僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

安倍政権入門!

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 政権改造からまだ一ヶ月でございますが、安倍政権のやらかしが相次いでおります。

 先ずは小泉進次郎環境大臣。意味不明瞭な発言が幾度批判され、一部の国民から失望されました。十月二十五日、菅原一秀経済産業大臣有権者のお通夜に参列し、香典を渡したやらで辞任。同二十八日、萩生田文部大臣は例の「身の丈発言」を陳謝。同三十日、河合大臣は運動員に法外な報酬を払った疑惑を受けて辞任。

 野党はここぞとばかり、辞任した二人について、安倍首相に任命責任を追及しております。彼らにとっては、政権の息の根を止める絶好の機会なのでしょう。しかし幾度の醜聞を経て尚鎮座しております安倍政権が、これで崩壊すると考えるのは難しいかもしれません。

当たりめえだろ!自民党は野党よりも断然マシなんだよ!」このように仰有る方がたくさんいらっしゃるので、安倍政権はいよいよ史上最長政権となりつつございます。

 本当に安倍政権は野党よりもマシなのでしょうか?というわけで、今回は安倍政権を振り返ってみましょう。

 

民主党が駄目過ぎた

 まずは民主党時代まで遡ってみましょう。簡単に言うとこの民主党による政治は、多くの人にとって悪政でした。f:id:miyukiyasmaro:20191109191423j:image

 第一の悪政は「コンクリートから人へ」。民主党政権以前の自民党は、公共事業(建設企業にお金を払い、インフラを作ってもらうこと)を推進していました。これを民主党は、「土木企業と癒着した無駄遣いだ!」と批判。民主党政権は公共事業関係費(コンクリート)を削減し、そこで浮いたお金を福祉(人)に投じました。

 一見素晴らしいことのように見えますが、これがド悪政でした。公共事業は経済を良くさせる上で重要な政策です。公共事業とは、国が建設企業に仕事を与える政策です。建設企業が仕事に恵まれれば、他の企業の取引や従業員のお給料が増えます。他の企業の取引が増えれば他の企業も潤うし、従業員のお給料が増えれば消費も増えます 。

 このように、公共事業はインフラを充実させるだけでなく、経済にお金が巡るようにさせる重要な政策なのです。これを削減してしまったので、我が国はどんどん貧しくなっていきました。

 また、災害に備えて防災インフラを作ることは、地震大国日本にとっては実に大切です。この度の台風豪雨災害でも、「八ツ場ダムが氾濫を防いだ」ということが注目されました。この八ツ場ダムは、かつて民主党が建設を中止したものだったのです。民主党は「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げましたが、コンクリートこそ人を守るものであります。

 このように重要な「コンクリートから」税金を「人へ」投じる民主党の政治ですが、肝心な「人へ」の方も大失態です。福祉制度は何一つ改善しませんでした。

 他にも民主党の悪政はありますが、これ以上書くと民主党を紹介する記事になってしまうので、ともかくこのように民主党政権は良くありませんでした。

 かくして2012年12月17日、自民党民主党から政権を奪還します。

 

アベノミクスとは何か
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 同26日、国会で安倍さんが総理大臣に選ばれます。

「日本を取り戻す」というのが安倍さんのキャッチフレーズでした。民主党政権によって失われたあらゆるものを取り戻すことを目標としたのです。

 早速安倍さんは「アベノミクス」という経済政策を宣言しました。①金融政策②財政政策③規制緩和、これらを行って経済の建て直しを計ろうという政策です。これらの三つは、「アベノミクスの三本の矢」と呼ばれます。
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 ①の金融政策の中身は、主にお金をたくさん刷ることでした。「経済が良い」というのは、概ね「お金が国中にガンガン巡る」ということです。というわけで、国中にガンガン巡らせる為のお金を作る必要があったのです。いわばこれは輸血です。この金融政策でたくさん刷られたお金は銀行に行きます。

 

②の財政政策は、公共事業の拡大です。民主党政権が削減した公共事業を再び拡大させるのです。公共事業を拡大させれば、企業の景気が良くなります。企業の景気が良くなれば、銀行は安心して企業にお金を貸すことができます。この時、銀行が企業に貸したお金は金融政策がたくさん刷られたお金でもあります。つまり、金融政策で輸血されたお金が体中に巡るよう、血行を良くする措置がこの財政政策であると言えます。

 

③の規制緩和は、読んだ字が如く規制を緩和する政策。ルールを緩くする政策です。ルールを緩くして、企業が自由に商売ができるようにしようということです。経済学の主流派は「取り合えず自由にしたら良くなる」というのが基本的な考えで、これを「新自由主義」と言います。安倍さんは新自由主義的な政策を進めようとしたのです。

 

 このアベノミクスは理論的に正しかったのでしょうか。わたしとしては、金融政策と財政政策は正しいものであると考えます。この二つを行わずに不景気を脱した例はありません。経済を復活させる上で不可欠な政策です。

 しかし、規制緩和はあまり適当な政策ではなかろうと考えます。不景気=デフレは、需要が供給を下回ることで起こります。需要が供給を下回るというのは要するに、人が物を買う量が物が作られる量よりも少ないということです。この状態にあると、経済はデフレになり、景気が悪くなります。なぜそうなるのかというメカニズムはここでは立ち入りませんが、ともかくそういうことです。

 ですから、不景気から脱する為には需要を増やす必要があるわけです。けれども、規制緩和という政策は需要ではなく供給を増やす為の政策であります。規制というものは大体、企業を保護するものです。規制を緩くすれば企業は保護されなくなります。そうなれば競争が激しくなります。競争が激しくなると、企業は効率良く物を作らねばならなくなります。その結果、供給が増えるわけです。しかし、供給が増えたところでそれはさらなる不景気を招くだけです。

 ですから、この規制緩和という政策は適当なものではないと考えます。

 さて、アベノミクス三本の矢は、二本が良い矢で、一本は悪い矢であるわけですが、我が国の経済は結局回復したのでしょうか。

 

■安倍さんのお陰で景気は良くなった?

 安倍政権とその支持者の大体の言い分では、安倍政権によって我が国の経済は改善されたとのことです。その根拠はおおよそ株価と雇用です。

 アベノミクスが始まって以降、我が国の日経平均株価は上昇しました。ですからアベノミクスのお陰で日本の経済が良くなったのだと言われております。しかし、この日経平均株価は実はわたしたちの暮らしとはあまり関係がないと言えます。日経平均株価とは、上場企業の平均株価です。上場企業はアメリカの経済の影響を極めて強く受けております。ですから日経平均株価は、アメリカの平均株価を軸にして動いているのであります。
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 もし経済政策によって日経平均株価が動くとしたら、それは一時的なものに過ぎません。ですから日本の経済が良いとか悪いという議論は、株価を見て行われるべきではないと言えましょう。

 次に雇用。安倍さんのおかげで失業者が減り、働く人が増えたので景気は良くなったのだと言われています。確かに失業率は下がり、就業者(働いている人)数は増えました。しかしこれも中身を詳しく見てみると、あまり喜ばしいものではありません。

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 安倍政権下で増えた雇用は女性と高齢者の雇用ばかりです。別に「女とジジイは引っ込んでろ」などと言いたいわけではございませんが、我が国の企業は人件費を抑えるべく、安い人材に固執したわけです。もし景気が良いのであれば、企業は未来に向けて積極的に投資するはずです。しかし、現実には人手不足に対応すべく、渋々安くて済む労働者を買い漁り、その場凌ぎをしているのが現状です。

 ではこの人手不足は何によって起こったのでしょうか。安倍政権及びその支持者によれば、それは安倍さんのお陰で需要が増えたからということになるのでしょうが、果たして本当にそうでしょうか。

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 これは業界別に見た就業者数の変化です。2013年から18年を経て、たくさん就業者数が増えたのは医療や福祉だけです。仮にこれが景気が良くなった為だと考えるとおかしい話です。景気がよくなった人が「最近財布が暖かいんだよねえ。今晩病院行かない?」と言うでしょうか。

 他の産業の場合であれば、際限のない需要の可能性があります。「もっと高い車を買おう」「もっと便利な家電を買おう」「もっとたくさん本を買おう」「もっと広い家を買おう」といった具合に。しかし、医療などといったものに際限のない欲など出ようはずはございません。せいぜい良好な健康状態が維持されれば、それ以上何かを望むことはないからです。

 医療や福祉の就業者が増えたのは、高齢者が増えた為と考えた方が自然でしょう。高齢化によってご老人が増えたことで、医療や福祉への需要が増えたのです。そしてそれは、現在の日本においては決して悪いことではありません。病院や介護施設が潤えば、彼らは新しい設備を買ったり、人を雇ったりするでしょう。このようにして、やがて日本全体が豊かになる可能性を有している現象こそ少子高齢化なのです。

 しかしながら、安倍さんはそのことをあまりお分かりになられていないようなのです。

 

■本当に民主党よりマシなのか

 では、わたしたちの経済は結局、安倍政権の政治によってどのようになったのでしょうか。
 それを知る為には、実質賃金を確認する必要があります。

 実質賃金とは、わたしたちの賃金を物価を考慮して数値化したものです。例えば、去年と今年の給料が変わらず、物価がその間で二倍になったら、実質賃金は去年を100として、今年は50です。つまり「どれだけ物を買うことができるかを表す数値」であると言えます。

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 民主党時代に入った直後、実質賃金は急上昇しました。しかし実質賃金は、下がり始める直前に一時的に上がり、上がり始める直前に一時的に下がる性質があります。この急上昇は下がり始める兆候らしく、間もなく実質賃金が下落して行くのでした。

 問題はここからです。経済の建て直しを目標にして、期待の安倍政権が始まったのですが、実質賃金はいくら経っても上がりません。当初の(というか今も)安倍支持者の経済評論家は「実質賃金が上がるにはタイムラグがあるんだ。きっとこれから上がるに違いない」としていたのですが、そのような気配はないまま現在に至ります。

 このように、安倍さんが目標としていた経済の建て直しはどうやら失敗したようです。では、その原因はどこにあるのでしょうか。

 主たる原因は、アベノミクス第二の矢「財政出動」が、実は放たれていなかったことでしょう。

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 安倍政権が始まった直後、安倍さんは先の震災で傷ついた東北を復興させるべく、公共事業関係費を上げました。しかし2015年以降、公共事業関係費は下げられ、その額は民主党時代と全く変わりません。というか、現在の公共事業関係費は、民主党時代のピークよりも下なのであります。

 意外にも、アベノミクス第二の矢は放たれていなかったのです。

 この状態でお金ばかりがたくさん刷られても、景気が良くなるはずがありません。銀行は安心して企業にお金を貸すことができないからです。

 これは腹立たしいことではありませんか。民主党政権の「コンクリートから人へ」で散々な思いをした人々が、安倍さんを期待したのです。それにも関わらず、安倍さんはそれに背くようなことをしているのです。

 

■破られた約束 ①移民

 安倍さんは野党時代に支持者から期待されたことを踏みにじっています。

 例えば移民政策。f:id:miyukiyasmaro:20191109191616j:image

 安倍政権は人手不足解消を名目に大規模な移民受け入れを進めました。これは野党時代の公約に背くもので、支持者への裏切りとしか形容のしようがありません。

 その結果、我が国は世界四位の移民大国と呼ばれるようになりました。現在でも多くのコメンテーターが「日本は鎖国しては駄目だ。アメリカを見習ってもっと移民を受け入れよう」といったことを言います。

 どうやら「人手不足を解消すれば経済が良くなる」というイメージを持たれる方が多いようですが、現段階ではそれは間違いです。むしろ、我が国にはさらなる人手不足が必要なのです。

 人手が不足するというのはすなわち、人材が貴重になるということです。貴重なものには必ず高い価格がつきます。つまり、わたしたちのお給料が上がるということです。そうしていくといずれ不景気からも脱却するでしょう。

 また「いくら頑張っても人材が手に入らない」という境地に達すると完全雇用が達成されます。

 さらに重要なのはその先で「人材が手に入らないならば、設備投資しよう」という動きが始まります。設備投資とは、新しい機械やシステムなどを導入したり、作ったりすることで、労働者一人当たりの生産性を高めることです。わたしたちは多くの価値を作り出すことができるようになります。それだけでも素敵なことですが、生産性の向上によってわたしたちの価値は更に高くなり、お給料が高くなります。

 実際、高度成長期の日本もそのようにして成長してきました。

少子高齢化で人手不足になって、国が衰退してしまう」といった懸念が蔓延しているのですが、これは間違いなのです。現に少子高齢化の真っ只中にいながらも、経済成長している国はたくさんあるのです。

 

 では、人手不足を外国人労働者によって解消すれば、どのようなことが起こるでしょうか。人件費を抑えたい企業は、海外から流れ込んできた安い人材に飛び付くでしょう。そうすると労働者としてのわたしたちの価値は下がり、お給料が減ったり、中にはクビになる人が出てくるでしょう。

 このように、移民受け入れは経済の悪化を招きますが、悪化するのは経済ばかりではありません。移民を受け入れるということは、文化や価値観の違う人が同じところに住むということです。「多様性が高くなるんだからいいじゃない」という考えの方が多いですが、それは間違いです。

 ロバート・パットナムという社会学者の研究によれば、様々な人種が入り乱れている地域では他の人種への偏見や不信感が高く、逆に特定の人種がある程度統一されている地域では、他の人種への理解や信用が高いことが明らかとなっています。f:id:miyukiyasmaro:20191109193551j:image

 考えてみれば当たり前のことです。もしこの国がいわゆる「多様性の高い国」になれば、文化の衝突が頻繁することでしょう。蕎麦を啜れば白人に嫌われるかもしれません。豚肉を食べればイスラム教徒に怒られるかもしれません。せっかくの休日の朝、ぐっすりと寝ていたら、何とか民族の隣人の騒がしい儀式で起こされるかもしれません。街中の壁には「アート」という名目でスプレーによるペイントが施されるかもしれません。

 これは誰かが悪いという話ではありません。世界の人々にはそれぞれの文化や価値観があるのです。それらは尊重されて然るべきなのです。ですがそれを一ヶ所にまとめてしまえば衝突は必ず起きます。誰も悪くないのに争いが起きます。

 そもそも国境をなくそうという考え自体ナンセンスなのです。それぞれの地域でそれぞれの文化がある世界は、色鮮やかな絵画のように美しいのです。そのような絵も、絵の具を溶かして混ざり合わせればドス黒い液体になるばかりです。

 

■破られた約束 ②TPPf:id:miyukiyasmaro:20191109191641j:image

 TPPは太平洋を取り囲む国々の自由貿易協定です。安倍さんは政権を奪取した三ヶ月後、このTPPの参加を表明しました。

 TPPには毒素条項と呼ばれるものが多く含まれており、その危険性が指摘されています。

 その代表的なものがISDS条項です。これは、その国の中で行われた投資が上手くいかなかった場合、その国の政府を訴訟できるという条項です。要するに、「お前の国の法律のせいでビジネスが失敗したんだ。きっちりと慰謝料を払ってもらうぜ」というヤクザじみた行為が合法化されるということです。

「もしそんなことが起きたらTPPから抜けたらいいだけじゃないか」という意見がありますが、それは楽観的過ぎる見方であると言えます。この国際社会において、我が国は一度交渉の席についた以上、後戻りすることは困難です。TPPの脱退を宣言するや否や「我が国は多大なる時間を費やして日本との交渉を行ったのに、それを踏み躙るつもりか。我々の信頼を裏切るような身勝手な行為が許されるとでも思っているのか」などという圧力がかかりかねません。

 TPP賛成派の多くの方は「農業は不利かもしれないが、自動車産業といった日本の強みである産業はアメリカに勝って大儲けできる」としています。しかし、アメリカの謀略の恐ろしさはわたしたちの想像を上回るものです。

 そもそも、2月22日の日米首脳会談後に発表された日米共同声明では、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシビティが存在する」という表現が盛り込まれました。同時にこの共同声明で聖域なき関税撤廃を「前提とはしない」点も確認されました。つまり、米国は自動車産業を守りたい、日本は農産品5品目は守りたいという考えが共同声明の文面に表示されたわけです。

 ここまでは確かに公平な交渉でした。日本とアメリカ、互いの苦手分野については手出ししないという方向だったのです。しかし問題はここからです。

 ところが、2ヵ月後の日米事前協議では次の3つの重要事項が決定されています。①米国の日本車輸入関税の撤廃をTPP交渉の他のいかなる製品に猶予された最長期間よりもさらに長くする一方、日本政府は日本に輸出される米国車の認証方法を簡素化して輸入台数を2倍以上にする。②日本政府はかんぽ生命の新規保険商品を認可しない。③日本の農産物輸入関税については何も決めない

 

「アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪」植草一秀 講談社

 何ということでしょうか!アメリカ側が不利な自動車の貿易については、徹底的にハンデを強いる一方、日本が不利な農業の貿易については何らの防御策を許さないというのです。

 因みにこの時点で、選挙の際に安倍さんがわたしたちに約束した公約が破られます。「聖域なき関税撤廃を前提とするTPPには参加しない」というものです。農業という聖域に土足で立ち入ることを、安倍さんは受け入れたわけです。

 このように悪魔的なTPPは、トランプ大統領の登場によって運良くご破算となりました。その時中学生だったわたしも、テレビの前で手を打って大喜びしました。しかし、アメリカを抜きにしたTPP、「TPP11」なるものを安倍さんは進めようとしています。今度はどのような毒が仕組まれているのやら……。

 

■安倍さんの憲法改正

「右翼」を名乗る方のほとんどは日本国憲法第九条が嫌いです。わたしもそうです。

 九条は一項と二項によって構成されており、一項には日本が戦争を放棄すること、二項には日本が軍隊を持たないことが明記されています。

 戦争や軍隊がなくなるのは理想的なことではありますが、現実にそれをやってしまえば我が国は侵略されかねません。現に自分で自分を守れない我が国は、多国の理不尽な要求を飲まざるを得ません。いわばジャイアンを前にしたのび太君状態です。そういうわけで、戦後からずっと憲法改正を悲願としていた日本人が多かったのです。

 安倍さんはこの悲願を果たすことを約束しました。七十年以上も不動であった憲法を改正するというのはやはり困難なようで、安倍さんも苦戦している様子です。しかし、安倍政権支持者の方々は憲法改正への敢然たる姿勢を評価し、今も安倍さんを信じているのです。

 ですが、一概に「憲法改正」といっても、何をどのように改正するのかによって良いか悪いかは当然変わります。憲法改正という言葉にキャッチフレーズのように歓喜するだけでなく、その中身を見ることが必要です。

 安倍さんが目指す憲法改正は九条だけではなく、他にも色々ございます。

 例えば「緊急事態条項」。これは、災害時などの緊急事態に限り、総理大臣の権力を一時的にパワーアップできるようにする条項です。

 自民党憲法改正草案によると、緊急事態条項によって総理大臣に付与される権限は四つ。

一、緊急事態の間は衆議院を解散しなくてもいい

二、緊急事態の間は、法律と同じ効力も持つ政令を制定できる

三、緊急事態の間は総理大臣や議員の任期を延長できる

四、緊急事態の間は国民は政府の命令に従わなくてはならない

 この緊急事態条項が悪用されたらと思うと背筋が凍るものです。震災時のどさくさに紛れ、好き勝手なことがやられかねないのです。

 勿論、「政府が速攻で対応しなくてはならない非常事態に備えて、緊急事態条項は必要だ」という指摘はあります。しかし、我が国には五つの災害対策法があり、災害時に円滑な対応を行う準備は既になされているのです。

 堤未果という方はフランスのジャーナリストにこの改正案を見せたところ大変驚かれたようです。

「それにしてもこの99条第1項、これをヨーロッパの人々が見たら烈火のごとく怒り出すでしょうね」

 そう言ってルネが指した、自民党憲法改正案の99条第1項はこうだ。

〈緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる〉

 

「これは、1933年にナチスが成立させた【全権委任法】第1条の、『ドイツ国の法律は、憲法に規定されている手続き以外にドイツ政府によっても制定されうる』と、ほとんど同じ内容ですよ」

 

「政府はもう嘘をつけない」堤未果 角川新書

「日本を独裁国家にしてくれなどと誰が頼んだ」と安倍さんに訊きたいものです。

 

■あとがき

 このように安倍さんを批判するようなものを書くと、「じゃあ他に与党にふさわしい党があるのか」といったことが言われるかもしれません。

 確かに国会の野党は、与党の揚げ足をとってばかりで、具体的な代案を出してくれません。国民民主党は比較的具体的な政策を持った政党ではございますが、旧民主党系勢力となると100%信用できるものではございません。消費税廃止を訴える「れいわ新撰組」は、経済政策は素晴らしいと思いますが、あまりにも安全保障について楽観的であるように思えます。日本第一党や国民保守党は、安全保障も経済も理解した政党であるように思えますが、何というか激烈なところがありまして、安心して支持できるとは言えません。

 しかしそれで良いのです。与党にふさわしい政党というのはわたしたちが作り出すものであって、彼らはその材料です。

 政党は、選挙によって国民に育てられるものです。例えば来年の衆議院選挙で自民党が敗北すれば、「令和元年の消費増税が原因か」という分析がなされるでしょう。そうすると政党たちは世論に忖度し、減税を訴える新しい政党が出てきたり、増税をやむなしとする政党が考えを改めるかもしれません。このように、我が国の政党は選挙による刺激によって教育されるものなのです。

 それにも関わらず、自民党支持者は自民党に何の刺激も加えず、甘やかしています。その結果「公約を破ろうが、景気を悪くしようが、どうせ政権は続くだろう」という怠慢が長きに渡って続いているのです。

 この国を豊かにしたいのであれば、少なくとも自民党以外に投票するべきであろうと考えます。

 最後までお読み頂きありがとうございました。