僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

誰でもわかる!好景気にするには

  皆様、ご機嫌良うございます。

 突然ですが、「景気の良い世界」を想像して下さい。景気が良いと、あなたは物をたくさん買えるようになり、仕事も楽になるでしょう。そうすると暇も増え、好きなことをする時間が増えます。あなたがたくさん物を買えば、それは誰かの利益となり、その誰かさんも幸せになります。

 一方、現実の日本はやはり不景気です。

 

詳しくは摂稿「経済が良いって何?」前後編を参照

(前編)

https://miyukiyasmaro.hatenadiary.com/entry/2019/06/15/115859

(後編)

https://miyukiyasmaro.hatenadiary.com/entry/2019/06/22/185828

 

 不景気から脱却して景気を良くしたい!そうすれば皆が幸せになるんだ!あなたはそう思いませんか。

 では、問題は「どうすれば景気が良くなるのか」ということです。日本の景気を良くしたいなら、わたし達が景気を良くしてくれそうな政治家にその思いを託すしかありません。しかし、景気を良くする方法を知らなければ、そもそも「景気を良くしてくれそうな政治家」が分からないわけです。つまり、景気を良くする為には、わたしやあなたが景気を良くする方法を知れば良いわけです。

 というわけで、今回は「どうすれば景気は良くなるのか?」ということを徹底的に、そして分かりやすく理解していきましょう。 「お前ごときに経済の解説をされてたまるか」という指摘があるかもしれませんが、私には手をハイヒールで踏まれた経験がありますので、そこら辺の方よりも詳しい自信があります。

 では参りましょう。

 

 ■ケインズという男

 時はさかのぼり1929年。ニューヨーク株式市場で株式が暴落。これをきっかけに世界中が不景気になりました。いわゆる世界恐慌です。
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(↑ニューヨーク株式暴落に混乱する人々)

 不景気になるともちろん企業が苦しくなり、そして人をたくさん雇えなくなってクビにしたりします。そうすると発生するのが「失業者」です。

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(↑配給される食糧を求めた失業者の行列)

 こうした問題は世界中の至る国で発生します。

 その頃、イギリス、ケンブリッジ大学の研究室にて、背の高い男が不景気を報じる新聞を見つめていました。その名は、

ジョン・メイナード・ケインズ
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 彼はこの報道に危機を抱き、国が何らかの対策を講(こう)じなくてはならないと考えました。そうして、その国が行うべき「何らかの対策」を明らかにすべく、新しい理論の研究を始めます。

 そして1936年、ケインズは後に経済学を根本的に変える名著を書きました。その名は

 

「雇用・利子及び貨幣の一般理論」

 

 名前はとっても難しくて、何だか最近の若者の小説のように長いタイトルですが、実は簡単な話です。わたし達にもすぐに分かる内容です。

 

■不景気の原因は需要不足だ!

 では、「雇用・利子及び貨幣の一般理論」をざっくり学んでいきましょう。

 それまでの経済学は、「国民に好き勝手やらせたらうまくいくだろう」という自由放任主義でした。したがってほとんどの経済学者は、不景気も放っておけばそのうち解決すると考えていました。しかし、いくら待っても不景気のままです。

 ケインズはその理由を解き明かしました。

 それはズバリ、需要の不足なのです。

 需要とは、誰かが物やサービスを必要とすることです。例えば建設会社の場合は、誰かが家を必要とすることが需要になります。要するに需要とは仕事と考えれば良いでしょう。

 では、その需要が足りないとどんなことになるでしょうか。

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 下手くそな絵ですがご容赦下さい。

①この図において、建設会社は需要不足です。仕事がないのに人件費を抱えていては倒産してしまうということで、建設会社は減給と解雇を実行します。

②すると、建設会社に勤めている従業員はもちろんお金を節約しようとします。

③そのせいで、建設会社の向かいにあるおでん屋さんの需要が減ります。

④そうすると、おでん屋さんに材料を売っている市場の需要も減ります。

⑤なるほど、市場に農作物を売っている農家さんの需要も減ります。

⑥思い切って農家さんが仕事を辞めちゃうと、農家さんに道具を売っている農具屋さんも需要が減ります。

⑦農具屋さんの店員のお給料が減っちゃいます。

⑧かわいそうな店員さん。店員さんは近々家を買おうと思っていたのですが、これでは買えません。

 そして①に戻る。

 

 このように、延々と多くの人々が損をし続けるのが需要不足という状態であり、不景気なのです。

 もし仮に建設会社が努力して、売上を伸ばしたとしても、それは他の建設会社の売上を奪うことに他なりません。

 つまり、みんながどれだけ頑張っても不景気自体は解決しないのです

 

 ■切り札の名は「財政出動

 みんなが頑張っても不景気から脱却できない。そんな時こそ「政府」の出番であるとケインズは考えました。政府がある政策を行えば、景気が良くなるとしたのです。その名は

財政出動

 ケインズによれば、国が財政出動を行えば景気が良くなるのであります。

 では、財政出動とは一体何なのでしょうか。

 ここで、「雇用・利子及び貨幣の一般理論」の一部を読んでみましょう。

 いま、大蔵省が古瓶に紙幣をいっぱい詰めて廃坑の適当な深さのところに埋め、その穴を町のごみ屑で地表まで塞いでおくとする。そして百戦錬磨の自由放任の原理にのっとる民間企業に紙幣をふたたび掘り起こさせるものとしよう(もちろん採掘権は紙幣産出区域の賃借権を入札に掛けることによって獲得される)。そうすればこれ以上の失業は起こらなくてすむし、またそのおかげで、社会の実質所得と、そしてまたその資本という富は、おそらくいまよりかなり大きくなっているだろう。なるほど、住宅等を建設する方がもっと理にかなっている。しかしこのような手段に政治的、現実的な困難があるならば、上述したことは何もしないよりはまだましである。

 

ジョン・メイナード・ケインズ

間宮陽介訳

雇用、利子および貨幣の一般理論 上、下」岩波文庫

 

 難しくて分からない!という方がもしいらしたらこちらを。

 

 今、大蔵省(今の日本でいう財務省)が古ビンにお札をいっぱい詰めて、廃坑の適当な深さのところに埋め、その穴をごみ屑で塞いでおくとしよう。そして、民間企業に埋めた古瓶を掘り起こさせるとしよう( もちろん、誰が掘り起こすかというと、入札でその廃坑を買った企業にやらせる)。そうすれば、これ以上失業者は増えないし、国も国民も企業もハッピーになるのさ。

 いやちょっと待てよ。そんなことをするくらいなら、家とかを建設させた方が良いかなあ。

 しかしまあ、もし「これ以上家がいらない」とかいう状況なら、さっき言ったことをやらせた方がいい。国が何もやらないよりは断然マシなんだぜ。

 

三幸靖麿呂訳

 

何だか訳の分からないことですが、もしこの「古瓶に札束を入れて企業に掘り起こさせる」という政策、一呼んで「古瓶作戦」を行えばどうなるでしょうか。よく想像してみましょう。

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 古瓶に入れたお金が1億だとします。すると、建設会社は1億まるまるゲットとなるわけです。この1億円の一部は従業員の給料となり、その給料は消費に回されます。消費によって誰かが得をすれば、その誰かと取引をする人も得をし……

 需要不足が多くの人々に損害を与えるのと逆で、この古瓶作戦は多くの人々に利益を与えるのです。もうお気づきかもしれませんが、古瓶作戦は、政府が需要を増やす政策なのです。

 建設会社に需要(仕事)がないから、政府がこれを増やす。これによって多くの人々の需要不足が解消され、最終的にあなた自身の手の中に利益がもたらされます。

 このように、財政(政府のお金)を出動させ、誰かに仕事(需要)を与える経済政策を財政出動と言います。

 

 なるほど、住宅等を建設する方がもっと理にかなっている。しかしこのような手段に政治的、現実的な困難があるならば、上述したことは何もしないよりはまだましである。

 

 というのは、政府が誰かに仕事を与えたら良いのだから、別に古瓶作戦でなくともよい。例えば家とかを建てさせたりすれば、①必要な家が建つ ②景気が良くなる で一石二鳥となるわけです。

 

 また、ケインズは好景気になった先のことも考えていました。好景気になると、二つのことが問題となります。

 一つは財政赤字。大抵、財政出動を行うとなると、国債を刷らないと(政府が借金しないと)いけなくなります。好景気になった頃には財政赤字が膨らんだ状態となります。

 二つ目はインフレ。景気が良くなるとインフレになります。インフレとは物の価値が上がり、お金の価値が下がる現象ですから、それまでに頑張って貯めた貯金の価値がだんだん下がってしまいます。

 この二つの問題を解決する手段として、ケインズ増税を唱えました。増税をするとお金が使われにくくなります。そうするとインフレが抑制されるわけです。また、財政出動もこの時期は控えると良いでしょう。これで①の問題は解決。

 また、増税によって大量の税金が政府の元に還ります。これを国債の返還(借金の返済)に充てれば、②の問題は解決されます。

 つまり、インフレ(好景気)の時に増税財政出動の停止を行い、反対にデフレ(不景気)の時には減税と財政出動の拡大を行う。この繰り返しによって、国家は未来永劫発展するとケインズは考えたのです。

 これがケインズの「雇用・利子及び貨幣の一般理論」です。

 

■歴史を変えた一般理論

『一般理論』に対する経済学者たちの反応は当初、様々だった。新しい理論に出合って、旧い世代の経済学者の多くは懐疑的な態度をとった。しかし、もっと頭の柔軟な若い経済学者たちは、いっぺんに新しい経済理論の虜になった。

(中略)

 ケインズの書物が公判された当時、まだ二十歳で、ハーバード大学の大学院生だったポール・サミュエルソン(後にノーベル経済学賞を受賞した最初の米国の経済学者)は、ケインズ経済学と出合ったときの興奮を次のように述べている。

「一般理論は当時、三十五歳以下の大部分の経済学者を夢中にさせた。それはあたかも予期せぬ悪性の病気が南海の孤島の部族を最初に襲い、多数を死に至らしめたような、猛烈なものだった」。

 

「誰がケインズを殺したか」W・カール・ビブン

斉藤精一郎訳

日本経済新聞社

 

 この「雇用・利子及び貨幣の一般理論」は後に新しい理論として世界中に受け入れられます。

 アメリカでも、一般理論を元にしてニューディール政策という大規模な財政出動が行われました。

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(↑ニューディール政策の一環として建設された「ケンタッキーダム」)

 やはり財政出動は、建設会社に道路・ダムなどのインフラを建設させる「公共事業」として行われることがほとんどです。

 アメリカは結局、世界恐慌による不景気から脱却しましたが、それはこのニューディール政策によるものだという見方がなされています。

 また、日本も高度成長期という大変景気の良い時代、公共事業が盛んでした。

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 この写真は高速道路です。東京オリンピックが催かれる際、大量の観光客に対応すべく、関東の高速道路は建設されました。

 ケインズの一般理論は世界の経済政策の参考になったのです。

 この大変な功績もあって、ケインズは二十世紀で最も重要な人物の一人として数えられています。

 では現在の日本はどうでしょう。深刻な不景気である上、南海トラフや首都直下型地震を前に、老朽化しつつあるインフラを抱えている。まさに、ニューディール政策のような公共事業を行う時だという主張があります。

 しかし、一方でこうしたことを言うと、「いや!ケインズは時代遅れだ!」という反論もあります。

 経済って色んな主張があるんですね。

 次回はなぜケインズは時代遅れとされているのか。そして本当に時代遅れなのかという検証をしたいと思います。

 最後までお読み頂き、心より感謝致します。では、もしよろしければまた来週。

 

 

付録

 ・前々回でボツになった「政党マッチング表第一号」

 よくよく考えると読売新聞社の行っているマッチングをやった方が正確で早いのでボツになりました。
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 使用法

①凡例を基準に、各項目に点数をつける。

②各政党との点数のズレを計算する。

(?とのズレは0~3とする)

③何分?が多いので、点数のズレは10~18みたいな具合になってしまう。その為、その中央値を最終的な点数とする。

④点数が少なければ少ないほど、あなたにマッチしている政党ということになる。

 

使用例 わたしの場合
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 結果、一番マッチしているのはオリーブの木ということになりました。

 しかしまあこれは、当てにならないものですな。