係は既にきっちり証明されております。

 2007年末、東伊豆の別荘地では1500㌔㍗×10基の風力発電が運転を始めた直後から、住民のなかで健康被害が続出した。この因果関係を調べるため、事故で風車が停止しているとき、団地自治会が独自に疫学調査を実施した【表1】。不眠、血圧、胸・腹・歯・鼻・耳痛などの症状が、風車が停止することで大きく改善したことがわかる。f:id:miyukiyasmaro:20191012162436j:image

https://www.chosyu-journal.jp/shakai/6965

 

 風力発電による公害は低周波音の他にも、バードストライクが指摘されております。バードストライクとは、バード(鳥)がストライク(衝突)することです。のびのびと飛んでいた罪なき野鳥が、風車によって体を引き裂かれるという痛ましい事件がしばしば起こっているのです。

日本野鳥の会」という財団は、このバードストライクについて調査を行いました。

2010 年 3 月末までに当会で把握している国内での野鳥の衝突死の発見事例は、トビ 18、カモメ類 18、オジロワシ 16、カラス類 11、カモ類 3、イヌワシ 1、オオワシ 1、その他猛禽類 4、小鳥類
12、その他海鳥 4 羽です。

 

風力発電が野鳥に与える影響のまとめ
(財)日本野鳥の会自然保護室 浦 達也

 これは飽くまで本会が発見した野鳥の屍体の数ですから、氷山の一角なのでしょう。

 インターネットで「バードストライク 風力発電」と検索すると、目を背けなくなるような画像が出てきます……。

 

地熱発電

 次は地熱発電を見ましょう。

 地熱発電とは、大を利用して発電するものです。我が地球の地面の奥深くには、マグマによって熱せられている部分があります。この熱によって、水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して発電するというわけです。ちょうど我が国は世界でも稀に見る火山大国。日本は地熱発電に適しているということが言われています。

 しかし、この地熱発電が推進される一方で衰退するものがあります。地熱発電所はマグマのあるところに建設されますが、同じくマグマのあるところに根付く我が国の文化があるのです。それが温泉です。温泉とは地熱によって温められた湯です。温泉の心地よい熱は「大地のエネルギー」によって成り立っているのです。地熱発電を推進すると、この大地のエネルギーが奪われることになります。もしエネルギーが足りなくなれば、ある日突然、天然のお湯が出なくなるなんてことも有り得るでしょう。

 また、温泉の近くに発電所が立てられるとなると、景観も台無しになるかもしれません。絶景温泉ときいて入ってみたら、発電所まみれの風景しか見られなかった時の失望感を想像して下さい。

 

■あとがき

 如何でしょうか。環境問題について、意外な事実が明らかになったのではないでしょうか。本稿が皆様に新しい知識を提供できたなら、この上なく幸いであります。

 本稿を見るに、昨今の環境に関する教育、報道が、あまりにも極端であることは明らかではないでしょうか。なぜこのように極端であるかというと、それはやはりお金の力があるのではないかと思います。二酸化炭素に濡れ衣を着せて喜ぶのは原発で稼いでいる人達です。太陽光発電を推進して喜ぶのは太陽光で稼いでいる人達です。地熱を推進して喜ぶのは地熱で稼いでいる人達です。

 わたしたちの未来を金持ちの搾取から守る為には、あなたやわたしが多角的に物事を見なくてはならないと考えます。

 

 さて、わたしは「再生可能エネルギーは環境に厳しい!」という章において、環境に優しい発電というものの難しさを述べました。では「本当に優しい発電は何か。っていうかそもそもあるのか」ということが気になるでしょう。そこで、来週は新しいエネルギー源について考えていきたいと思います。

 最後までお読み頂きありがとうございました。

 

■付録 素晴らしき哉!表現 第三回
ウルトラマンガイア」
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(このコーナーはあんまり関係ないので、興味のない方はお読み飛ばし下さい)

 

 あらゆる芸術作品に触れ、その考察を行う「素晴らしき哉表現」の時間がやって参りました。今回取り上げるのはウルトラマンです。

ウルトラマンだとォてめえは幼稚園児か」と叫ばれる時代はそろそろ終焉を迎えることでしょう。昨今は様々なオタクによるネット上の活動により、あらゆる趣味が受け入れられるようになりつつあります。特撮もそうです。

 さて、ウルトラマンと聞きますと「遠い惑星からきた三分しか働かないマンが、異星からの悪い侵略者をやっつける寸劇」という認識が常識でございます。

 しかしながら、「ウルトラマンガイア」はシリーズの中でも異彩な作品と評されています。一言でいうと「地球出身の何分でも働けるマンが、悪者とも良い者とも判然としない正体不明の脅威を、やっつけたり、やっつけなかったりする」という話です。

 特に「正体不明の脅威」というのが魅力的な要素。本作では「根源的破滅招来体」という名称で、実に個性豊かです。例えばひたすら石油コンビナートを攻撃する怪獣や、目に見えるけど実体がない怪獣、一匹だけど複数の場所に存在する怪獣など、一回聞くだけだと「は?」となる怪獣が多いです。

 さらに興味深いのは、こうした不思議な様相について、科学オタクの主人公が毎回そのメカニズムを明らかにし、対処法を突き止めるということです。この推理には必ず科学的な根拠があるので、理系の人はミステリーとして楽しむことができます。文系の人は推理によって余計に難解になるのですが、しかし面白いのです。

 さて、ここからはネタバレになるのですが、

 

 

 

 

 

 

 

 この個性豊かな怪獣は、実は宇宙の根源的破滅招来体によって覚醒させられた地球の生物でした。根源的破滅招来体は、地球を蝕む人類を洗濯する為、地球の怪獣を利用したわけです。そういうわけで、ウルトラマンと対峙する怪獣は地球の環境の一部なのです。それが明らかになると、主人公はなるべくこの怪獣をやっつけようとせず、丸く収めようと努力し始めます。

 わたしはこの「怪獣」を、自然災害であると解釈します。災害はしばしば人間の脅威となっているけれども、偉大なる地球の環境です。これは必ずしもやっつけるものではなく、うまく付き合うことができれば良いわけです。その為には科学の知識や努力が必要です。

 本作の最終回では、主人公は根源的破滅招来体の尖兵と対決するのですが、ここにも見所があります。何と怪獣が地球を守る為、根源的破滅招来体に攻撃するのです。

 人類とウルトラマンの決死の奮闘によって、脅威は殲滅。地球は救われます。

 皆様に注目して頂きたいのは、この直後のラストカットです。主人公は地面に咲く花を見つけ、水をやろうとします。すると怪獣の鳴き声が聞こえ、遠方に怪獣の影を錯覚。

「そうか。これが地球なんだ」

 彼が呟くと、カメラが主人公の頭上から遠ざかりながら、エンドロールが開始します。やがて地球が映り、宇宙が映り……。

 わたしはこれほどまでに地球を美しく描いた作品を見たことがありません。

 

 わたしは根源的破滅招来体(環境に関する嘘の情報)と戦い、この美しい地球を守りたいと思います。

 最後までお読み頂きありがとうございました。