僕の名は靖麻呂

高校生 政治厨 軽度の神経衰弱

イギリス総選挙を分かりやすく

f:id:miyukiyasmaro:20191214222032j:image

十二月十二日、イギリス総選挙の投開票が始まりました。翌日、ボリス・ジョンソン現大統領率いる保守党の圧勝が確定し、我が国のニュースでも取り上げられました。

 本稿では、この圧勝により何がどのように変わるのかをなるべく分かりやすく解説したいと思います。

 

■イギリスがEU離脱

 とは言っても、日本人でイギリスの事情を把握している方はなかなかいらっしゃらないでしょう。「総選挙って何だよ!AKBかよ!保守党って何だよ!」と叫ばれた方も少なからずいらっしゃったはずです。

 今回の総選挙は、イギリスの議会のうち、庶民院の議員を選ぶものです。f:id:miyukiyasmaro:20191214150912j:image

庶民院」というとあまり聞き馴染みのない単語ではないでしょうか。イギリスの議会は庶民院貴族院の二つに分かれており、庶民院は国民によって選ばれた議員が話し合いをする議院です。

 因みに貴族院はその名の通り貴族の議員による議院です。「えっ!?今時貴族なんかいるの!?しかも権力持ってんの!?」と驚かれる方がいらっしゃることでしょう。わたしも最近知った時は大層驚きました。もちろん、イギリスも民主主義という形で政治が行われておりますから、現在はこの貴族院の権限は小さく、庶民院がイギリスの政治をコントロールしていると理解できます。

 さて、今回の総選挙はそんな庶民院の議員を決める選挙です。庶民院には我が日本国の国会にように様々な政党がありますが、ある二つの大政党以外は極めて瑣末な勢力です。従って、イギリスの議会ではこの二つの勢力が争っていると言えます。

 その二つの勢力の一つは現在の与党、「保守党」。イメージカラーは青。EUから離脱しようと訴えております。

もう一つは「労働党」。イメージカラーは赤。EUには残るべきだとしております。

 以前、保守党は与党で労働党は野党でしたが、その勢力はほぼ互角でした。EU離脱の騒ぎがグダグダで、なかなか進展を見せなかったわけはここにあります。

 しかし、この度の圧勝によって事態は急展開を見せました。保守党の議席過半数を超えたのです。

f:id:miyukiyasmaro:20191217122713j:image
f:id:miyukiyasmaro:20191217122718j:image

 議会でEU離脱に関する採決をとった際、EU離脱派は確実に勝ちます。

 もちろん、保守党の議員の全員がEU離脱派というわけではありません。しかしイギリスの大政党では、党の意向通りに投票を行う圧力が極めて強いものであります。その為もあって、与党が提出した法案が通らないことは滅多にございません。

最後に政府提出法案が庶民院で否決されたのは1986年の営業時間法案であり、このようなことは20世紀中に3回しかなかった。

Wikipedia

 結論を申し上げましょう。イギリスは99.9%、EUから離脱します。但し、100%とは言ってないので、もし離脱しなくても嘘つきと言わないで下さいね。

 

■離脱したらどうなるのか

 イギリスのEU離脱について、マスメディアは色々と報じてきました。よく取り上げられるのが「北アイルランド」の問題です。f:id:miyukiyasmaro:20191216213232j:image

 イギリスは北アイルランドスコットランドイングランドウェールズの連合国です。これらがチームとなってイギリスとなっているわけですが、その内の北アイルランド人の多くは「自分はイギリス人なんかじゃない」と思っています。北アイルランドはその名の通りアイルランドの北部にあるところ。元々はアイルランドの一部だったのですが、イギリスに支配されたわけです。

 では、ここでイギリスがEUから離脱するとどういうことが起こるのか想像してみて下さい。EU加盟国の間では物や人が自由に移動できました。国境がなかったといっても過言ないでしょう。従って、アイルランド北アイルランドの間にも国境はありませんでした。

 しかし、イギリスがEUから離脱するとアイルランド北アイルランドの間に国境ができてしまいます。そうすると北アイルランド人が怒るのではないかという懸念が出てくるわけです。

f:id:miyukiyasmaro:20191216221005j:image

 昔、北アイルランドには「北アイルランドをイギリスから独立させよう」と武器を手に蜂起した人々が多くいました。北アイルランドアイルランドに国境を築けば、こうした連中が復活するのではないかという可能性も指摘されています。

 以上が北アイルランドの問題です。ここまで抑えると恥をかくようなことはまずないでしょう。上司に「君、EU離脱が進んでいるけど北アイルランドが大変だよねえ。もちろん知ってるよねえ。社会人ともあろうものがねえ」と言われた際もきちんと対応でき、「こいつ、やるな」と一目置かれることでしょう。

 しかし、わたしのブログは品質を売りにしておりますから、更にレベルの高い知識を解説して参りましょう。先程の上司と部下のやり取りは「北アイルランドが大変だけどどうするんだろうねえ」という次元の話。ここからは「北アイルランドが大変だけどきっとこうするのだろう」という次元の話です。

 実はボリス・ジョンソン首相は既に対策を考えております。それは、北アイルランドに限っては物が自由に行き来できるようにするということです。先程申し上げました通り、EUとは人や物が自由に行き来できるグループです(他にも様々な要素がありますがここでは立ち入りません)。この人と物の内、物が自由に行き来できた状態はそのままにしようというのがジョンソン首相の対策です。ですから、北アイルランドアイルランドの間で物が貿易される際、そこに関税は掛からないわけです。

 もちろん、これで北アイルランド人の怒りがゼロになるわけではないでしょうが、少なくともジョンソン首相は何も考えずにEU離脱を行っているわけではありません。

 

■香港が救われる!?

 イギリス総選挙といえばEU離脱EU離脱といえばイギリス総選挙というのが常識です。上司に「ねえ君、イギリス総選挙ってどう思う?」と聞かれた際、「ああイギリス総選挙ですか。保守党はEU離脱をしようとしていますね」と答えれば馬鹿にされるということはないでしょう。しかし、このように答えて意表をつけば上司をびっくりさせることができるかもしれません。

「ああイギリス総選挙ですか。保守党は香港の問題に熱心ですよね。これからイギリスは香港と密接な関係になっていくでしょうね」f:id:miyukiyasmaro:20191221210755j:image

 実は今回の総選挙は、香港の命運を左右するものであったと言えます。EU離脱が無事に終われば、イギリスは香港への支援を始めることでしょう。

 これは今年七月の記事です。

ジョンソン氏はロイターのインタビューに対し、「香港の人々を支持しており、彼らのために喜んで声を上げたい」とし、「中国に対し、『一国二制度』はこれまでも機能してきたが、現在も機能しており、これが揺らぐことがあってはならないと強調したい」と述べた。
https://www.newsweekjapan.jp/amp/stories/world/2019/07/post-12470.php?page=1

 香港市民を支持するのはジョンソン首相のみならず、外務大臣の「ドミニク・ラーブ」さんもかなり熱心です。

f:id:miyukiyasmaro:20191218101134j:image

香港での問題をめぐっては、ラーブ氏が9日、香港政府トップの林鄭月娥行政長官と電話会談を行い、平和的手段での抗議活動は容認すべきだと強調していた。
https://www.sankei.com/world/amp/190814/wor1908140010-a.html

  また、彼は亡命した香港市民を受け入れ、香港政府へは制裁を加えようとしているようです。

 

 このようなイギリスの熱心な姿勢には、歴史的な要素が絡んでいます。そもそも香港は、イギリスの植民地でした。それからなんやかんやあって、香港が中国に返還されたわけですが、ここである約束がなされます。それが「一国二制度」です。

 

 これは、中国と香港はつのだけど、中国と香港の制度は二つで別にしろというもの。要するに、名目上は中国と香港は同じ国ということにしといてやるが、香港の政治には口を出すなということです。しかし、徐々に中国政府は香港へ触手を伸ばして行きました。いまや中国政府はその傀儡たる林鄭月娥行政長官(行政長官というのは、香港を支配する地位と考えて良いでしょう)を介して、香港市民のデモを弾圧しています。このように約束を破られた張本人であるイギリスは、香港の問題と密接な関係があるわけです。

 それにも関わらず、イギリスが香港市民への具体的な支援ができなかったのはEU離脱で忙しかった為ですが、皆様ご案内の通りEU離脱は確実に決着がつくわけです。f:id:miyukiyasmaro:20191221210834j:image

f:id:miyukiyasmaro:20191221210844j:image

 イギリスが香港を支援する際、南シナ海に空母を駐留させるのではないかという指摘があります。空母はとても大きな軍艦で、戦闘機が離着陸する為の滑走路がついています。言うなれば、水上を移動する空軍基地です。そんなものが南シナ海にあれば、中国政府にはとてつもない圧力が掛かるはずです。中国政府が軍を出撃させてデモ隊を鎮圧しようとすれば、イギリスの戦闘機が攻撃してくるかもしれないという恐れが出てくるのです。

 以前わたしは「トランプ大統領が香港への支援を始めた」ということを書きました。そしてこのトランプに続き、イギリスも香港へ加勢することが見込まれるわけです。

 さて日本はどうするのか?決めるのはわたしたち自身です。最後までお読み頂きありがとうございました。